警察庁が先ごろ発表した昨年1年間の懲戒処分について過日の配信で伝えたところだが(既報)、2025年に記録された処分等の中には懲戒に到らない軽微な制裁も含まれていた。「監督上の措置」と呼ばれるそれらは報道発表を前提としないペナルティのため、ほぼ全件が表面化を免れることになる。筆者はその概要を把握するため当局へ公文書開示請求を行ない、懲戒処分の記録と同旨の文書を入手することができた。
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警察庁が1月29日付で一部開示を決定した『非違事案の処分実施について』なる文書によると、昨年1年間に同庁で記録された監督上の措置は計26件で、被処分者数は27人(訓戒7、注意19、口頭厳重注意1)。その全件が「広報対応なし」、つまり未発表だった。
一部墨塗り処理された文書からは、措置の主体となった部局が読み取れないものもあれば、被処分者が所属すると思われる地方支分部局などが明記されたものもある。確認できる限りで分類しておくと、所属不明が11人(うちいずれかの管区警察局所属が2人)、関東管区警察局4人、近畿管区1人、中国四国管区1人、九州管区が4人、皇宮警察本部が6人だった。
上位3部局のうち、関東管区警察局については被処分者が4人だが事案としては3件に留まり、それぞれ不適切な言動、不適切な事務処理、及びパワーハラスメントだった。ここでは、事実上のワースト1、2となった皇宮警察と九州管区の事案について各件の概要を報告しておきたい。まずは皇宮警察の6件から(処分日順、一部伏字は原文通り)。
■皇宮警察
(1)4月16日付「本部長注意」…未発表
発生日時:令和6年8月19日午後9時45分頃
場所:皇宮■■内
当該職員:■■護衛署 ■■(当時:皇宮■■) 皇宮巡査部長 ■■
関係者:■■ ■■
事案概要:当該職員は、上記日時場所において、関係職員に対して感情的に叱責し、更に■■暴力行為を行い、苦痛を与えるとともに心理的な不安を与えるパワー・ハラスメントを行ったもの。・ ・ ・
(2)5月22日付「本部長注意」…未発表
発生日時:令和6年10月29日から令和7年2月19日までの間
場所:皇宮警察本部■■護衛署
当該職員:■■護衛署 ■■ 皇宮巡査 ■■
関係者:なし
事案概要:当該職員は、上記日時場所において、■■に従事する際、勤務中における携帯電話機の携行及び使用が禁止されていることを認識していたにもかかわらず、所属長に許可申請することなく携行及び使用し、合計16時間47分にわたり、職務を懈怠したものである。・ ・ ・
(3)6月27日付「所属長注意」…未発表
発生日時:令和7年4月9日(水)午前6時00分頃
場所:■■
当該職員:■■護衛署 皇宮警部補 ■■
関係者:■■ ■■
事案概要:当該職員は、上記日時自宅において■■を示された際、■■に激高して、■■暴行を加えたものである。・ ・ ・
(4)7月31日付「副本部長注意」…未発表
発生日時:平成28年度頃及び令和5年度から同6年度までの間
場所:■■護衛署
当該職員:■■護衛署 皇宮警部補 ■■
関係者:A ■■ B ■■ C■■ D■■ E■■
事案概要:当該職員は ① 平成28年度頃及び令和5年度から同6年度までの間、執務時間外に関係職員らから、■■を受け、周囲の者に「■■して行わせていた」と、誤解される不適切な行為をさせた。(A、B、C、D) ② 令和5年度から同6年度までの間、関係職員に対して複数回にわたり、人目のつかない場所で20分から30分の指導を行った際、■■指導の延長と誤解させる不適切な指導を行った(C、D、E)ものである。・ ・ ・
(5)10月31日付「所属長訓戒」…未発表
発生日時:平成28年頃から令和7年7月頃までの間
場所:■■護衛署及び■■護衛署
当該職員:■■護衛署 ■■ 皇宮警部補 ■■
関係者:A ■■ B ■■ C■■ D■■ E■■ F■■
事案概要:当該職員は、平成28年頃から令和7年7月頃までの間、複数の被害職員らに対し、■■(A、B、C、E、F)、■■(A、B、D、E)■■等と性的な行為を連想させる卑猥な言動をする(A)、■■(F)等、同人らを不快にさせるセクシュアル・ハラスメントを行ったものである。・ ・ ・
(6)12月15日付「所属長注意」…未発表
発生日時:令和7年3月頃から同年10月頃までの間
場所:■■護衛署
当該職員:■■護衛署 ■■ 皇宮警部補 ■■
関係者:■■ 他5人
事案概要:当該職員は、上記の期間中に■■行為を行った他、関係職員らに対して、■■行為を繰り返し、関係職員その他周囲の職員を萎縮させる不適切な言動を行い、勤務環境を害したものである。
よくもまあ、と驚きを禁じ得ない。皇宮警察の不祥事は過去にも雑誌や一部新聞などで俎上に載せられてきたが、2025年に及んでもこれだけの事案が発生していたわけだ。本邦の皇族らの至近に控えて彼らの護衛・警備にあたる職員たちが2カ月に1度の頻度で不祥事を起こし、その多くが深刻なセクハラないしパワハラが疑われる事案だった。
(1)と(3)に到っては公文書中に「暴力行為」及び「暴行」と明記があり、いずれも悪質な犯罪だったことが窺えるが、ともに懲戒よりも軽い「注意」で済まされ、ひいては報道発表を免れている(*下の画像。クリックで拡大)。

