混迷深まる池田市長選|チラつく日本維新・足立康史衆院議員の影

「市長室にサウナ」で全国的に知られるようになった大阪府池田市。問題を起こした冨田裕樹氏が7月末で辞職したため、8月29日投開票で市長選挙が行われる。

冨田氏は7月27日、市長室に家庭用サウナなどの私物を持ち込んだ問題などを追及した池田市議会・百条委員会への反論会見を開催。税金で賄われている市役所内の会議室から、出直し選挙の出馬表明を行うという異例の事態となった。背景を探ってみると……。

■騒ぎの責任認めた維新が一転して市議擁立

お騒がせ市長は、「古い政治から脱却して、新しい池田市を作りたい」などと再出馬について語り、一連のサウナ疑惑についても「守旧派の市議らが、政争の具として持ち出した。サウナは権力闘争に使われた。それが騒動の背景だ」と正当性を主張。その直後から街頭に立ち、選挙戦に向けた訴えをはじめている。

一方、池田市議会議員の渡辺千芳氏、元市議の内藤勝氏、前年の市長選で冨田氏を担いで当選させた大阪維新の会に所属する瀧澤智子市議も出馬を表明しており、4人が市長の座を争う展開だ。

ある市議は「情勢は混とんとしています」と苦悩の表情を隠せない。確かに、選挙戦の構図は複雑だ。大阪維新の会の滝沢氏と元維新の冨田氏が維新票を奪い合う形となるのに加え、自民党など保守系が渡辺氏を支援、内藤氏は立憲民主党、国民民主党、労組の支持を受ける。

当初、大阪維新の会の代表でもある吉村洋文知事や日本維新の会の代表を務める松井一郎大阪市市長は、池田市長選への候補擁立に否定的だった。吉村氏は「けじめのつけ方が間違っている。理解は得られない」などと冨田氏を批判。松井氏は池田市長選に関して、「一切、今回は池田市長選挙、関与、コミットしません。やっぱり、池田の皆さんにわれわれも混乱を招いた責任は僕にあります」と候補者の擁立を見合わせる意向を示していた。

そこに突然、名乗りを上げたのが瀧澤氏だった。冨田氏は「維新票」を期待しての再出馬だったのだろうが、それが割れるのは確実だ。

瀧澤氏擁立を進めたのは、池田市を含む衆院大阪9区が地盤の足立康史衆院議員。大阪維新のある地方議員が、次のように解説する。
「足立氏は、解散総選挙が近いこともあって、池田市長選は自身の票につながると必死で候補者を探していた。最悪のサウナ市長のイメージから脱却しようと最初は水泳のオリンピックメダリスト・中西悠子さんや東京都議選に都民ファーストから出馬して落選した元タレントの池辺愛さんという地元出身者に声をかけていました。しかし、急な選挙の出馬に応じる人などいません。現在の維新の看板は吉村知事ですが、創立者である松井市長には隠然たる力があります。足立氏はその松井市長から『有名人、タレントはアカン』とくぎを刺されたそうです」

残ったタ―ゲットは、市議1期と経験が浅い瀧澤氏。足立氏は瀧澤氏を何度も口説いたが、なかなか、首を縦に振らなかった。

8月10日、池田市議会の大阪維新の会控室に突然現れて周囲を驚かせた足立氏は、代表者会議に来ていた瀧澤氏と長時間会談。その直後、瀧澤氏は市議会議長のところへ足を運び、市長選への立候補と市議辞職の意向を示したという。

瀧澤氏の出馬理由は「サウナ市長、冨田氏の再選阻止」というもの。だが、瀧澤氏は今年4月、池田市議会で冨田氏の不信任決議案が提出されたときには反対に回っていた。つまり、「サウナ市長」を支持していたわけだ。

そもそも、冨田氏が池田市議時代に同氏の秘書をしていたのが瀧澤氏。大阪維新の会のホームページにも「冨田ひろき私設秘書」と書かれていたが、最近になって確認してみると「秘書」が削除されていた。姑息と言うしかない。

■足立議員、労組系候補と「密談」の怪情報

自身の元秘書である冨田氏や瀧澤氏の擁立にもっとも深く関わってきたのは足立氏であり、池田市の職員は声を潜めてこう話す。
「市長選ですが、サウナ市長はイメージが最悪な上、支援者も離れて厳しい情勢。市長選出馬を決めた滝沢市議は、冨田の秘書ではマイナスだ、やばいとばかり『冨田ひろき私設秘書』の肩書を外したんじゃないのかと噂になっています。足立さんは、池田市の市長が取れれば次期衆院選ではかなり優位に立てますから、必死でしょう。池田市長選では、候補者よりも足立さんの動きが目立っているように感じます。もちろん、次の衆院選のために瀧澤氏を擁立したんでしょうから」

足立氏は自身のSNSで滝沢氏の出馬について“池田市を守り、池田市の未来を創るために、瀧澤智子支部長が自ら決断されたと承知しています”と市長選出馬を歓迎する投稿をしている。だが、その1週間ほど前にはこうつぶやいていた。
“松井一郎代表は、冨田氏を公認し混乱を招いた責任があるのだから「われわれは一切、池田市長選にコミットしない」、胸を張って新しい公認候補を擁立できる立場ではない、との考えを示されました。全くもってその通り”――足立氏が何を考え、どこを目指そうとしているのかまるでわからない。

じつは、足立氏の不可解な姿勢を象徴するような情報が流れている。足立氏と元市議の内藤氏が「密談」していたというのだ。

内藤氏は、地元ダイハツ労組の出身で、池田市議を10期務めた人物だ。当初、維新が候補者を立てないと聞いて、内藤氏から足立氏に接近したという。ある池田市議が、記者の耳もとに囁いた。
「密談の録音データが出回っています。内藤氏は衆院選で労組系の票を維新の足立氏にまわす。その代わりに、市長選では維新の票をもらえないかと取引を打診している内容なんです。そのキャリアから、連合大阪の重鎮でもある内藤氏ですが、まさかの足立氏と取引も、『あり得ないことではない』との声しきりです」

足立氏はこれまで、国会の内外で徹底的に旧民主党系の議員など気に入らない相手を口ぎたくなく罵り、攻撃してきた。懲罰動議を出されたのも、一度や二度ではない。その旧民主党系の選挙母体である労組が維新の、それも足立氏の支援を行うとは考えにくい。しかし、「取引」「密談」が事実なら、足立氏、内藤氏ともに所属組織への裏切りとなる。

維新と労組が手を組むような事態が起きるほど、池田市が混乱しているということなのかもしれないが、原因を作ったのは「サウナ市長」。辞職に伴う市長選挙にかかる費用は、数千万円とも言われている。

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