無法地帯・福岡県田川市の公有地売却めぐり「便宜供与」の疑い

政治活動用の看板に選挙管理委員会が発行した「証票」を添付するよう義務付けた公職選挙法の規定を無視して、選挙区内に違法な看板を多数設置していたことが分かった福岡県田川市の二場公人市長と今村寿人市議会議員。二人の親密な関係は、今村市議が理事を務める社会福祉法人が運営する複数の施設に、仲良く両人の看板が並んでいることからも明らかだ。

 今村市議は、市議会の中における「市長派」。議会の中で二場市長を批判する声が上がる度に相手方を攻撃しており、最近は、次々に不正を疑わせる事実が明らかとなっている同市の「一般廃棄物(ごみ)収集運搬業務委託」業者選定プロポーザルの過程を検証するため市議会が設置した調査特別委員会(百条委員会)で、疑惑発覚の発端となった記事を配信したハンターを、「姿も見えない」「公式の報道機関でもない」「社員が何人いるかも分からないようなところ」などと一方的に誹謗中傷していた。

議会人としての常識も、政治家としてのイロハも分からぬ人物がバッジをつけていることは、田川市民にとっての不幸と言わざるを得ないのだが、残念ながら、二場市長も今村氏と五十歩百歩。ルール無視を悪いことだと思っていないフシがある。

実は、そんな二人が関係する、公有地売却に絡む疑惑がある。

■公有地の売却先は市長派市議の会社

問題の土地は、田川市から今村市議が専務取締役を務めている「里ごころ有限会社」に売却されたもの。その場所には、今村氏の違法看板が設置されていたことが確認されている(今月20日現在)。
 「昭和団地南側所有地B区画」と呼称されていた約6,700㎡にのぼる企業誘致用のこの土地は、2017年(平成29年)3月まで田川市が保有していたもの。2016年1月に今村市議が専務取締役を務める「里ごころ有限会社」が、売却希望にあたる『貴市所有地ご紹介のお願い』(*下、参照)という文書を提出したことで話が進み、一連の手続きを経て翌年3月に本契約を結んでいた(契約金額:29,354,943円)。

■売却予定地に税金使って法面工事

売却方針を決裁したのは二場市長だが、実はそこから本契約までの間に、二場市政による今村氏側への「便宜供与」が疑われる「工事」が実施される。

公有地の売却には議会承認が必要となることから、まず仮契約を結ぶのが通例だ。田川市も平成28年8月23日に、里ごころ有限会社と『私有財産(土地)売買仮契約』を結んでいた(*下の画像が契約書)。

当時の市議会は、市長派が多数を占める状況で、よほどのことがない限り執行部提出議案が否決されることはなかったという。問題の土地の売却案も、同年9月23日に可決されている。この時点で土地の所有権が里ごころ有限会社に移ることは確実となっていたわけだが、同年12月になって、田川市がおかしなことを始める。

下の図面、青い斜線で示したのが売却された市有地、赤い矢印で示したピンク色の囲みの部分は売却されずに残った市有地である。 田川市は仮契約締結から3カ月半も経って、法面となっている上掲の図の市有地部分に、「雑草が多い」「維持管理に支障をきたしている」「隣接地所有者に迷惑をかけている」などという理由をつけて、法面の除草と防草シートを敷設する工事を業務委託することを起案、4日後には決裁する(契約金額:2,311,200円)。

問題は、起案時には確かに市有地だったが、既に売却が決まって「仮契約」まで済ませた法面部分に、同様の工事を行ったことだ。下は工事を業務委託する際に業者に示された部面の一部。売却予定の法面も、計画の対象になっていたことが分かる。

市有地売却を巡る動きをまとめると、次のようになる。

工事を計画した時点では市有地だったとはいえ、売買の仮契約に加えて議会での売却承認まで得た土地に、税金をかける必要などあるまい。除草や除草シート敷設が必要な法面なら、本契約が成立した後に、土地を購入した会社が自費でやるのが当然だろう。これは明らかな「便宜供与」。土地を売る相手が、二場市長派である“今村市議の会社”だったからこそ、できた話ではないのだろうか。

■今村議員絡み、市側は認識

市側は、問題の土地を欲しがっているのが今村市議の会社であることを十分承知していた。その証拠もある。下は、平成28年8月5日に開かれた「田川市私有財産処分審議会」の議事録。この会議のなかで当時の建築住宅課長が、次のように疑問を呈していた(*下の文書、赤い囲みとアンダーラインはハンター編集部)。

申請者を見ると今村議員のところのようだが」――つまり市側が、公有地の売却を願い出た者が“今村市議の会社”であることを認識していたということだ。その上での法面工事なら、「便宜供与」を疑われて当然だろう。

現在、こうして本契約前にバタバタと整備された土地にあるのは、「有限会社里ごころ」ではなく同社が事業を譲渡したという「社会福祉法人里ごころ」の施設。その法人のホームページで公表されている定款の役員欄(*下の画像参照。赤いアンダーラインはハンター編集部)には、何かと話題の人物たちが名を連ねている。

理事を務める今村市議や評議員に名を連ねている宮田・江藤両氏は、指定暴力団の密接交際者だったことが明らかとなっている永原譲二大任町長の長男で、田川郡内の建設工事を数多く手がけている鷹羽建設の代表・永原譲太郎氏のJC(青年会議所)仲間。土地売却を決裁した市長の二場氏は、永原町長の義理の弟だ。永原人脈が深く関わる事業に「疑惑」が生じた格好で、今後、市議会でも議論の対象になることが予想されている。

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