どう見ても「NECありき」|福岡市業務委託に重大疑惑(3)

福岡市市民局防災・危機管理部が進める「災害対策本部機能(ICT設備等)拡充整備事業」を巡り、官業癒着が疑われる業者選定が行われていたことが明らかとなった。

業者選定の過程をたどってみると、スタート時点から特定企業に優位性を与えていたことが一目瞭然。基本設計を担当したその企業の受注狙いが明確になっていたにもかかわらず、提案競技の形をとって、公平性を装っていた。結果、優位性を与えられていた企業が約3億4,000万円に上る業務委託を受注している。

■「基本設計」請負企業が公募に参加

市への情報公開請求で入手した文書によれば、同事業に関する業務委託は2件。まず、同事業の概要を定めるための「災害対策本部機能(ICT設備等)拡充整備基本計画検討業務」の事業者を選定し、その後、基本設計案に沿って「災害対策本部機能(ICT設備等)拡充整備業務」の実施業者が、公募の提案競技で選ばれる格好になっていた。

報じてきた通り、基本設計の業者を決めるための前段階となる参考見積りの協力で、『NECネッツエスアイ株式会社 九州支店』が市に提示した既報設計見積り額は875万円。予定価格700万円となった2社による“見積り合せ”で同社は、自社算出額の2割以下となる150万円でダンピング受注していた。

利益を度外視した受注の目的が何であるかは、子供でも分かる。NECネッツエスアイの狙いは、基本設計を手掛けることで、事業費3億3,904万7,000円(上限額。税込)が計上されていた「災害対策本部機能(ICT設備等)拡充整備業務委託」の受注を確実にすることだった。

市側は、この段階で本体業務の受注者がNECネッツエスアイになるであろうことを十分に予想できていたはずで、少なくとも、基本設計を行った同社が本体業務の公募に応じた場合、極めて有利な展開になるのは誰の目にも明らかだった。公平性を担保するためには基本設計に関わった業者を排除すべきだが、市はお構いなしに本体業務の業者選定を進める。

■基本設計とダブる提案競技の内容

福岡市は今年1月15日、「災害対策本部機能(ICT設備等)拡充業務委託」提案競技の公募を開始する。提案締切りは2月10日。市側への質疑期間を挟んで、わずか25日間ほどの作業時間しか与えられないという、極めて窮屈なスケジュールだった。

提案競技に応募したのは3社。そのうちの1社がNECネッツエスアイだったのは言うまでもない。時間的なことを含めて、同社は極めて有利な立場にあった。基本設計を行ったのは同社。提案内容をどう策定すればいいか熟知していたからだ。分かりやすいように、基本設計で市が求めた9項目の業務内容と、提案競技で求められた4つの項目を比較してみた。

基本設計と提案競技の内容に厚みの違いこそあれ、「災害対策本部機能として必要なICT設備」をどう整備するか、さらにはレイアウトプラン、行程管理などの主要な項目は、ほぼ同じ要求内容だ。NECネッツエスアイは、提案内容をゼロから創出する必要がない。自社で策定した基本設計に肉付けする形で提案書を作り、協議に参加すれば済む。基本設計業務を請負ったことで、市側から様々な情報も得ていたはずで、その点も有利に働いたことだろう。2月19日に公表された最優秀提案者は、もちろんNECネッツエスアイだった。

■廃棄された審査結果の証明資料「個票」

提案内容の審査を行ったのは部長1名、課長7名の計8名。すべて市の職員で、外部の有識者は一人もいなかった。下が、審査の際の採点結果である(*画像クリックで拡大)。

NECネッツエスアイは1599.3点。他を引き離しての勝利だったが、残念ながら、この採点表が正確なものだという証拠はない。厳しく言えば、数字が改竄された可能性も否定できない。市側は、審査した職員が評価項目ごとに手書きした「評価個票」を廃棄しているからだ。

本件の関連文書が開示された場で確認して分かったのだが、普通なら採点結果を証明する資料として当然残される「個票」が、なぜか廃棄されていた。市側は、個票を保存しなければならないということを「知らなかった」ととぼけたが、単純なミスで片付けていい話ではあるまい。

あらゆる証拠が示しているのは、「官業癒着」の可能性だ。はじめからNECありきではなかったのか――。そうした疑問が、実は業界関係者から寄せられている。ある情報通信企業の役員の話。
「NECありきで始まり、NECで決まった。そうした流れですよ。いっそのこと、はじめから随契でやればよかったんじゃないか。タイトな日程で応募させておいて、基本設計をやったNECも無条件で参加させた。公平公正を期すなら、基本設計をやった業者は外すべきでしょう。そもそも、基本設計の見積り合せで声をかけられたのは、たったの3社だという。他にも仕事のできる業者はありますよ。とんだ茶番。よく議会を通りましたね」

確かに怪しいことばかり。この業務委託については、稿を改めて検証を続ける予定だ。

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