北海道新聞で今世紀初のストライキが現実味を帯び始めている。労使間の春闘・夏期末手当交渉で、次年度のベースアップについて会社側のゼロ回答が続いているためだ。
組合は昨年の冬期末手当交渉で要求額を大幅に下回る金額を受け入れざるを得なかったが、その際に会社側から「来春のベアを前向きに検討する」との言葉を引き出していた。このため今回の交渉では一貫してベアゼロ回答を拒否、22日に予定されている次回団体交渉でもゼロ回答が変わらなかった場合「即日ストに入る」と社に通告している。
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道新労組は1月下旬、会社側に「ベア一律1,000円」「夏期末手当平均105万円」の要求を提出。事前の組合員投票では90%以上の賛成率でスト権を確立した。
対する会社側は2月8日の交渉で「ベアゼロ」「夏期末手当84万円」の回答を示し「これが精一杯の回答」と組合側に理解を求めたが、組合執行部はこれを「検討するまでもない」と断乎拒否。だが会社側は続く15日の交渉でも同じ回答を示し、物価高騰への配慮として「物価手当一律2万円」を加えた形で回答の受け入れを求めた。労組はこの回答も拒否し、次回回答日を22日に指定した上で「次回もゼロ回答ならば即日闘争態勢に入る」と通告した。
交渉の場では社員の離職率などが話題に上り、本年度の依願退社が22人に上ることが報告された(※ 現在の組合員数は1,000人弱)。5年前の17年度は離職11人、10年前の12年度は3人に留まっていたことから、組合側は本年度の離職状況を「激増」と評価してさらなる離職率増への危機感を示したが、会社側は同じ数字を「漸増」と表現、認識の落差を浮き彫りにした。
離職の原因を「社員の働きを正当に評価せず適正な処遇を行なわないこと」にあると指摘する組合に対し、会社側は「『仕事が合わない』などの理由が最も多い」と反論している。
道新関係者によれば、労組が通告通りストライキに入った場合、実力行使は1994年の春闘以来29年ぶりのこととなる。前回のストではおもに「改版拒否」が行なわれたが、道新では昨年「二版制」が廃止されたため、現在この闘争方法を採ることはできない。労組は目下、組合員らに「SNS更新拒否闘争」なる戦術を指示しており、公式ツイッターの更新停止などの形でストを決行することになるようだ。
22日の団体交渉を前に、社内では「今回は本当にやるんじゃないか」という声が囁かれており、スト入りが現実味を帯び始めているという。組合員の1人は「とはいえSNSストにどれぐらい意味があるのか」と首を傾げ、「うちのツイッターは『常にストなのか?』っていうぐらい拡散力がないので…」と自嘲ぎみに話している。
(小笠原淳)
【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |