【速報】「パワハラと自殺に因果関係ない」|江差看護学院問題で北海道が驚きの見解

本サイトで2021年から報告を続けている北海道立江差高等看護学院のパワーハラスメント問題で、在学生の自殺事案に対応している北海道の代理人が「ハラスメントと自殺との間に因果関係はない」との認識を示していることがわかった。自殺がハラスメントに起因すると認定した第三者調査委員会の報告とは正反対の主張となり、亡くなった学生の遺族らは「何のための調査だったのか」と強い憤りを示している。

◇   ◇   ◇

道の第三者委は本年3月にハラスメントと自殺との因果関係を認める報告をまとめており、これを受けて学生の遺族と道とが補償交渉に入っていた。

関係者によれば、8月上旬に遺族側が求める賠償額を示してから2カ月あまり、道から遺族へはなんら回答が届かなかったが、10月23日に道の代理人から遺族代理人へ電話連絡があり「自殺の予見可能性はなかった」「ハラスメントとの因果関係は認められない」などの認識が口頭で伝えられたという。補償についても遺族提示額の1割に満たない金額が示されたといい、遺族代理人の植松直弁護士(函館弁護士会)は「第三者が認めた因果関係を否定するとは」と、道へ強い不信感を抱くことになった。

「第三者委がまとめた報告書には、当時のハラスメントについて『自死との相当因果関係は認められる』と明記されています。その上で、今年5月には当時の担当課長と局長がご遺族に直接、謝罪しました。当然そうした経緯をふまえて補償が検討されると思っていたところ、今回の話では『ハラスメント以外の原因も否定できない』みたいなニュアンス。第三者調査はいったい何のためだったのか」

亡くなった学生の母親(47)は「(因果関係を認めない判断は)絶対にありえない」と憤りを隠さず、「半年足らずでまた『なかったこと』にするつもりか」と失望をあらわにする。

「驚きとショックで言葉になりません。看護学校が変わろうとしているのに、道は後退するんですね。第三者委の調査結果は、無視できるものなんですか。2年の際月を無にして、道民の税金を無駄に使って……」

前述のように、被害補償については一定の金額が提示されているものの、遺族が問題としているのは金額ではない。現時点では口頭で道の考えが示されたのみで、補償問題の結論が出たわけではないため、遺族側は改めて学生の自殺がハラスメントに起因することを認めるよう、道と交渉を重ねていく考えだ。

江差看護学院で男子学生(当時22)が自ら命を絶ったのは、2019年9月。学内では翌年秋から教員による長期間のハラスメントを告発する声が上がり、21年春に発足した第三者委員会(先述の第三者委とは別)の調査では江差と紋別の看護学院で教員11人による計53件のハラスメントが認定された。亡くなった学生の事案はこれに含まれておらず、遺族も当初は被害申告を見合わせていたが、学生の母親が前学院長から個人的な謝罪を受けたことを機に昨年5月、道への調査申し入れに踏み切った。

同年8月に発足した新第三者委は元学生や教員などへの聴き取りを重ね、本年3月までに調査を終了、少なくとも教員3人による指導拒否や暴言など4件のハラスメントがあったと結論づけ、4件すべてに自殺との関連性があると認定した(参照資料)。報告を受け、道の鈴木直道知事は「深くお詫び申し上げる」との謝罪コメントを発表。年度が替わった5月には当時の担当課長らが遺族に直接頭を下げ、再発防止などを約束するに到っている(ハンター既報)。

こうした経緯と相反する今回の一件について、道の担当課は「交渉中の事案についてはコメントできない」としている。また補償と併せて求められる教員の謝罪や懲戒処分などは、現時点でなお結論が伝わっていない。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

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