参議院大分補選に影落とす「総務省文書」

統一地方選に合わせて実施される衆議院議員と参議院議員の補欠選挙のうち、参議院大分選挙区が6日、告示された。立候補しているのは、自民党公認で飲食店経営の白坂亜紀氏と立憲民主党公認の吉田忠智前参院議員の二人。与野党対決の構図だ。

◇   ◇   ◇

4月9日に投開票された大分県知事選では、自民党と公明党が推す前大分市長の佐藤樹一郎氏が、野党系の前参議院議員の安達澄氏を下した。補選も知事選も大分県全体が選挙区になるので、自民党の白坂氏が優位かとみられていたが、「そう簡単な話ではない」と、ある自民党大分県議は顔をしかめてこう話す。
「知事選は信頼が厚い佐藤がしっかりと勝ち切った。補選はそう簡単にいかない。大分県の出身ではあるが、銀座の高級クラブを経営している白坂氏がどうして候補者になったのか、その背景を疑問視している人がかなりいる。補選に関してはシラケている」

安達氏が参議院議員を辞職したことが、このタイミングでの補選になった理由だ。当初は、2019年の参議院選挙で安達氏に敗れた礒崎陽輔氏が有力ではないかとされていた。前出の県議も「やる気満々だった」と打ち明ける。そんな時に炸裂した爆弾が、高市早苗経済安全保障担当相の「ねつ造」発言で揺れる、総務省の放送法4条に関する文書だった。

総務省文書は、2014年から2015年にかけて首相補佐官だった礒崎氏が同省に対し、「安倍晋三首相の意向」をちらつかせ、放送法4条の解釈変更を要求した過程が時系列でまとめられているもの。総務官僚出身の小西洋之立憲民主党参議院議員が入手して追及がはじまった。

問題の文書が作成された当時総務相だった高市氏は、「総務省からそのようなレクはなかった」「捏造」などと反論。問題の本質を外れて、高市氏の進退に注目が集まり国会は紛糾した。
「小西氏が国会質疑の前に記者会見まで開催して、追及がはじまった。矢面に立ったのは高市氏だったが、文書が作成された時期や内容から、ターゲットは礒崎氏ではないのかとみられている」(自民党の幹部)

礒崎氏は、東京大学から旧自治省に入省した総務省OBだ。放送法4条に規定された「政治的中立」は、一つの番組ではなく、放送局の番組全体をみて判断するという解釈だった。礒崎氏も総務省文書について「私が、総理補佐官在任中に、放送法で定める政治的公平性の解釈について、総務省と意見交換をしたのは事実です」と自身が投稿したツイッターに記している。

総務省文書では、礒崎氏が後輩にあたる総務省幹部に放送法4条の解釈変更を安倍氏や高市氏の名前を出して、強く要求。礒崎氏は2014年11月28日の総務省へのレクで、解釈について「(総務省は)逃げてはいけない」「いずれ国会質問したい」などと強く迫っていた。

その後も礒崎氏と総務省のやりとりが続き、2015年2月24日のレクでは「高度に政治的な話。官房長官に話すかどうかは俺が決める話。局長ごときが言う話ではない。総理が(官房長官に相談しろと)仰るなら勿論話をする。この件は俺と総理が2人で決める話」と安倍氏の「名代」と言わんばかりに総務省を威嚇する。

さらには、「俺の顔をつぶすようなことになれば、ただじゃすまないぞ。首が飛ぶぞ。もうここに来ることができないからな」、「ちゃんとやってくれれば、役所の悪いようにはしない」、「今日は怒らない」など、繰り返される恫喝、パワハラ。別の日のレクの記録には、「補佐官は当初は激高していた」という文言があった。

山田真紀子総理秘書官は、総務省との打ち合わせで、礒崎氏について「変なヤクザに絡まれたって話ではないか」とパワハラぶりを表現。「政府がこんなことやってどうするのか。視野の狭い話」、「どこのメディアも萎縮するだろう。言論弾圧ではないか」とまっとうな意見を述べていたことが分かる。

それでも礒崎氏は、安倍氏の「威光」を背景にして「けしからん番組は取り締まるスタンスを示す必要がある」と強面ぶりを存分に発揮していた。

同氏のツイッターへの投稿を見ると「公務員の懲罰の対象となる可能性がある行為です」、「余り政治的に用いるべきことではありません」と総務省文書を小西氏に渡した官僚が、あたかも「罪」になるかのような書き込みをしている。しかし、どう見ても礒崎氏の行為の方が大きな問題だろう。

ある総務省幹部が次のように語る。
「今回の総務省文書の話はとっくに決着したものだ。安倍元首相はお亡くなりなって、礒崎は落選してバッジを外している。なぜこの時期の総務省から文書が持ち出されたのかといえば、礒崎が参院補選に出馬して国政に復帰することが確実視されるようになっていたからだと思う。文書の内容をよく読めば、高市さんも無茶な話をしているが、対応は冷静。かっかしているのは礒崎一人だ。恫喝、パワハラの礒崎の行状を暴露して、補選出馬を食い止めようとしたとみられてもおかしくない。もともと礒崎は、古巣の総務省に対し、とにかく最初からでかい声で怒鳴ったり、威嚇したりするひどい人だった。高市さんは小西議員と昔から肌が合わないというか、生理的に嫌いなんじゃないか。その小西議員から追及されたことで、ブチ切れて『ねつ造』だの『辞任』などと口走ってしまったんだろう。質問者が小西でなければ、こんな騒動にはなっていない」

結果的に礒崎氏の出馬は消えたので、この見立て通りにとなったということだ。

「礒崎さんは、補選に意欲満々だった。しかし総務省文書の発覚でイメージが悪くなり、大分県連も公募するしかなかった。公募は論文や面接などで候補者を決める。総務省文書の件でもわかるように、傲慢でプライド高い礒崎氏が面接を受ければ、たちどころにアウト。自民党にとっても、安倍氏の力をバックに虎の威を借りる狐のような礒崎氏が永田町から消えるのはいいことだ」(自民党の大臣経験者)

参院補選は4月23日に投開票が行われる。

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