(4)(5)及び(6)のハラスメント事案では複数の職員が被害に遭っていたとされるが、これも未発表。こうした深刻な不祥事が皇宮警察で頻繁に起きるのはなぜなのか。職場環境に何らかの問題があるのか、あるいはたまたま昨年に限って不祥事が集中しただけなのか、実際のところは知る由もない。
■九州管区警察局
続いて、2番目に監督上の措置が多かった九州管区警察局の4事案。すべて「注意」で処理された全件の概要を下に採録する。
(1)1月22日付「所属長注意」…未発表
発生日時:令和6年5月6日から同年9月19日までの間
場所:■■執務室内ほか
当該職員:■■ 警察庁技官 ■■
関係者:(被害職員) ■■ ■■ ■■
事案概要:当該職員は、令和6年5月6日から同年9月19日までの間、被害職員に対して、日常的に■■と呼び、また会話をする中で■■と発言したり、不用意に被害職員の身体に触るなど、被害職員に不快な感情を抱かせるセクシュアル・ハラスメント行為を行ったものである。・ ・ ・
(2)2月21日付「所属長注意」…未発表
発生日時:令和5年7月頃から令和6年2月23日までの間
場所:鹿児島市内の路上及び店舗内等
当該職員:■■ 警察庁技官 ■■
関係者:(被害職員) ■■ ■■ ■■
事案概要:当該職員は、令和5年7月頃から令和6年2月23日までの間、被害職員に対して、鹿児島市内の路上及び店舗内において、■■等不用意に被害職員の体を触り、被害職員に不快な感情を抱かせるセクシュアル・ハラスメント行為を行ったものである。・ ・ ・
(3)3月13日付「所属長注意」…未発表
発生日時:令和6年11月上旬頃から令和6年11月25日までの間
場所:九州管区警察局■■ ■■執務室
当該職員:九州管区警察局■■ 警察庁技官 ■■
関係者:九州管区警察局■■ ■■ ■■
事案概要:上記日時場所において、関係者に対し、休憩中、約1時間にわたり■■などと発言するなど、業務上必要かつ相当な範囲を超える言動をし、関係者に精神的苦痛を与え、関係者の人格若しくは尊厳を害したものである。・ ・ ・
(4)10月6日付「所属長注意」…未発表
発生日時:(1)令和7年7月31日午後10時44分頃 (2)同年8月1日午前3時頃
場所:沖縄県那覇市■■構内 沖縄県那覇市■■所在の飲食店
当該職員:■■ 警察庁技官 ■■
関係者:(空欄)
事案概要:当該職員は、第一 令和7年7月31日午後10時44分頃、沖縄県那覇市■■構内において、泥酔の上寝込んだことにより一般人から110番通報され、同通報を受けた沖縄県那覇警察署員に同県警本部まで搬送され、 第二 同年8月1日午前3時頃、沖縄県那覇市■■所在の飲食店において、飲食代(約5万円)を支払った際、1万円足りず、後日返済する旨を同店従業員と口頭約束を交わし1万円を同従業員から借用したが、5日経過するも返済を履行せず、その職の信用を失墜したものである。
先の皇宮警察にも劣らぬ惨状。4件中2件がセクハラ、1件がパワハラ、残る1件がいわゆる信用失墜事案だった。いずれの当事者も九州管区所属の「警察庁技官」だが、属性が共通する理由は定かでなく、なぜ九州に勤務すると他管区よりも不祥事を多く起こすことになるのかも不明だ。4件すべての事案に被害者がおり、とりわけ最後の信用失墜事案では深夜に泥酔して保護されたはずの当事者がその4時間後に懲りもせず「飲食店」でトラブルを起こしている。飲食代が「5万円」とあることから、現場が一般的な飲食店ではなかったことが察せられるが、そこまでして遊び続けたかったのはなぜなのか(*下の画像)。

職場内の不祥事では(1)と(2)のセクハラで特定の職員への加害行為が長期間に及んでいたことが確認でき、ともに事案の常習性・悪質性が窺える(*下の画像。クリックで拡大)。

何度でも繰り返すが、これらの看過し難い不祥事はどれもこれも、一切合財、ことごとく報道発表されていない。国民の安寧と公共の安全を守っているはずの法の執行者たちは、何よりも彼ら自身の安全と社会的地位とを組織に守ってもらっているようだ。納税者として彼らの生活を支え続ける国民はそうした特権に縁がなく、暴行や飲食費の踏み倒しなどで容赦なく実名報道されて社会的制裁を受けることになるわけだが――。
(小笠原淳)
| 【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |















