「餃子の王将」社長射殺犯逮捕で注目される“調査報告書”と福岡の実業家

10月28日、「餃子の王将」を全国展開する「王将フードサービス」の大東隆行前社長が射殺された事件で、京都府警は特定危険指定暴力団・工藤会系「石田組」幹部の田中幸雄容疑者を逮捕した。

事件は2013年12月、早朝に出勤した大東さんが突然、拳銃で撃たれ4発が命中。命を失ったというもの。犯人につながる証拠がなく、未解決となっていた。8年10か月ぶりに、事件が大きく動いたことになる。

■指摘されていた不透明取引

田中容疑者は、大東さんを狙撃した実行役とみられている。しかし、逮捕されたのは田中容疑者ただ一人。通常、暴力団のヒットマンが絡む事件は、運転手や逃走支援、拳銃の調達などに複数の人間が動く。福岡県警が工藤会を摘発した銃撃事件でも、大半が複数の組関係者による組織的な犯行であったことが記憶に新しい。

田中容疑者は工藤会傘下「石田組」の本部長というポジションだ。京都とは無縁で、王将との関係はまったくうかがえない。ましてや、大東さんとの面識はゼロだ。捜査関係者は苦い表情でこう語る。
「全然知らない会社の社長を、田中容疑者が狙うということは誰かに依頼されたということ。工藤会の組織をあげての事件とみている。当然、指示したのは工藤会の上層部だとみられるが、田中容疑者以外に事件に関与した人間のことは、まだわかっていない」

◇   ◇   ◇

京都府警は、逮捕の記者会見で福岡県警と合同捜査本部を設置したことを発表。京都から500km以上離れた福岡との組み合わせというのは非常に珍しい。事件解決に多くの疑問が残っている証明でもあるのだが、それを解くカギは、2016年3月に王将が公表した第三者委員会の調査報告書にある。

そこには、《OFS(王将フードサービス)と反社会的勢力との関係の存在は確認されなかった》との結論が書かれている。何もないなら一件落着だが、報告書は『OFSとA氏の関係』という項目に多くのページがさかれている。

王将の創業者、加藤朝雄氏と深い関係にあったのは、福岡県でゴルフ場や不動産業を営む上杉昌也氏のことである。ひとことでいえば、王将の創業家一族と上杉氏が「ズブズブ」の関係にあったことが報告書には記されている。そこからは、上杉氏とその会社は、王将側から約260億円を出させて、170億円を返済していなかったことが読み取れる。

王将側と上杉氏のが関係を持つようになったきっかけはについて、《朝雄氏は昭和52年ころA氏と知り合い、昭和60年5月に開店した阪奈生駒店出店にあたりA氏の口利きで建築関係の許認可が早く下りた》ことだったと報告書は記す。以後、朝雄氏と上杉氏は関係を強めていく。

1989年、大阪市内の王将戎橋店から出火し死者が出たが、解決の交渉役を任されたのが上杉氏だったという。

《大阪高裁においてOFSが遺族側に対して慰謝料等約3,700 万円と 建物滅失による損害補償金等約1億1,700万円を支払うこと等を内容とする和解が成立することで解決した。この和解に際し別途 OFSは 建物所有者遺族らとの間における戎橋店の土地建物の買収交渉をA氏に依頼していた。A氏による買収交渉の結果、同土地建物の購入代金は9億円で合意に至ったがOFSはA氏側に買収工作資金として1億円を支払うこととし併せて合計10億円を土地建物の買取代金として会計処理した》(同報告書より)

それからも、王将の上杉氏側に対する不透明な供与が続く。報告書はこう続ける。
《OFSは上杉氏側から ハワイの高級住宅街にある邸宅の土地建物を18億2,900万円で購入した。その後、平成7年 88月にPFSの100%子会社である株式会社キングランド(以下「キングランド」)を設立しOFSは翌9月にキングランドへ同土地建物を売却した。平成15年7月、キングランドは 第三者に同土地建物を5億9,800万円で売却した》

王将は、ハワイの高級住宅街という同社の事業とはまったく相容れない不動産を上杉氏側から買い、最終的に13億円もの損失を出している。

また王将から上杉氏側への多額の貸付もあった。《平成10年4月から同年9月までの間、OFSはキングランドを通じて上杉氏側に対し計5回に亘り合計185億円を貸し付けた。同年9月までに95億4,000万円の返済を受けた結果、同月時点の貸付金残高は89億6,000万円となっていた》、《OFSは平成14年3月期に44億8,100万円の貸倒引当金を計上し平成17年9月、同時点での貸金残高40億8,800万円の全額を『債権放棄』した》――40億円を超す巨額の借金をチャラにしたのだから異様だ。ちなみに、餃子の王将の看板メニューの餃子は1人前税込み242円。不透明なカネのがいかに大きいかよくわかる。

また、上杉氏側への資金提供が国税局からの調査対象にもなっている。《平成10年9月30日、OFSは仕入先業者に対し仕入れに係る前渡金として10億円を振り込み、同社は同金員をOFSに直ちに返金した(同社はOFSからの要請に基づいて口座経由をさせたにすぎないものとして会計処理はしていない)。ところがOFSは前渡金を計上し続け、返金された10億円の行方が不分明となっている》、《平成14年2月OFSは国税局の税務調査時に上記事実の指摘を受けて事態を把握し、最終的には平成17年9月30日、9億9,000万円全額を交際費として所得加算し税務申告を行った》――10億円の使途を隠すような処理をしていたのだ。

ゴルフ場経営で知られる上杉氏だが、王将はそこの会員権も買っていた。《平成11年4月、OFSはゴルフ会員権10 口を2億7,100万円で購入した。平成18年7月、OFSは上杉氏側に同会員権を2,000万円で売却した》――10分の1以下の値段で売却するという異常さだ。

これ以外にも温泉病院跡地と建物、養鶏場、長崎県雲仙温泉の旅館など王将の事業とは関係ないものを、次々に破格の価格で買っては手放すことが続いていた。

そして、王将と上杉氏側の不動産などの売買やカネの貸付に関しては《取締役会決議がなく、その取得経緯や経済合理性は明らかでない》と、まさに「グレー」であることが記されている。

◇   ◇   ◇

京都府警は2016年に1度、上杉氏側に対して「殺人容疑」で家宅捜索を行っている。上杉氏は京都府警の捜査を受けたことを認め「なぜ、私が“人殺し”の汚名を着せられねばならないのか」と、週刊新潮2016年9月22日号で、関与を否定している。

「第三者委員会の報告書を見れば、大東さん射殺事件の背景に何があるのか推測は簡単だ。当然、上杉氏側も捜査の対象になる。田中容疑者の上を逮捕できるか、それができてこそ真相解明となる」(捜査関係者)

田中容疑者は、2008年に福岡市内で大手ゼネコン「大林組」の支店長らが乗っている車を銃撃。2018年に銃刀法違反の容疑で逮捕され服役中だった。まさに、ヒットマンという言葉があてはまる犯行。逮捕された田中容疑者は、事件に関してはほとんど口を開かなかったという。

「田中のけん銃の腕は抜群。捕まっても口を開かない。幹部の関与をうたわない、まさにヒットマンだ。王将事件でも黙秘だろう」(田中容疑者を知る工藤会関係者)

京都府警と福岡県警は、田中容疑者の壁を崩すことができるのかだろうか。

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