やっぱり「粗製乱造」|日本維新の会・岬麻紀衆議院議員に経歴詐称疑惑

日本維新の会所属の岬麻紀衆議院議員に「経歴詐称」というグレーな疑惑が浮上した。

昨年10月の衆議院選挙で愛知5区から立候補し、小選挙区で敗北も比例復活当選を果たした岬氏。2019年7月の参議院選挙に日本維新の会と、愛知県の地域政党で河村たかし名古屋市長が率いる「減税日本」が共同で公認した人物だ。

岬氏は、選挙公報に『亜細亜大学 非常勤講師、杏林大学 非常勤講師』と掲載していたが、両大学には、岬氏が非常勤講師として勤務していた形跡がないという。

■河村名古屋市長「経歴に虚偽の疑い」

日本維新の会と共同で岬氏を公認した減税日本の河村たかし市長は、5月13日に記者会見。「亜細亜大学と杏林大学、どちらも、岬氏は非常勤講師ではないという回答でした。経歴に虚偽の疑いがあります」と自らの調査結果を発表した。別の減税日本幹部が、こう振り返る。
「今振り返ると、岬氏は大学中退という学歴です。大学を卒業していない人が非常勤講師として、学生を指導できるものなのか。そこに気が付けばよかった。だが、紹介者の関係もあって彼女の言葉を信用したのが失敗だ」

2019年6月、名古屋駅前の居酒屋。河村氏に岬氏を紹介するため、わざわざ同行してきたのは松沢成文元神奈川県知事。当時は日本維新の会の参院議員だった。

■リコール署名偽造事件で急浮上

参議院選挙で岬氏は、27万票近くを得ながら落選。その後、今年7月の参議院選挙に出馬するため政治団体を設立して政治資金パーティーを開催するなど、準備を進めていた。そこに突然、風が吹いた。

2020年、高須クリニックで知られる高須克弥院長が中心になり、大村秀章愛知県知事に対するリコールの署名活動が実施された。しかしその後、大規模な署名偽造が発覚し、地方自治法違反(署名偽造)でリコール団体の事務局長を務めていた田中孝博被告が逮捕された。当時、日本維新の会が愛知5区で公認予定だったのが田中被告。逮捕で空席になったところに、岬氏が名乗りをあげ、候補者として急浮上したのである。日本維新の会の愛知県連幹部が、次のように説明する。
「維新は田中被告を公認していたので、当然、謝罪や反省の意味もあり5区は不戦敗になると覚悟していた。そこへ岬氏が出馬に名乗りを上げた。田中被告のイメージが悪いので愛知7区ではどうかと打診しても、岬氏は『5区で』と言い張った。参院選の時点で経歴詐称疑惑が囁かれていたことを把握していた維新の愛知県連としては推したくなかったが、岬氏は『詐称はない』という。だが、それでも怪しいので最後は党本部でどうするか決めてくれと、下駄を預けたんです」

つまり、日本維新の会の本部が、岬氏の出馬を認めたというのだ。だが、当時の県連幹部の懸念は、河村市長らの調査で現実のものとなった。

■甘かった経歴確認

2019年の参議院選挙に話を戻す。減税日本で岬氏のプロフィールや公約などを選挙公報にまとめた時だった。岬氏は履歴書を河村氏や減税日本の幹部に提示したが、当初そこには『亜細亜大学 非常勤講師、杏林大学 非常勤講師』という記述はなかった。

「河村氏との面接では、2つの大学の話は出なかった。その後、担当者と打ち合わせしている時に『大学の非常勤講師でした』と2つの大学の名前を自分で履歴書に書いたのです」(前出・減税日本幹部)

本サイトでは、岬氏の履歴書の写しを入手した。そこには、たしかに“手書き”で、大学2校の名前がある。減税日本でも確認作業をしたが、大学2校とも「本人による問い合わせ」を求めた。2019年6月10日頃だったという。

選挙準備に慌ただしい減税日本の事務所の中で、選挙公報の担当者が岬氏に「非常勤講師の確認はどうなったのか」と聞いた。すると岬氏はいきなり携帯電話をとりどこかへ電話をかけた。そして「今、大学で確認がとれましたから大丈夫です」と大きな声で話したという。結局、非常勤講師であったとの書面は提出されず岬氏の言葉を信じた格好になった。

選挙公報だけではなく、NHKも地元紙中日新聞も『杏林大学非常勤講師』という肩書で岬氏を紹介しているのが、当時の報道でもよくわかる。有権者に虚偽の肩書で得票を得ようした邪な“魂胆”がうかがえる。

「岬氏が衆議院選挙で比例復活できるだけの得票を得たのは、参議院選挙で日本維新の会、減税日本から出馬した実績があってのこと。参議院選挙は落選したとはいえ、経歴詐称は間違いない。大スキャンダルだ。2つの大学は、書面ではっきりと非常勤講師ではないと書いている。岬氏が馬場伸幸共同代表に泣きついて、問題が長引いていると党内では言われている。悪あがきすると夏の参議院選挙に響く」と日本維新の会の国会議員は指摘する。

■開き直る岬氏と身内に甘い維新

だが、岬氏は記者会見もせず、正当性を訴えるメールを支援者に送っていた。

私は亜細亜大学では国際関係学部、杏林大学では総合政策各部にて2、3年生を主対象にインターン直前、就活のビジネスマナーやコミュニケーションの単位に関わる正式な授業のコマ講義として担当いたしました

いずれにしても嘘つきではございません。詐称はございません>

当初、岬氏の議員辞職をにおわせていた日本維新の会の松井一郎代表。それが一変し、「2つ学校あって1つは講師として証拠書類が提出された。2校あるうち1校は授業を受け持っていた。証明ができるのではないのか」と容認するような発言は「いかにも維新」という印象だ。

本サイトでは、維新の「粗製乱造」について2度、報じてきた。
・《日本維新の会に懸念される「粗製乱造」|参院選公認予定者の気になる経歴
・《日本維新の会・参院選公認予定者の経歴に疑問噴出

岬氏は、選挙公報などで『非常勤講師』と記載したのだから、自らが大学2校からその証明をとればいいだけの話。なぜ天下の衆議院議員がそんな簡単なことをやれないのか。維新の「粗製乱造」が、この国の政治を歪めている。

 

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