相次ぐ大学への爆破予告|卑劣な犯行いつまで

「大学の主要構造物を爆破する」――今年6月下旬から、全国の大学に対して、こうした爆破や放火の犯行予告が続いている。大学や市役所に犯行予告のメールが届いたり、ネット掲示板に書き込みがされるなど、最初の発生からほぼ連日にわたり被害が報告される状況だ。

これまでのところ、実際の爆破や放火は起きていないが、大学側は、予告された日時前後を入構禁止にするしかなく、新型コロナウイルスの感染予防に追われる中、授業や学務への影響は大きい。15日午前には京都市の浄土宗総本山・知恩院にも爆破予告のメールが届き、被害が教育機関以外にも広がっている。

■国公立中心23大学1寺院に犯行予告

6月下旬以降、少なくとも23の大学と1寺院に、同様の爆破予告が届いていることが分かっている。下に現在までの状況をまとめた。

最初に爆破予告が届いたとされるのは6月26日。堺市に「7月1日正午に府立大と市立大の10ヵ所ずつを爆破する。キャンパスの1ヵ所でサリンを積んだトラックを横転させる」という犯行予告が届いた。府立大とは「大阪府立大」、市立大戸は「大阪市立大」のことで、両校が統合して新設される「大阪公立大学」の英語表記が“UNIVERSITY OF OSAKA”になることへの報復だと記されていた。国立である「大阪大学」の“Osaka University と似ていることが気に食わないという、ただそれだけの理由だ。

その後、国立大と公立大の英語表記が似通っていることへの不満を記した犯行予告が全国に広がっている。

■福岡の私大や寺院も被害に

被害は私立大学にも及んでおり、7月9日には九州一の学生数を誇る「福岡大学」に、インターネットの掲示板を通じて「大学の主要建造物4か所を7月16日(木)16時に爆破し、その後キャンパス最寄り駅のどこか1か所付近で人混みに向かってホスゲンを散布する」などの予告があった。

福大は10日から警察の協力のもと警備強化を図るとともに、当日の16日を終日キャンパス内への立ち入りを禁止することを発表。同学の附属高校も16日13時以降を立ち入りを禁止とし、生徒・教職員を帰宅させたという。予告時刻には何事も起こらず、キャンパスの最寄駅である福岡市地下鉄七隈線「福大前駅」でも異常はみられなかった。

犯行予告の被害は、なぜか寺院にも及んでいる。罰(ばち)当たりなことに、京都市の浄土宗総本山・知恩院には「18日正午に主要建造物を爆破する」との予告メールが――。知恩院は終日閉門にして警察が調査したが何事もなかったため、翌日から参拝が可能となっている。

■大学生から怒りの声

新型コロナウイルスの感染拡大を受けてほとんどの大学は遠隔授業を行っており、学生は学びの場を奪われている状態だ。ただでさえ大学構内に入る機会が少なくなっているところに、今度は爆破予告で入構禁止。就職活動中のある男子大学生は、怒りを露わにこう話す。
「英語表記がどうのこうのと、訳の分からない理由で爆破予告なんて、とんでもない話です。新型コロナでバイトもできず、大学にも行けない状況なのに、冗談じゃない。早く犯人を捕まえてもらって、二度と社会に出れないようにしてもらいたいですね。でなきゃ、安心できない」

別の女子大生は、恐怖を口にする。
「いまのところ、実際に爆発が起きたというニュースはないですが、自分の通う大学にも犯行予告がきたので、不安です。もし本当に爆破されたらどうなるのか――。考えてだけで足がすくみます。犯人が捕まるまで、安心できないですよね。お願いだから、こんなマネはやめてもらいたい。面白がってやっている人がいるとすれば、最低。一人でゲームでもやっててほしい」

言うまでもなく、爆破や放火を予告するのは犯罪。捜査当局は、メールの内容から同一犯や模倣犯の可能性を視野に入れ、威力業務妨害の疑いで捜査している。

(東城洋平)

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