恐怖の学び舎|告発メールが暴く「江差看護学院」教員パワハラの実態-上-

人の命を救うという崇高な志をもって看護師の道を目指した若者たちが、悪質なパワハラという犯罪行為によって痛めつけられていた。パワハラを行っているのは、北海道江差市にある看護学校に勤務する複数の女性教員。数多くの生徒が長期間にわたって被害を受け、休学や留年、さらには退学へと追い込まれている。数年前には、自ら命を絶った生徒もいたとされ、周囲は教員らのパワハラが原因だったとみている。

「恐怖の看護学校」で何か起きているのか――。実態解明への第一歩として、北海道庁に関連文書の情報公開を求めたところ、あろうことか調査対象である看護学校側に請求内容や記者の氏名、連絡先を教えるという守秘義務違反が判明。道庁の異常な対応について報じたところ、当該校の卒業生や生徒の父兄などから、次々に告発メールが送られてくる状況となった。関係者が訴えるパワハラの実態を、告発文の中から抜粋して報じていく。

■「助けて」の声受けて

パワハラが常態化している「北海道立江差高等看護学院」の前身は、1958年(昭和33年)に開設された「道立江差病院附属准看護婦養成所」。その後、「道立江差准看護学院」を経て1998年(平成10年)に現在の名称に。修行年数は3年で、定員は1学年40名の計120名となっている。

地域医療を支える貴重な人材を育てるはずの同校で、留年や休学、さらには退学にまで追い込まれる生徒が続出するという信じられない事態――。事情を知るきっかけとなったのは、ハンターに送られてきた1件のメールだった。記されていたのは、保護者の悲痛な叫び。パワハラの具体例を挙げ、多くの生徒が苦しんできた状況を綴った上で、「助けていただけないでしょうか?」とのSOSだった。

さっそく同庁に情報公開請求を行ったが、その顛末については既報の通り。道庁職員による守秘義務違反を報じたとたん、次々と学院の実態を記した告発メールが送られてくるようになった。

いずれの告発メールにも発信者の携帯番号が明記されいたため、すべての情報提供者と連絡をとった上で、一部を抜粋して報じることを決めた。以下、「被害」の実態である。
(*原文の記述は最大限生かし、個人が特定される可能性のある部分を削除。分かりやすい表現に変えた箇所もある)

【女性保護者・Aさん】
北海道立江差看護学校院教員のパワハラと北海道庁医務薬務課職員の事件隠蔽について告発します。同校では、複数の教師によるパワハラで多数の生徒が退学、留年させられています。道庁に相談しても教師の元部下だった道庁の職員が隠蔽します。二年前に男子生徒が自殺し亡くなっていますが、学校は個人の問題、学生間のトラブルとして一切を否定しています。

今でもパワハラは続いており、実習先の病院からも教員の態度に注意の電話が入るほどです。学生や元学生、辞めた元教師と職員などの証言はとれます。権限はすべて副学院長にありパワハラの事実はもみ消されようとされています。パワハラの副学院長の出張費にも疑問があります。看護師を目指した人たちの気持ちを無駄にしないためにも、助けていただけないでしょうか?

【卒業した女性・Bさん】
3年生の精神看護学実習の時にメンバーの1人がある出来事で職員に怒られたのをきっかけに、そのメンバーに対しての扱いがひどくなりました。学内実習になってからは1人だけ別室で実習を受けさせられ、指導の際も圧迫感のある指導だったそうです。また、カンファレンスの際にはその子だけに威圧的な質問を行うなど、明らかに態度が違いました。

2人の生徒が知人の家でお酒を飲んでいた時の話ですが、1人が急性アルコール中毒になってしまい、救急車をよんで病院に運ばれました。その連絡をもう1人の子が行い、救急車に一緒に乗り、ついて行ったそうです。それで、門限に遅刻してしまったのですが、その2人とも一定期間の退寮処分となりました。お酒を飲んでいた子が退寮になるのはわかるのですが、看病をした子がなぜ退寮になるのか疑問でした。その点について、ある人が寮会議の際に職員に質問したところ、「そんなのどうでもいい。門限を破った方が悪い」と言われたのです。看護学生の一員として、倒れている子を見捨てて自分だけ寮に帰れというのはどうかと思いました。

先生方は自分が機嫌の悪い時だと、生徒に対しての扱いもひどくなります。実習の際には、「あの先生は絶対1人は落とすよ」「指導をお願いしたら忙しいって逃げられるよ」などと恐ろしい噂でいっぱいでした。看護師になるためにせっかく看護学校に通ったのに、先生達のせいでとても居心地が悪く、実習では威圧的な先生に怯えてばかりいました。ある時、生徒が自殺したのですが、自殺する前日に職員室でひどく怒られていたそうです。

こうした理不尽な教員たちの仕打ちによって痛めつけられた被害者は生徒だけではなかったらしく、新しい職員が入るたび、1年もしないうちに次々と辞めていく状況が続いてきたのだという。

地元誌『北方ジャーナル』の取材を兼ねて江差高等看護学院を訪ね、事実確認を求めたジャーナリスト・小笠原淳氏と副学院長のやり取りを報じた直後からは、さらに生々しい被害状況を訴えるメールが増える。

(つづく)

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