福岡県町村会事務局内に自民党支部 特定政党への便宜供与か?

福岡県町村会の事務局内に自由民主党の支部が存在していたことが明らかとなった。自民党への便宜供与さえ疑われる事実だ。県内自治体が拠出する会費や補助金等の公金で運営される町村会内部に特定政党の支部があったことに対し,不適切との声が上がっている。問題の支部は昨年8月、県選挙管理委員会に解散届を提出している。

 

 

町村会事務局が運営

町村会の中に主たる事務所を置いていたのは「自由民主党福岡県地域振興支部」。

県選管に提出された政治団体設立届によると、設立は平成12年11月で、代表には昨年、後期高齢者医療制度にからむ副知事への贈賄で逮捕、起訴され有罪判決を受けた県町村会の山本文男・前会長が就いていた。主たる事務所には県町村会が事務所を構える福岡市博多区の福岡県自治会館の住所が記されている。また、規約には《福岡県支部連合会並びに党本部との関係を厳密に保ちながら、地方自治の発展と党の使命綱領および政策を実現するための諸活動を行なうことを目的とする》とした上で、支部を《地方自治関係の党員で構成する》と明記されている。

同じく県選管に提出された政治団体の異動届によれば、設立から昨年8月の解散までに、会計責任者を務めたのは6人。いずれも県OBで町村会関係者ばかりだった。平成20年1月から昨年4月までは、町村会を巡る詐欺事件で逮捕された同会元総務課長が会計責任者だ。

同支部が県選管に提出した平成21年分の政治資金収支報告書には、連絡先として県町村会の電話に加え、「福岡県町村会 事務局長 小林征邦」のスタンプが押してある。20年分も同様だった。
こうした事実から、「自由民主党福岡県地域振興支部」が、県町村会の事務局ぐるみで運営されていた実態が浮かび上がってきた。

 

今月2日、同支部の連絡先となっていた県町村会の事務局長に説明を求めたところ、電話で「(町村会を巡る)事件が起きて、山本会長があのようなこと(逮捕、起訴)になった。以前から不適切だと考えていたので、解散を決めた」と説明。さらに9日、町村会事務局で取材に応じた事務局長は、自民支部の解散にともない、繰り越されていた現金が「わずかながら」(事務局長)残っており、その処理に困っていると話した。収支報告書で確認したが、自民支部の残金として57,217円が確認された。この金額が今も事務局長の手元に残っていることになる。また、事務局長は、大半の町村長が自民支部の存在さえ知らなかったはずだとしている。確かに、複数の首長および首長経験者に話を聞いたが、自民支部の存在を知っていた人物は現在まで1人もいない。支部設立の理由は謎のままだ。

町村会は、昨日報じたように公金で運営されている団体である。事務所がある「福岡県自治会館」も公金によって建設されたものだ。任意団体とはいえ、限りなく公的組織に近い町村会の内部に、特定政党の支部を置くことが許されるはずがない。山本前会長のワンマン体制だからこそ可能だったと言えよう。
自民党の支部を置くことで、町村会側に何らかの利益がもたらされていたのではないかという疑問も生じる。見返りを期待しての便宜供与だった可能性は否定できない。

参院議員の後援会も
実は、こうした疑念を裏付けるかのような別の事実が判明している。県町村会の事務局内には、自民党支部だけでなく特定政治家の後援会も存在していたのである。
平成18年から同19年にかけて、当時の自民党参議院議員・森元恒雄氏の支援団体「森元つねお福岡県後援会」(平成19年8月に解散)が、町村会内に主たる事務所を置いていたのだ。代表者が山本文男氏であったことは言うまでもない。

森元・元参院議員は、総務省(入省時は旧・自治省)の官僚から国政に転じ、平成13年の参院選で比例区から出馬し初当選。町村会とも関係が深かった。平成18年からは、同19年の参院選に向けて活動していた時期にあたる。当時、全国町村会の会長を務めていた山本文男氏が、地方自治体と密接な関係にある総務省出身の森元氏を支援したのは、町村会と自民党、さらには総務省との政治的癒着構造を示している。(この点については稿を改めて報じる)

福岡県内のある首長経験者は「信じられない。特定政党の支部や国会議員の後援会を置くなど不適切極まりない。町村会は公的な金で成り立っている。山本さん(前会長)はそんなことまでやっていたのか」と肩を落とした。

*県町村会事務局長は、一連の事実について、現在の町村会長などに報告したかとの質問に「していない」と答えた。町村会内部の情報伝達・報告の不徹底を改めて感じた。

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