新たな証拠|筑後市議会議長が違法な政治活動(4)

原口英喜筑後市議会議長が政治資金規正法で定められた政治団体の届出をせずに違法な政治活動を行っていた問題を巡り、周辺取材で得た証言から、2019年の筑後市議会議員選挙の際に同氏の非合法組織「原口ひでき後援会」が、市内に設置されたプレハブの事務所を拠点に支持の拡大を図っていたことが分かった。

原口後援会の活動を裏付ける証拠となった「リーフレット」の印刷費同様、事務所費も選挙運動費用にカウントされているが、告示までの使用実態は「後援会事務所」。政治資金規正法は、無届け団体が収寄附を受けたり支出を行ったりした場合について「5年以下の禁固又は100万円以下の罰金」と重い罰則を設けており、原口氏側の違法行為が、より鮮明になった格好だ。

■「事務所で後援会活動」

原口議長が2019年の市議選に際しプレハブ造りの事務所を設置したのは、筑後市蔵数の一角にあった空き地。議長が筑後市選挙管理委員会に提出した選挙運動費用収支報告書には、「事務所借上」として550,000円が計上されている。

議長周辺の話によれば、4月14日の告示以後に「選挙事務所」として利用されたプレハブの建物は、告示日以前、問題のリーフレットなどを活用する形で「原口ひでき後援会」の活動拠点となっていた。

選挙の告示または公示までは「選挙運動」はできない。可能なのは後援会や政治家個人の「政治活動」だけだ。当然、設けられた事務所は後援会や政党支部が使用するため、事務所の借り上げ契約などは政治団体や政党支部が行い、選挙期間中の事務所費を後援会や政党支部から無償で借り受けた形にするのが一般的なやり方となる。もちろん、有償もOK。政治家が自身の支援団体に、選挙期間中の家賃を支払うケースもある。

しかし、原口議長の場合は、「原口ひでき後援会」の活動を行っていた期間の事務所費まで選挙運動費用として処理しており、活動実態と経理処理の整合性はない。

公職選挙法上の虚偽記載が疑われる状況だが、それ以上に深刻なのが、ここでも「無届け後援会」の支出が発生し、それに見合う収入があったという点。これまで報じてきた通り、政治資金規正法は、無届けの後援会などが寄附を受けたり、支出を行ったりした場合について厳しい罰則を設けており、違反すれば「5年以下の禁固又は100万円以下の罰金」。次々に証拠が出てくる状況となっており、市民からも批判の声が寄せられ始めた。

筑後市在住の40代主婦は、次のように話す。
「選挙や政治家の活動の方法は、私たち素人には分かりません。ただ、様々なニュースに接する中で、政治家の後援会が、収支報告書というものを選挙管理委員会に提出していることくらいは知っています。政治とカネの事件がこれだけ続いている以上、普通の社会人ならある程度の知識は身につくものでしょう。それが、何回も選挙をやって議長という職にある人が、無届けで後援会を名乗って有権者を欺いていたというのだから、呆れてしまいました。議長どころか、議員としての資格がない。筑後市の恥です」

かつて原口議長の関係者から頼まれて、「リーフレット」にあった後援会名簿に記入したという50代男性は、憤りを隠そうともしない。
「法律的なことは分からないが、原口さんの後援会が無届けだったとは驚きでした。ご本人は何と釈明しているのか、聞きたいですね。ルール違反の後援会で支援を呼びかけたというのは、私ら有権者を騙したも同然でしょう。騙して個人情報を集めたわけで、罪は重いですよ。どう責任をとるのでしょうか」

確かに、筑後市の有権者からすれば騙された形。非合法の後援会が配布した後援会入会申し込み用紙に、住所、氏名、電話番号といった“個人情報”を記入させられたのだから、怒るのが当たりまえだ。念のため、取材の最後に原口議長が発した“言い訳”を紹介しておきたい。

福岡県選挙管理委員会で「原口ひでき後援会」が無届けであること確認した記者が、違法性について説明した際、議長は「県には届けていません」と県選管への無届けを認めた上で、こう述べている。
県と市は別だと考えていた」――“無知によるミス”を主張したかったらしいが、当選6回の政治家が言うことではあるまい。実は、議長サイドが無届け後援会であることを承知していたと思われる、別の証拠もある。

(つづく)

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