葉梨氏更迭で懸念される「辞任ドミノ」|止まらぬ岸田内閣の支持率低下

11月11日、岸田文雄首相は法務大臣だった葉梨康弘衆議院議員を実質的に更迭し、後任に斎藤健元農相をあてた。

葉梨氏は、9日に開かれた武井健輔外務副大臣(岸田派)の政治資金パーティーで挨拶したが、そこで飛び出したのがSNSでもトレンドに上がった「死刑はんこ」発言。与党内からも厳しい批判が噴き出した。

10月には 旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)側との接点が次々と発覚した山際大志郎衆院議員が経済再生担当相を更迭したばかり。支持率低下に苦しむ岸田内閣の迷走が止まらない。

◇   ◇   ◇

11月9日21時33分に時事通信が速報した記事は、こうだ。
《葉梨康弘法相は9日、東京都内のホテルで開かれた自民党衆院議員の会合で、法相の仕事について「死刑のはんこを押し、昼のニュースのトップになるのはそういう時だけという地味な役職」と述べた。葉梨氏はまた、「旧統一教会の問題に抱きつかれてしまい、一生懸命解決に取り組まないといけないということで、私の顔もテレビに出るようになった」と語った。》

実際の発言がこれどころではなかっことを明かしたのは、翌日10日に釈明にあたった他ならぬ葉梨氏本人だった。マスコミに囲まれた葉梨氏は、記者の差し出すICレコーダーが目障りだったのか「紙が読めないだろう」などと記者の手を遮り、自らの発言について「昨日、武井外務副大臣のパーティで発言した内容をこれからちょっと読み上げさせて頂きます」とした上で、テープ起こしした内容を読み始めた。

「法務大臣を務めている衆院議員の葉梨康弘です。私の宏池会の同志でもある武井さんを励ます会、ぜひ激励の言葉と、喜んで参上致しました。法務大臣になり三月(みつき)になりますが、法務大臣というのは朝、死刑のはんこを押しまして、昼のニュースのトップになるのはそう言うときだけ。地味な役職ですが、今回はなぜか旧統一教会の問題に抱きつかれてしまいました。ただ、抱きつかれたというよりは一生懸命、問題解決に取り組まないといけないということで、私の顔もいくらかテレビに出るようになった。武井さんの話ですけれども先ほど来、話があるが、コロナ禍になる前は宏池会の中でも飲み会とかやっていました。非常に明るい、お酒を飲む、声も、歌う声もでかい。(自動車メーカー)日野の2トンとかたくさん歌って非常に明るいなという印象です」

法務大臣たるものが、こんなことを政治資金パーティで堂々と言えば、マスコミが速報を打つのは当然。死刑は、国家がただ一つしかない人の生命を奪うもの。非常に重いものなのだ。それを落語の「まくら」のように使い、会場を盛り上げようとする葉梨氏……。ある自民党の大臣経験者が呆れ顔にこう話す。
「私も夜、ニュース速報を見ました。ダメだ、すぐにクビだと思いました」

パーティーに出席していた岸田派の議員も、「葉梨氏が死刑だとか言い出すので、何のことかと思ったら、内容にただ唖然とした。しかも、笑いを取ろうとするような調子で語るのです。大丈夫かなと心配していたら、やはり大炎上でした」と振り返る。

葉梨氏が所属する岸田派の議員ですら即座に反応したのに、「死刑はんこ発言」に対する岸田文雄首相ら官邸中枢の動きは鈍かった。当初、岸田首相は「葉梨氏に厳重注意をした、しっかり説明責任を果たしてもらう」と更迭を否定。だが、葉梨氏が「はんこ発言」以外にも「外務省と法務省は票とお金に縁がない。外務副大臣になってもぜんぜんお金はもうからない。法相になってもお金は集まらない」と暴走していた。

さらに翌日10日の囲み取材には、「法務大臣の仕事が死刑のはんこを押すだけとは一切言っておりません。一部をマスコミに切り取られた」と言い訳をしながら「最初の導入としてマスコミの昼ニュースのトップに出るという、ファクト、今までは死刑の印鑑を押した、その日の昼のニュースのトップに出るというのがファクトとして、そういうことになっていると。ですから、地味かもしれないけれども、極めて大切な行政であると全体としては申し上げた」と、まったく釈明にならない話を披露。発言の「撤回」も否定していた。その後、参議院の委員会で追及され「撤回」を認めるというお粗末さ。更迭が遅れたことで、傷口を広げた格好となった。

葉梨氏は警察官僚出身。義理の父である葉梨信行元衆議院議員の後継者として出馬した2世議員だ。民主党への政権交代選挙で敗れたが、その後は当選を重ねて現在6期目。今回が初入閣だった。前出の大臣経験者は次のように解説する。
「警察官僚だけあって頭が高い、高圧的な人ですね。若手議員の名前を何度聞いても覚えず、『おい、キミ、誰だっけ』なんてことは年中。岸田首相のもとで初入閣となったのですが、そういう性格なので、充てる閣僚ポストには苦労したようです。復興大臣が適任ではとの声もあったが、被災地で直接市民に向き合い、寄り添うことが絶対条件のポスト。過去には、旧民主党の松本龍氏や自民党の今村雅弘氏が上から目線の発言で更迭されています。とても葉梨氏では務まらない。そこで、それこそ昼ニュースでもめったに話題になることがない法相となったというわけです。死刑に関しては口を閉ざすのが法相の仕事みたいなものなんですが、それをネタに笑いをとっていたわけで、クビは当然です」

10月山際大志郎に続く不祥事での閣僚辞任。寺田稔総務大臣と秋葉賢也復興大臣も、政治資金の問題で連日のように追及を受けて立ち往しており、「辞任ドミノ」が心配される状況となっている。

「山際さんのあとは、寺田、秋葉と辞任ドミノの予備軍が控えていた。そこに、ノーマークだった葉梨氏の死刑はんこ発言で、ますます岸田首相は追い込まれてしまった。世論調査で危険水域の30%台を割り込む数字が出ている中、延命には解散総選挙しかないとの声しきりで準備に走る議員も――。私もその一人ですが、もう安倍首相時代のような自民圧勝はないでしょうね」(自民党の若手議員)

首相退陣へのカウントダウンが始まっているのかもしれない。

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