薩摩川内市・スクールバス運営事業の闇(1)|隠される入札結果

2018年10月、ハンターは鹿児島県薩摩川内市の教育委員会に対し、小中学校に通う児童・生徒らの送迎を行うスクールバス運営事業者の業者選定に関する文書を開示請求した。開示を求めたのは過去5年度分だったが、市教委は情報公開条例を恣意的に運用し、本来一回で開示すべき文書を小出しにして何度も請求書を提出するよう要求したり、他の自治体がネット上で公開している入札結果の数字を黒塗りにするなど事実上の隠蔽に走る。
(参照記事⇒「薩摩川内市教委、スクールバス事業の情報公開で隠蔽体質露呈」)

背景にあるのは市と特定業者の癒着とみられていたが、事業の実態が隠されたため、ハンターの記者が水面下で関係者を捜して話を聞くなど取材を進め、今年に入って約2年半ぶりの開示請求を行った。この間、同事業を受託したバス会社が事故隠しを行っていたことが発覚。さらに混乱の中、騒ぎに巻き込まれる形である児童をスクールバスから遠ざけることになる“事件”も起きていた。改めて、薩摩川内市の歪んだ行政を検証する。

■直近の入札結果だけを非開示

いったん腐った行政は、市長が代わっても正常化できないらしい。2018年にスクールバス運営事業者の業者選定に関する文書を開示請求した際に非開示となった落札できなかった業者の入札金額は、今回もほとんどが黒塗り非開示。ただし、批判をかわすためか、今回の情報公開では過去の入札結果の金額だけはすべて開示し、直近の入札結果だけを隠すという姑息さだ。

いまどき入札結果を隠す自治体など捜しても見つからないはずだが、薩摩川内市は、“隠蔽”と批判されても仕方がない形の情報公開を平気で押し付けてくる。同市の市長は昨年10月、3期務めた岩切秀雄氏が引退して県議から転身した田中良二氏にバトンタッチされたが、役所の姿勢は何も変わっていない。

■次々に“言い訳”が出てきたが・・・

他のほとんどの自治体がオープンにしている入札結果を、なぜ隠すのか――?非開示根拠を追求したハンターに薩摩川内市教委が持ち出してきたのが、2018年にも主張していた「内規」。内規に従って、スクールバス事業者入札の開示・非開示を決めたというのである。確認のため、現物の提供を求めたところ、FAXで送られてきたのが下の文書である。(*下参照。クリックで拡大

結論から先に述べるが、薩摩川内市がスクールバス事業者の入札結果の一部を非開示にしていることと、この「内規」とは何の関係もない。同市の内規は、2004年(平成16年)に国が公共事業の適正化を図るため告示した「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律施行令」を受けてのもの。ほとんどの自治体が同様の規定を設けており、ネット上でも確認が可能だ。読めば分かるが、薩摩川内市教委が行っているスクールバス事業者の入札と全く関係のない内容であり、この内規を根拠に建設関係以外の情報の開示・非開示を決めるのは間違いだろう。

国から指図されたから建設関係の入札結果だけ公表するが、他の事業の入札については非公表というのでは、それこそ行政の怠慢であり開かれた市政とは程遠い姿勢だ。

市教委が、スクールバス事業入札結果の一部を非開示にしているもう一つの理由として挙げてきたのが、「物価」。市教委の担当は「物価がその時々で変わるため、直近の(落札していない業者の)入札金額を非開示にして、企業活動に影響を与えないようにしている」のだという。だが、これについても意味不明。物価の変動と入札金額を非開示にすることとの因果関係は皆無で、正当な理由にはならない。

念のため情報公開を所管する同市の文書法制室に話を聞いたが、落札できなかった業者の入札金額を非開示にしている理由を、開示対象の例外を定めた情報公開条例の7条7項「実施機関が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」に求めていると説明する。同条同項の(イ)にある「契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国又は地方公共団体の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ」に引っかかる、と言いたいらしい。

しかし、他の自治体では公表が当然の入札情報を開示することで、薩摩川内市の行政事務に著しい支障をきたすとは思えない。もちろん、入札に参加した業者が困るということもあり得ない。つまりは、ただの屁理屈。合理的な非開示理由ではないということになる。

非常識な言い訳を並べて、入札の実態を隠そうとする薩摩川内市――。市教委の担当が最後に持ち出してきたのは、「市議会で決算が終わった事業の入札結果は開示するが、それ以外は非開示」とする主張だった。だが、決算の有無と入札情報の公表基準は別ものであり、他の自治体でも同じ非開示理由は聞いたことがない。文書法制室にも同様の疑問をぶつけたところ、「同じように扱っている自治体もあったかと思う」と言う。“どこの自治体のことか”と何度も問い詰めたが、答えは返ってこなかった。「いい加減」という言葉しか浮かんで来ない。

■入札結果は「公表」されていた

市側の“言い訳”について丁寧に反論したつもりだが、実はいずれの年のスクールバス事業者の入札結果も、すでに「公表」されており、隠すこと自体が間違いであることが分かっている。いかなる言い訳も、無駄な抵抗だったということだ。

前述した通り、市側が非開示の拠り所としたのは市情報公開条例第7条7項――「実施機関が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」という規定だ。しかし市教委は入札の当日、応札してきたすべてのバス事業者を前にして、事業者ごとの入札金額をオープンにしていたのである。

取材に応じた市関係者によると、入札に参加したバス事業者は他社の応札金額を聞き取っており、入札結果が事実上「公表」されたその時点で、情報公開条例第7条7項の規定は意味をなさなくなっていたというのだ。いったん「公表」した入札結果を、非開示・非公表扱いにすること自体がナンセンス。その市関係者の証言がなければ、ハンターの記者も騙されていた可能性が高い。

税金で成り立っている事業の入札状況を、勝手な理由を付けて隠すというのは、“市民への説明責任を放棄した”と同義。こうした場合、背景によからぬ構図が存在するのが常だ。取材を進める過程で、その実態が浮き彫りとなる。

(以下、次稿)

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