昨年12月16日の夜から17日にかけて、福岡県の政界関係者や報道機関に衝撃が走った。「入院中の小川知事が明日退院し、議会終了後に辞任を表明する」というのだ。大臣室にいて一報を受けた武田良太総務相が、即座に知事周辺に確認の電話を入れ、事実確認を行ったほどだった。知事は県議会開会中の同月11日に、咳が出るなどの体調不良を訴えて入院。1週間とされた入院期間の終了を前に、突然流れた出所不明の「噂」だった。
結局、誰も確実な情報を得られず、県の幹部でさえ「状況が分からない」と首をひねる状況。その後、「知事が18日の県議会最終日、代表者会議に出向き、退院の報告と説明を行う」ということで落ち着いた。
代表者会議で知事は、「肺炎の疑いがあって入院したが、原因菌は見つからなかった。元気になったので退院した」などと発言。公務に復帰して、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて再発出された緊急事態宣言への対応にあたっていた。
知事は2017年に幹細胞がんを手術しており、再発が心配されていたのは事実。水面下で健康不安説が流れる中、今月21日に再び県政界が騒然となる。
20日夜にせきや息苦しさを訴えた知事は、福岡市内にある九州大学病院に入院。翌日、不正確な情報が広まり大騒ぎになったことを受けて、知事が閉塞性肺疾患の疑いで検査入院したことを県が公表する。
短期間に2度目の入院、さらに公表された内容以外に詳しい病状などが伝わってこないことから、再び知事の進退に関する「噂」が先行する事態に――。辞任するだの、県内の首長や大学教授などを「後継」に見立てた無責任な話などが、あちこちで囁かれるようになった。
ご苦労なことだが、どれも与太話。なにせ、知事本人の「肉声」を聞いた政治家がいないのだから、後継もなにもあったものではない。じつは、一昨年の県知事選で小川氏の勝利に貢献した武田総務相や山崎拓元自民党副総裁でさえ知事と直接話しておらず、正確な健康状態も退院待ちというのが現状なのだ。ただ、小川知事は退院して職務復帰する考えであることを周辺に伝えており、「辞任」はありそうにない。
真相も知らずに騒ぎ立てる前に、知事選で130万人もの県民が一票を託した小川知事の回復を祈るのが先だろう。