経済産業省がバイオマス発電絡みで公文書隠蔽|開示済みの箇所、一転黒塗り

 ハンターの情報公開請求を受けて開示した文書の対面説明を拒否した経済産業省九州経済産業局が、記者の抗議後に態度を一変させ対面での説明に応じた。

 ハンターが対面でのやり取りにこだわったのには理由がある。実は、ある事業に関する情報開示で、九州経済産業局が恣意的運用に走り、同じ文書の黒塗り個所を、相手によって変えていることが分かっていたからだ。つまりは「隠蔽」。国の情報公開法の趣旨を無視した、極めてタチの悪い所業である。以下、悪行露見の顛末。

■エネルギー対策課・課長補佐との一問一答

――ここに事業者が提出した「バイオマス燃料の調達及び使用計画書」がある。鉛筆書きか何かで「林野庁差しかえ後」と書いてあるが?(*下の画像参照
課長補佐:ああ、ありますね。

――差しかえ前のものがあるのか?
課長補佐:差しかえ前のものは、もう保管せず廃棄しております。

――廃棄した?
課長補佐:はい。申請のときに、あのー、事業者さんと、あのー提出された文書のやり取りをいたしますけども。はい。あのー、なんか間違いなどが、えー見つかった場合は、えー、事業者さんとお話して、えー返送、もしくは、はい、こちらでの、シュレッダー廃棄ですね。という形で進めております。

――廃棄ね。
課長補佐:はい。

――なるほど。ところで、何か所も黒塗りがある。(*下の画像参照
課長補佐:はい。

――非開示理由がたくさんあった。
課長補佐:あー、はい。

――この事業のガイドラインを見たが、申請書と使用計画書でワンセットということで間違いないか?
課長補佐:そうですね。

――使用計画書がなかったら、許可も出ないと?
課長補佐:そうなりすね。

――使用計画書は全開示できないのか?
課長補佐:そうですね。あのー、我々も、そうですね。

――国会議員が(資料請求を)やってもだめか?
課長補佐:あの、事業者さんのあくまでも、そのー、不利益につながる情報ということで。あの、情報公開法で、あのー、定められている。

――国会議員さんが、国会で請求してもこの黒塗りで出てくると?
課長補佐:同じになります。

――誰に対しても同じ?
課長補佐:はい。そうでないと法律上……。

――これまでも、これからもそういうことか?
課長補佐:はい。なので、あの……。

――今まで請求はなかったのか?あったとして、その時も黒塗りは黒塗りだったと?
課長補佐:黒塗りは黒塗りです。

――変更なしということでいいか?
課長補佐:そうですね。

――たしかに、あっちには開示、こっちには黒塗りというわけにはいかない。
課長補佐:そういうことがあってはいけません。

――それで、この使用計画書の中で、「地域社会に対する対応」という項目がある。ここも黒塗りになっているが?(*下の画像参照。赤い囲みはハンター編集部

課長補佐:はい。

――この部分を開示するつもりはないか?
課長補佐:そうですね、ここはもう調整状況ということで。

――国会で請求されても黒塗りか?
課長補佐:同じになります。

――住民説明会は許認可の必須条件か?
課長補佐:……。

――どうなのか?
課長補佐:ええと……、まあガイドライン上定めているものですね。あのー、努力義務という形でなっております。

――努力義務?なくてもいい?
課長補佐:なくてもいいというわけではなく……。もう様式で、あの、もうこれ我々、あのー、ホームページで、こういう様式で、ええと、これは計画書……。

――この使用計画書の中に虚偽が見つかった場合はどうなるのか?
課長補佐:虚偽?

――つまり、嘘。
課長補佐:嘘というのは?

――ガイドラインには、内容に不備があった場合は許可の取り消しに繋がりかねない、と書いてある?間違いないか。
課長補佐:あのー、パンフレットにもですね、こちらにお示ししている……。そうですね。

――だから、正確に提供しなさいと。遵守事項としてはあると。
課長補佐:そうですね。はい。

――だから、正確にしていなかった、つまり虚偽だった場合どうなるのか?そこで、改めて聞くが黒塗りは黒塗りのままか?
課長補佐:はい。

――後にも先にも開示しないということでいいか?
課長補佐:おっしゃる通りで。

――では、ここからが本番。これは何か?(*下の画像参照)
課長補佐:それは……。

――これは何か?
課長補佐:……。

――これは、そちらがかつて開示した文書だそうだが?
課長補佐:……はい、えっと、いつ、出したもの……?

