【速報】ヤジ排除「嫌疑不十分」|札幌地裁がまた付審判請求棄却

一昨年7月に北海道・札幌で起きた首相演説ヤジ排除事件で、排除の被害当事者が現場の警察官らを被告とする刑事裁判を求めていた「付審判請求」を、地元裁判所が棄却したことがわかった。同事件にからむ棄却決定は昨年11月に続いて2度目で、関係者らは「警察・検察の主張となんら変わらない」と、改めて裁判所の判断を強く批判している。

■特別公務員暴行陵虐などで警察官らの裁判を求めていたのは、安倍晋三前首相に「増税反対」などと叫んで排除された札幌市の桃井希生さん(25)。排除事件後の昨年2月、北海道警察を訴える国家賠償請求訴訟の2人目の原告となり、併せて同年7月に札幌地方裁判所へ付審判を申し立てていた。

■審理にあたっていた札幌地裁(石田寿一裁判長)が請求棄却の決定に至ったのは、本年3月25日。同地裁は、当時の桃井さんが「興奮した様子」だったことや、周囲に「迷惑そうな顔をする者」がいたことなどを認定、警察官らが実力で桃井さんを排除した行為には「合理性があった」と判断した。「安倍やめろ」の一声で排除された大杉雅栄さん(33)への排除行為と同様、警察官職務執行法に基づく措置だったと認めた形で、桃井さんを逮捕監禁した疑いについては「少なくとも嫌疑不十分というべき」と結論づけた。

■札幌地裁は、当日の出来事を警察官5人の供述により確認したとしている。一方で当事者の桃井さんからはまったく事情を聴いておらず、国賠訴訟の代理人らは「こちらの言い分に一切耳を傾けず、警察の主張を丸呑みした決定だ」と厳しく批判する。昨年3月に同様の請求を申し立て、同11月に棄却決定を受けた大杉さんの事件と合わせ、裁判所への抗告(異議申し立て)を検討中という。

ヤジ排除事件後、被害当事者らはさまざまな手段で警察の行為の不当性を訴えてきた。これまでの経緯は、以下の通り。
 
2019年12月3日 大杉雅栄さんが警察官らを刑事告訴、道警を相手取る国賠訴訟を提起
2020年2月25日 札幌地検が大杉さん告訴事件で不起訴処分を決定
2月27日 桃井希生さんが国賠訴訟に合流
3月5日 大杉さんが札幌地裁へ付審判請求
4月3日 大杉さんが札幌検察審査会へ審査を申し立て
4月16日 桃井さんが警察官らを刑事告訴
6月26日 札幌地検が桃井さん告訴事件で不起訴処分を決定
7月3日 桃井さんが札幌検審へ審査を申し立て、札幌地裁へ付審判請求
10月21日 札幌検審が大杉さん申立事件で不起訴相当を議決
11月27日 札幌地裁が大杉さんの付審判請求を棄却
2021年3月3日 札幌検審が桃井さん申立事件で不起訴相当を議決
3月25日 札幌地裁が桃井さんの付審判請求を棄却

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。
北方ジャーナル→こちらから
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