内閣改造・党役員人事の焦点は茂木敏充幹事長の去就

解散総選挙を秋以降に延期したものの、支持率低下が止まらない岸田文雄政権。首相が次に直面するのは内閣改造と党役員人事である。注視されるのは、茂木敏充幹事長の扱いだ。

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解散総選挙を念頭に選挙区調整を重ねていた公明党の石井啓一幹事長から「東京における自公の信頼関係は地に落ちた」と激しく非難を受け、東京都内での協力解消を一方的に発表された自民党。このまま、公明党が態度を変えないようなら、自民党は東京都内の小選挙区で壊滅的な打撃を受けることになりそうだ。東京都内の小選挙区で自民党から出馬予定の人物が、こうぼやく。
「小選挙区どころか、比例復活もダメな候補がかなり増える。東京都内限定とされるが、公明党の支持母体である創価学会には、都内に通勤する千葉や埼玉の信者がたくさんいる。この決定はすくなくとも首都圏全体に響く。その戦犯は茂木幹事長だ」

茂木氏が幹事長として党運営を握るようになり、公明党との関係がぎくしゃくするようになった。ある官邸関係者も「公明党から言われてきたのは、『話にならない』『なんであんな高飛車なんだ』などという愚痴ばかり」と関係悪化を認める。

ここに来て公明党からの「最後通牒」(官邸の関係者)。岸田首相が次の内閣改造と党人事で茂木氏をどう扱うのか、自公の政治家が固唾を呑んで見守る状況となっている。

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自民党総裁選は来年9月。残す任期は1年ほどだ。茂木幹事長は岸田首相より年長とあって、“次”を目指す上でも重要ポストは譲れない。「来年の総裁選は必ず出る。というか最初で最後のチャンスと茂木さん自身がそう決意している。内閣改造、党人事では総裁選を目指した動きになる」(茂木派の国会議員)

長年総裁候補と言われ国民的人気も高かった石破茂元幹事長は、安倍晋三元首相に対抗すべく、あえて“無役”となって挑んだこともあったが勝負にならなかった。それもあって、茂木氏に“無役”という選択肢はないという。

「茂木氏はプライドのかたまりのような人でもあり、無役になることは絶対ない。一方で公明党との交渉失敗で幹事長交代となるのも仕方ない。入閣となれば、すでに外相を経験しているのでその上といえば財務相くらいしかない。ただ、外相時代は新型コロナウイルスの感染でほとんど外遊できなかったので、茂木さん自身は『外相をもう一度』という思いもある。幹事長交代なら、外相で閣内にとどまるのではないか」(前出・茂木派の国会議員)

茂木氏を入閣させれれば、ライバルを閣内に封じ込める形で牽制できる。岸田首相にとっては好都合で、総裁選でも優位が保てる。そうなると次の幹事長を誰にするかだ。

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現在の自民党は、幹事長が茂木氏で政調会長が安倍派の萩生田光一氏。総務会長が有隣会(谷垣グループ)の遠藤利明氏、選対委員長が森山派を率いる森山裕氏、国対委員長が安倍派の高木毅氏と派閥均衡を配慮したものになっている。

次期幹事長にと前評判が高いのは、森山氏だ。ある自民党幹部はこう話す。
「公明党との関係でみると、菅義偉前首相や二階俊博元幹事長が非常に強い。幹事長には、非主流派と呼ばれるその2人とも良好な関係の森山氏選対委員長が適任ではないかという声が多い。会長人事で混迷を極める安倍派の萩生田さんが幹事長になれば、次期会長に大きく前進する。しかし、そうなると総裁選で岸田首相と激突しかねない。萩生田氏は幹事長ではなく、重要閣僚で処遇するのではないか」

茂木派には、加藤勝信厚労相や小渕優子組織運動本部長という有力候補もいる。同派から再度の幹事長起用となれば茂木氏自身も異論を口にしづらい。別の岸田派議員は、次のように見立てを語る。
「茂木さんが総裁選に出ても、加藤さんか小渕さんが幹事長になった場合は派閥が一致結束して彼を推すとは思えない。同派の参議院側と折り合いが悪い茂木氏にとっては頭が痛いところだろう。岸田総理は、そうやって茂木幹事長を揺さぶってくるはず。もし幹事長人事でもめた場合、鈴木俊一財務相というカードもある。キングメーカー・麻生太郎副総理の義弟なので、誰も口出しできない人事になる。また財務相という有力ポストが空くので、岸田首相はその人事を来年行われる総裁選用のカードにすることもできる」

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岸田首相に次ぐ総裁候補と目されながら、実は非常に厳しい状況に追い込まれている茂木氏。だが、セールスポイントもある。麻生副総裁との強固な関係だ。

「岸田総理がダメな場合、麻生さんが乗り換えるのは派閥の一員である河野太郎デジタル相ではなく、茂木幹事長だろう。ただ、麻生派がまとまっても、茂木派が岸田首相側から切り崩されるようでは勝ち目がない。ひょっとすると、茂木さんに派閥を割らせるのではないか。半分の25人ほど引き連れてくることができるなら十分に勝負できる。麻生さんは茂木幹事長を自派に引き入れての大麻生派構想まで考えているのではないか」(前出の自民党幹部)

派閥トップとしての茂木氏が「総理・総裁」に手が届くところまで行けるかかどうか、秋の人事に注目だ。

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