――去年の秋。
課長補佐:去年は……。

――いつのことであろうが、後にも先にも開示箇所は変わらない、国会議員が求めても同じものしか出さないと言ったが、これは何か?
課長補佐:……。

――住民説明会。元年11月。これを隠してなんの意味があるのか?
課長補佐:……。

――なんでうちには黒塗りなのかと聞いている。あなたがさっき言ったこと全然違う。
課長補佐:……ええと、これは……。

――後にも先にも、黒塗りだと。今までも黒塗りと。これから先も黒塗りだと言った。(隣に座る別の課長補佐に)あなた、聞いていたか?
同席者:聞いてました。

――どう責任とるのか?虚偽の説明について。
課長補佐:あの……、ええと、開示、開示部分については、開示不開示の判断については、その都度その都度……。

――その都度じゃないだろう。さっき聞いたばっかりじゃないか。
課長補佐:判断しておりまして。どこを隠して、どこを開示するかというのは。

――モリカケ問題の二の舞だ。同じことをやってる。南スーダンの日報の件、覚えているか?ないと言ったものが出た。同じだ。いったん開示したものが、なんで黒塗りになるのか。こういうのを隠蔽という。
課長補佐:えっと、その都度その都度。

――その都度その都度変わったら、情報公開制度は成り立たない。駄目だ。
課長補佐:えっと…これですね、あの……。

――言い訳なら文書で。そちらの言い分は記事に載せる。うちは隠蔽と書く。こんなことが許されていいわけがない。その都度変わる?そんな馬鹿な情報公開どこにあるのか。だから最初に聞いた。「後にも先にも変わらないか」と。あなたは、「変わらない」と何度も言った。
課長補佐:はい。基本はそうです。

――基本ではない。大原則だ。
課長補佐:その都度その都度、あのー。

――なんでうちには黒塗りなのか?
課長補佐:事業者さんとのやり取りの中で、ここは、えー、事業者さんの不利益に繋がるという理由書。

――では、なんでその前は開示したのか?
課長補佐:そのときは、すみません。そのときのちょっと理由書を確認いたします。

――いやいや、それは駄目。
課長補佐:あのー、開示できるという理由になってんだと思います。

――さっき言ったことと全く違うことを言っている。国の情報公開の中身がその都度コロコロ変わるのか?あり得ない。
課長補佐:……。

――モリカケ、南スーダンと一緒のことじゃないか。
課長補佐:……。

――あなたは先日、文書を紙でお出ししているだけ、説明責任はないとハッキリおっしゃったが?
課長補佐:説明責任はないとまでは申しておりません。

――おっしゃってます!記録を読みますよ。“出された文書の説明責任はないんですか?”――「えーございません。そこまではいたしておりません」。これ、あなただ。
課長補佐:……。それは本省のほうにも私も確認しております。

――「内容によります」という話か?
課長補佐:はい。内容によります。答えられる部分と、答えられない部分が……。情報公開法では、あのー、文書の開示の際には、内容の説明までは定められておりません。

――そう言っていればいい。経済産業省は説明責任を放棄し、隠蔽したということになる。あなた、業者からカネでも貰っているのではないか?

(*このやり取りの際、ハンターの記者は開示済み文書の時期を「昨年」としていたが、再確認したところ「1昨年」が正解。ただし本稿では、そのまま「昨年」とした)

 いかなる場合でも「黒塗り=非開示部分」を変えることはないと断言していた課長補佐の言葉は真っ赤な嘘だった。国会で請求されても黒塗りは黒塗りと言っておきながら、かつて自分たちが全面的に開示した同じ文書を提示されたとたん、しどろもどろに――。ついには、開示請求があれば、その都度開示内容を変えると言い出した。経済産業省の情報公開には、信頼性が担保されていない。

 この数日後、問題の課長補佐は「本省も同じ見解である」と連絡してきた。毎度のことながら、役所を挙げての隠蔽が始まったと考えるしかない。

 こうした経産省側の姿勢について、国や地方自治体の情報公開制度に詳しい市民オンブズマン福岡の児嶋研二代表幹事は、次のように話している。
「対面での説明を拒否するとか、請求ごとに開示内容を変えたりするなどという話は、聞いたことがない。国の情報公開法は、国民への説明責任を果たすという基本理念に基づき制定されたものだ。請求者によって開示される内容が違うということになれば、法や制度の根本が揺らぐ。これでは説明責任を果たしていると言えない。経済産業省が、普段から対面での説明を拒否したり、請求ごとに開示内容を変えているというのであれば、基本理念を無視した暴走だと言わざるを得ない。何かを隠していると思われてもおかしくない」

 経済産業省が隠蔽に走った文書は、福岡県内の自治体で整備が進められているバイオマス発電所の申請文書に添付されたものだ。その自治体とは、疑惑まみれの業者選定などが問題となっている田川市。二場公人市長と特定の企業・市議らとの癒着が疑われる状況について、これまで度々報じてきた“腐った自治体”である。この事業について取材を進める中、案の定、ある政治家が重要な役割を果たしていたことが明らかとなる。

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