鹿児島市教委、いじめ報告文書に虚偽|「担任に相談」でっち上げ

転校や学区変更を余儀なくされた悪質な“いじめ”を隠蔽するため、「いじめは解消」したとする虚偽の記録を残していた鹿児島市教育委員会が、実態調査のため新たに設置された「鹿児島市いじめ問題等調査委員会」や市議会に、事実とは異なる内容の経過報告書を提出していることが分かった。

報告書では、市立伊敷中学で起きたいじめの被害生徒や保護者の訴えから逃げ回っていた担任教師が「相談」を受け「学級への全体指導」を行ったことになっているが、当時そうした事実は一切なかった。担任教師の立場を守るため、学校や市教委がでっち上げた話だとみられる。

■市教委文書「担任に相談」は真っ赤な嘘

下は被害生徒の保護者が、市教委に個人情報開示請求を行って入手した「市立中学校いじめ事案に関する主な経過等」と題する報告書。市教委事務局が内部の会議や「鹿児島市いじめ問題等調査委員会」への提出用に作成した文書だ。(*黒塗りは市教委。赤い囲みと数字はハンター編集部)

加害生徒の保護者は、担任にいじめについて相談した。その際、加害生徒への個別指導を行わないよう要望した』。『担任は、学級への全体指導を行った。(指導状況を被害生徒の保護者へ報告した)
――この記述は、真っ赤な嘘である。被害生徒の保護者は、いじめが発覚してからの詳細な記録を残しており、いつ、何があったかは正確に分かる。担任の女性教師と保護者が接触したのは10月。最後に話をしたのは、同月14日だった。いじめが表面化してから保護者と教師は没交渉。女性教師は保護者と会おうともせず、電話にも出なかったというから呆れるしかない。

校長は保護者に電話をした。保護者からは、教師からの声掛けがプレッシャーとなっているとのことであった
――校長からの電話は事実だが、保護者側が「教師からの声掛けがプレッシャーとなっている」などと話したことは、一切ないという。いじめを止めてほしいと訴えている保護者が、指導にブレーキをかけるようなマネをするはずがない。この記述は、「指導が甘かった」「指導力不足」との批判をかわすため、学校や市教委が真相をねじ曲げた証拠だ。

問題の文書は市教委内部の会議用に作成されたものだが、市議会に提出された資料にも、同様の記述があることが分かっている。下の画像は、今月6日に開かれた鹿児島市議会市民文教委員会で市議会議員らに配られた文書。前掲の「市立中学校いじめ事案に関する主な経過等」とほほ同じ内容で、令和元年11月12日に被害生徒の保護者が「担任」に相談し、担任は「学級への全体指導を行った」とされている。重ねて述べるが、担任は10月以来逃げ回っており、この日の出来事自体がまったくの作り話。平たく言えば、市教委は市議会にも虚偽の報告を行ったということになる。

そもそも、「令和元年11月12日」に、いじめの相談があったとする記述は、伊敷中が市教委に提出した「いじめの実態調査」の内容と符合しない。下は被害生徒の保護者が市教委への個人情報開示請求で入手した実態調査だが、伊敷中として当該いじめを「認知」した日は11月15日。保護者が残した記録とも合致しており、この日に生徒指導主任にいじめの相談をしたことが分かっている。12日には、何の動きもなかったのである。

■教育界からも厳しい批判

事情を知った鹿児島県の教育関係者の間からは、厳しい批判の声が上がっている。

「この期に及んでまだ嘘を重ねるのか。市教委が第一に考えているのは、子供たちではなく自分たちの保身。いじめ未解決をなかったことにするか、あったとしても軽い話だったとして片付けるつもりだろう」(県立高校の教員)

「お粗末過ぎて話にならない。要するに、一部の教員や校長、教育委員会で出世するような連中が、責任逃れに事を矮小化しようとしているだけ。そのために、公文書を隠蔽したり、捨てたり、でっち上げをやったりと、犯罪行為に等しいことを続けている。こんな人たちに、子供や大勢の教員を指導する資格はない」(県内の小学校の教員)

「鹿児島市教委は腐りきっている。次々に「重大事態」の認定や再調査を行っていることで、いじめの隠蔽が行われてきたことは明らか。市の教育長、担当課長、元校長、担任――全員責任をとるべきだろう。子供に寄り添うことのできない人間に、教育を語る資格などないからだ。膿を出すしかないというのに、姑息なでっち上げや真相隠しを続けているのだから、タチが悪い。下鶴市長や市議会は、厳しい姿勢で臨むべきだ」(教員OB)

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