7年8か月続いた安倍政権で、首相の盟友として睨みを利かしてきた麻生太郎副総理兼財務相。菅新政権でも変わることなくナンバー2の座をキープしているかのように見えるが、派閥の会合で何度も「かん内閣」と発言するなど、ギクシャクした関係がうかがえる。

麻生派の国会議員はいう。
「安倍政権時代、菅氏と麻生氏の間にはかなり距離があった。麻生氏からみれば、菅氏の政治キャリアは自分よりずっと下。その菅氏が首相の座を射止めたことを、喜んでいるはずがありません。だから、『かん内閣」なんて皮肉ってみたくなる」

麻生氏の力の源泉は、毎年2億円近くを集める国会議員でもトップクラスの政治資金。2018年度の政治資金収支報告書によれば、年間の収入2億2千万円と安倍前首相を上回りトップだった。しかし、麻生氏の政治資金を検証すると、グレーな部分も垣間見える。

■自己破産した広島経済界の「顔役」の会社が献金

麻生氏の関連政治団体は複数あるが、資金集めの中核となっているのは「自由民主党福岡県第八選挙区支部」と資金管理団体「素淮会」の2つ。過去に遡ってチェックしてみると第八支部もしくは素淮会の収入欄に、毎年のように決まった人物の名前やその関連法人の社名を見つけることができる。

その人物とは、広島県呉市の商工会議所会頭を長く務めた奥原征一郎氏。収支報告書には、奥原氏個人や同市の関与する法人の名前が度々登場する。奥原氏は、呉市で「寿工業」「コトブキ技研」を中核とした製造会社を経営してきた、広島財界の「顔役」なのだという。

ちなみに、奥原氏の親族の一人が、広島県議会で議長を務めていた奥原信也県議。今年7月公職選挙法違反容疑(買収)で逮捕されていた河井克行・案里被告側から200万円を受け取っていたことが分かっており、東京地裁の法廷で「200万円を受け取った。(案里被告の)選挙のためだと思い、表に出せない金だった」などと認める証言をしている。

奥原征一郎氏と麻生氏の関係だが、両氏は日本青年会議所(JC)時代からの「盟友」だ。第八支部の収支報告書を見ると、2012年には征一郎氏が代表の寿工業が30万円、2013年には同じく征一郎氏が代表のグローカル(広島県呉市)という会社が同じく30万円を献金していた。

寿工業の名前が世間を賑わせることになったのは、2012年のことだ。征一郎氏が、韓国の大手企業とともに出資したアジア特殊製鋼(本社:福岡県北九州市)が205億円もの負債を抱えて経営破綻し、自己破産を申請。征一郎氏は金融機関から経営責任を問われ、債務保証をしていた寿工業も経営破綻に追い込まれた。

当時の官報によれば、アジア特殊製鋼の破産開始決定あ2012年4月11日。征一郎氏個人も自己破産を申し立て、同年10月には破産開始決定が認められている。

前述した寿工業の献金は同年の5月31日。経営破綻の真っただ中で、麻生氏側に献金していたことになる。

征一郎氏個人の破産処理は、2014年6月になってようやく裁判所で終結したが、前出・グローカルの麻生氏への献金は2013年10月。破産処理の最中に、30万円を献金していたというのだから、呆れるしかない。グローカルの第八支部への献金はその後も続き、収支報告書が確認できた2016年、17年、18年は30万円ずつの寄附が記載されている。

ちなみにグローカルが設立されたのは2013年4月。登記簿上の当初の目的欄には『レストランの経営 居酒屋の経営』などとある。破綻処理中の寿工業では身動きがとれないため、政治献金のために新会社を設立した格好だ。

「麻生氏には、麻生セメントという中核企業を中心にしした企業群とJC時代のつながりで、全国に“素淮会”と名前がつく政治団体があります。例えば、九州素淮会、東海素淮会、東北素淮会、北海道素淮会、北陸素淮会、そして中国素淮会といったネーミングです。その中でも中国素淮会の代表をである奥原征一郎氏は、特別な有力者と言えます」(前出・麻生派の国会議員)

確かに、征一郎氏は「中国素淮会」の代表で、毎年のように広島で政治資金パーティーを開催している。広島のベテラン県議が、こう話す。

「中国素淮会の政治資金パーティーには、広島県の政治家や財界関係者が勢ぞろいします。『麻生のような総理経験者が広島まで来るのは、俺の顔があるからだ、と征一郎氏は豪語していましたよ。麻生氏の看板で、征一郎氏は影響力を維持する。一方、麻生さんは一晩で多額の政治献金が入るという、持ちつ持たれつの関係でしょう」

その言葉通り、これまで素淮会には、征一郎氏が代表の中国素淮会から多額の上納金が渡っている。2015年、16年にそれぞれ1,000万円、17年には2,000万円、18年に1,000万円と4年間で5,000万円もの寄附が行われていた。(下、参照。赤いアンダーラインはハンター編集部)

同時進行的に、奥原氏の寿工業が「株式会社KK資産管理会社」に債権を移行して債務処理を行っていたことが分かっている。東京地裁で特別清算終結の決定が確定したのは2017年6月。自身が経営責任を問われる会社の清算が終わっていないのに、麻生氏のための政治資金集めだけは続けていたということだ。債権者が知っていたら、「ふざけるな!」ということになっていたのではないだろうか。

■民事再生の別のJC仲間も献金

素淮会の収支報告書を精査してみると、奥原征一郎氏と同様に、不可解な献金を続けている人物がいる。香川県議会の議長経験者である鎌田守恭議員だ。鎌田氏は、香川県の「日本秤錘」という計量器メーカーの創業者一族。だが、同社は2001年に経営破綻し2003年に破産処理が終了している。

その関連で、鎌田氏自身も2008年に個人民事再生の手続きを申請し認められたが、2009年、素淮会の報告書に鎌田氏が25万円を寄付した記載がある。鎌田氏の民事再生手続きが終結したのは2009年3月。自身が破綻しているのに、麻生氏だけにはしっかり献金を続行していたことになる。その後も献金は続き、直近では2017年と18年に、素淮会にそれぞれ100万円の寄附を行っていた。

香川県のある自民党県議は、鎌田氏についてこう指摘する。
「もう15年ほど前だが、鎌田さんが県議会資産公開条例に反して自身の資産を偽って報告していたことが明らかとなった。しかし当時は、ただの名義貸しで実質的には一族会社が所有している資産だとして、公開に応じなかった。鎌田氏一族の計量器会社が破綻したのは、借金が原因。鎌田さんがバブル時に土地投機にのめり込み、東高松開発という会社が500億円ともいわれる借金をつくったことが最大の原因だというのは、県議会では有名な話だ。えっ?麻生さんに寄附してるの?ほんとかね?JCの時からのつながりなんだろうが、以前は、県議会にまで借金取りがきていたと噂になっていた。それが麻生さんに寄附とは……」

一般的に、民間企業が経営破綻した場合、破産なら債権者への配当が10%に満たないことが大半。民事再生では15%ほどとも言われている。100万円の売掛金があっても15万円ほどがもどってくれば、いい方なのだ。政治資金規正法の規定で、企業の場合は3年間赤字であれば、その損失が埋められるまで政治献金はできない。個人にはあてはまらないとはいえ、奥原氏や鎌田氏の麻生氏側への政治資金提供は、社会的には「?」というしかない。

ところで、JC時代からの盟友とはいえ倒産を経験した奥原氏が、麻生氏側への政治資金提供を止めようとしないのは何故か――。調べてみると、再生エネルギー絡みのある事業の存在に突き当たる。

(以下、次稿)


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