【2023徳島知事選】現職参戦で保守4陣営の乱戦に

今年4月に行われる徳島県知事選挙が混迷の度を増している。

2月4日に、現職の飯泉嘉門知事が6選目を目指して出馬することを表明。後藤田正純元衆議院議員、三木亨元参議院議員、前回の知事選で後藤田氏の支援を受け立候補した岸本泰治元県議ら4人の有力者が勢ぞろいした格好だ。

■6期目めざし飯泉知事が事務所開き

去就を注目されていた飯泉知事は後藤田氏が衆議院徳島2区から離れたため、国政狙いかとみられていたが、自民党は次期衆院選で中西祐介参議院議員を転出させる予定だという。背景にあるのは、徳島県選挙区と高知県選挙区の「合区」。先行きが不透明となっていることで、こうした動きになった模様だ。

「飯泉知事は、2020年の衆議院選挙の際、後藤田氏に対抗して出馬する準備をしていた。今度こそ、という思いはあったろう。だが、中西氏の衆院への鞍替えはどうやら既定路線。飯泉知事が政治家としてやっていくには、知事選に出るしか道がなくなった」と、ある徳島県幹部が舞台裏をあかす。

飯泉知事は2月13日に事務所開き。なぜか「開設報告会」という意味不明な案内だったという。出席した徳島県内の建設業者が顔を曇らせこう語る。
「建設関係の会社には動員がかかっていました。私も頼まれて参加しました。さすがに現職知事の事務所開きとあって300人くらいは来ていたようです。けど、前回の選挙と比べると熱気はありません。さすがに6期は長すぎるだろうとの声が多いです。正直、人気がない」

自民党の徳島県議団は飯泉氏と政策協定を結んだことで、今後は県連が正式に「推薦」するのか否かに注目が集まるが、先の「開設報告会」に県議団から参加したのは22人中11人。県内首長の参加も6市町村にとどまった。後藤田、三木、岸本各氏はいずれももとは自民党で、保守分裂どころではない状況なのだ。

■なりふり構わぬ後藤田氏

そこに「先手」を打ったのが後藤田氏。女性市長として史上最年少当選を果たしたこと知られる徳島市の内藤佐和子市長のリコール署名を集めていたグループと手を結んだのだ。ある自民党県議が、こうした動きを次のように解説する。
「リコール署名を集めていたグループは勝手連と言っているが、裏で後藤田陣営とは話がついていると聞く。このグループの関係者が、4月の統一地方選で実質的には共産党から出馬するという。つまり、内藤市長やそれに近い飯泉知事が嫌いなので、後藤田についたということです。後藤田が共産党陣営に手を伸ばしたことには、さすがに驚いた」

直近のある情勢調査によれば、後藤田22、三木21.5、飯泉17、岸本6という現状。後藤田氏と三木氏が競り、飯泉知事と岸本氏が続く形となっている。

数々の女性スキャンダルで「徳島の恥」と言われてきた後藤田氏だが、意外な善戦。自民党の推薦は求めないと公言したことで、無党派層の支持が広がっている傾向もあるという。しかし、自民党の看板を掲げ小選挙区で当選してきた後藤田氏にとって、全県が対象の知事選は容易ではない。

「後藤田がプライドをかなぐり捨て共産党にまで頭を下げたというのは、それだけ必死ということ。ただ、自民党ではない彼が、徳島県全域で戦えるのかといえば、なかなか難しいでしょう。『国政なら後藤田を応援するが知事選は別』と言い残し、最有力とみられていた複数の後援者が離れてしまっているのも痛い」(前出・自民党県議)

■調整役不在

後藤田氏が代表を務める「自民党徳島県第一選挙区支部」が提出した2020年の政治資金収支報告書には、原井省三という人物が150万円の寄附を行っていたことがわかる。原井氏は地元ではトップクラスの林業会社を経営し、親族が現職の徳島県吉野川市長。まさに名士である。その原井氏は後藤田氏に見切りをつけたのか、三木氏の応援に回ることをすでに明かしている。

三木氏は自民党の徳島県連に「推薦願」を出しているが、県議団の一部が飯泉知事に流れているので、推薦は厳しい状況だ。三木氏は衆院への鞍替えが予想される中西氏と違い、参議院の「特定枠」で当選しており、それを捨てての知事選出馬である以上、自民党も表立って応援はできないというスタンスのようだ。

そんな三木氏の状況を見てとった中西氏が、衆議院転出へと動いたということだ。中西氏は麻生派の所属。ある麻生派の議員は、一連の動きを次のようによむ。
「徳島と高知が合区になったことでどちらかの県の候補に特定枠の処遇がなされていますが、それが今後も続くのかどうかわかりません。三木氏もそんな不安があったので、知事選へのチャレンジを決断したのだと思います。彼は二階派なので、二階先生のパワーがあるうちに、ということでしょう。中西氏については、次の参議院選挙で高知県側の候補者が選挙区に出るため、次の次の特定枠をもらえる保証がない。そこへ三木氏の知事選出馬で、ますます特定枠が危うくなった。それなら麻生会長が元気で影響力がある間に転出したほうがいいという決断でしょう」

自民党本部による「仲裁」の動きも止まったままで、ある大臣経験者もお手上げだという。
「後藤田は茂木派なので、茂木幹事長が手を打たねばならないが、相手が麻生、二階の超大物。飯泉知事もうるさ型とあって、何もできない、したくないというのが本音だろう。まったく先が読めない」(同大臣経験者)

 

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