政務活動費「個人と按分」の不明朗|立憲福岡・堤かなめ県議の“見えない”政治活動(下)

選挙期間中の支出も、関連政治団体の活動費支出も「0」。立憲民主党に所属する堤かなめ県議会議員の活動実態を、政治資金から追うのは不可能だ。一体、どうやって議員活動を続けているのか分からない状況だが、同氏が唯一、収支を明らかにしているカネがある。議員に支給される「政務活動費」だ。福岡県議会への情報公開請求で入手した堤県議の政務活動費使途報告書と領収書を精査した。

■「政務活動費」の大半は経常経費

結論から述べれば、開示された政務活動費の使途報告書と領収書からは、堤県議が熱心に政治活動をやっているという確証が得られない。

費消された政活費の内訳をみていくと、事務所の家賃、光熱水費、車のリース代、電話代、人件費などのいわゆる経常経費がほとんど。資料購入費としてしんぶん赤旗や書籍の代金支払いが散見されるが、調査研究費として計上されているガソリン代は月数千円程度で、“動き回る議員”の姿は浮かんで来ない。「カネのかからない政治」であることは間違いないが、逆に“県民のために身を粉にして働く政治家”という理想像とは程遠い印象を受ける。

■収入原資は不透明

議員は政務活動以外に、議会活動、政党活動、選挙活動、後援会活動等多彩な活動を行っており、政務活動の補助員が複数の活動に従事する場合もある。そのため経常経費や人件費を、活動実績に応じて按分することが許される。各活動の実績の把握が困難な場合、政務活動費の充当割合は2分の1以内となる。

堤氏の場合、広聴・広報費の一部を除く経常経費と人件費の按分率はすべて「50%」。すると残りの50%を別の財布から支出していることになるが、これまで報じてきた通り、選挙の支出も、二つある政治団体(「丘政会」・「堤かなめ後援会」)の支出も、2018年(平成30年)に資料作成費として計上されていた126,532円を除いて「0」というのが実情だ。政務活動費を、どこと按分したのか分からない。

そこで、堤氏に関連政治団体との按分なのか、堤氏個人との按分なのか確認を求めたところ、「個人との按分」という回答が返ってきた。つまり、支出の半分以上を税金を原資とする政務活動費で賄い、残りを自腹で払っているというわけだ。ようやく按分方法は分かったが、不透明な政治資金収支であることに違いはない。

政治資金の透明化は、「入り」と「出」、つまり「どこから来たカネが、どう使われたか」が明示されてはじめて実現可能となる。堤氏の政治資金収支は、支出先が明らかになっているだけで、堤氏個人が費消したカネの出所が分からないのだ。議員歳費なのか、別の収入源によるカネなのか――そこが明示されない以上、違法性はないが、透明性は担保されないと断ぜざるを得ない。

■政活費で選挙の事前活動

ところで、堤氏の政務活動費利用状況を精査していくと、広聴・広報費の一部の支出だけ「按分率」が跳ね上がるものがある。「県議会報告」の制作費と配布費用だ。

堤氏の公式サイトにある「活動報告」に、唯一掲載されているのが毎年1~2回発行されてきた県議会報告のPDF(下の画像参照)。この印刷物を、堤氏は政務活動費を主な財源にして発行していた。

県議会報告の按分率は、2019年までが「80%」、19年からが「90」%。自己資金の比率はグッと低くなっている。2018年から20年までに作成された県議会報告関連費用の内訳を、下の表にまとめた。

 支出額の大きなものだけ政活費の按分率を上げるというのはずいぶんセコイ話だが、問題となるのは上掲の表で黄色く色分けした2019年春の県議会報告だ。(*下が問題の県議会報告)

 冒頭の挨拶文に記されているように、この年は4月に統一地方選があり、堤氏も3期目を目指して立候補予定だった。「ぜひ投票をお願いします」とある通り、選挙を意識して活動ぶりをアピールする印刷物であることは間違いない。そして上掲の表からは、この「2019年早春号」だけが、他の号より印刷費も配布料も高くなっているのが分かる。

各年の議会報告作成枚数のうち、分かる分だけを赤字で示したが、県議選を間近に控えた2019年早春号の作成枚数は、それまでの最高だった5千枚の15倍以上となる7万6,200枚に膨らんでいた。しかも、郵送ではなくポスティング。不特定多数に配った証拠であり、目的は「選挙」であったとみるのが自然だろう。つまり、堤氏は、政務活動費で選挙の事前活動を行っていたということだ。

■身内からも厳しい意見

これまで報じてきた通り、堤氏は無投票となった2019年の県議会議員選挙(博多区)で立憲民主党から得た公認料130万円を、そっくり懐に入れていた。選挙期間中の実質的な支出は「0」。何もしなかった格好だ。

資金管理団体「丘政会」、支援団体「堤かなめ後援会」の、同年の支出も「0」。政治活動の実態は、まるで見えてこない。議会活動に専念してるということなのか、事務所運営費の半分以上を政務務活動費で賄い、残りを外形的には出所不明となるカネで支払うという状態だ。こうした点について、ある立憲民主党関係者は次のように話している。
「堤さんの活動ぶりに、批判が多いのは承知しています。地元博多区の会合などにはあまり顔を出さないと聞いていますし、街頭や戸別訪問に精を出すということもなかった。無投票当選が分かっていたせいで、2019年の選挙の時は、それまで以上に動かなかった。人の選挙で懸命に応援に回ったという話も聞いたことがない。出身校の同窓生が熱心に応援してくれていますが、有権者とひざを突き合わせての議論したり、地域行事で住民と触れ合うということは少なかったのではないでしょうか。でなければ、政治団体の支出がゼロということはあり得ませんから」

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