約49,000の人口を抱え、ソフトバンクホークスのファーム施設があることでも知られる福岡県筑後市の市議会議長が、20年以上も違法な政治活動を続けていた。選挙管理委員会も驚く前代未聞の事態だが、無届け後援会は違法ではあっても、存在自体に罰則があるわけではない。
しかし、活動実態があれば、どうしても必要となるのが軍資金。実は、一連の記事で報じてきた「原口ひでき後援会」の“リーフレット”(2019年版)や“選挙運動費用収支報告書”の記載及び領収書の存在が、重い罰則につながる可能性がある。
■「政治団体設立届」とは
後援会活動を行っている政治家は、政治資金規正法(第6条第1項)に従って所定の内容を記入した「設立届」を、都道府県選選挙管理委員会か総務省に提出するのが普通だ。
下は福岡県選管の届出用紙で、団体の名称、事務所の所在地、活動区域、代表者名、会計責任者及び会計責任者の職務代行者などについて詳しく記入することが義務付けられている。届出に際しては、これとは別に団体の目的などを記した「規約」が必要となる。
昨日の配信記事で指摘した通り、「原口ひでき後援会」は福岡県選管に設立届を提出しておらず、政治資金規正法上は存在してない団体である。
その無届け後援会は、原口氏が市議選に初出馬した1999年から1度も設立届を提出していないにもかかわらず、「後援会討議資料」として、ほぼ4年ごとに下のようなリーフレットを作成し活動に利用してきた。(*下は2019年版)
無届け後援会がただちに刑事罰を受けるというわけではないが、ザル法と批判される政治資金規正法も、見逃すことのできない行為には厳しい罰を用意している。
■「5年以下の禁固又は100万円以下の罰金」
これまで報じてきた通り、原口議長が6期目の当選を果たした一昨年の市議選で同氏陣営が筑後市選管に提出した「選挙運動費用収支報告書」には、リーフレットの作成費77,760円が立候補準備の支出として記載されていた。
この記載にある支出目的が実際には前掲写真のリーフレットの印刷費であったことや、印刷業者の領収書の宛名が「原口ひでき後援会」だったことも分かっている。(*下が領収書)
従って、リーフレットの印刷費「77,760円」は「原口ひでき後援会」の支出でなければならず、当然その分の収入が同団体にあった形になる。つまり、原口議長の後援会は、政治資金規正法が定めた政治団体の届出をせぬまま、勝手に後援会活動を行ったあげく、収入を得、支出を行ったということだ。
こうしたケースについて、政治資金規正法は、まず第8条「届出前の寄附又は支出の禁止」で次のように規定する。
政治団体は、第6条第1項の規定による届出がされた後でなければ、政治活動(選挙運動を含む。)のために、いかなる名義をもってするを問わず、寄附を受け、又は支出をすることができない。
第六条第1項の規定とは、前出『政治団体を組織した場合、7日以内に所定の内容を届出用紙に記載し、選管や総務省に提出する』よう定めた条文だ。次いで同法の第6章“罰則”では、その一番目である第23条にこう規定している。
政治団体が第8条の規定に違反して寄附を受け又は支出をしたときは、当該政治団体の役職員又は構成員として当該違反行為をした者は、5年以下の禁固又は百万円以下の罰金に処する。
原口議長の場合、政治団体を届け出てさえいれば、選挙運動費用収支報告書にある「リーフレット」にかかる支出を抹消し、原口ひでき後援会の政治資金収支報告に移し替えるという手法で表面上の違法行為をなくすことが可能だった。しかし、後援会は無届け。政治資金規正法が禁じる無届け団体の収入・支出が現実となった以上、ほとんどの同法違反行為がそうなる「修正して終わり」では済まなくなっている。
では、無届け後援会の「支出」は、リーフレットの印刷費だけだったのか――?取材を進めてみると、市議選を前にした原口議長陣営による、法律無視の驚くべき活動実態が浮かび上がってくる。
(つづく)