残高6億超|増え続ける古賀誠元自民党幹事長の政治資金

議員バッジを外した後も、毎年3回の政治資金パーティーを開き、地元や永田町に睨みを利かす政治家がいる。古賀誠氏80歳――議員秘書から身を起こし、1980年の総選挙で衆議院議員に初当選してから10期連続で議席を守り、自民党幹事長にまで昇りつめた大政治家だ。

官僚出身者が多く「お公家さん集団」と揶揄された宏池会には珍しい強面でのし上がり、最後は名門派閥の領袖に納まった。力の源泉は「群を抜く資金力。それと義理人情に厚い人柄」だったと、前回の総選挙で引退した、ある元自民党議員は振り返る。

その古賀氏が現職を退いたのは2012年。自身の秘書を務めていた藤丸敏氏を後継指名し、派閥の会長も岸田文雄氏に譲る。菅義偉政権発足後は、宏池会の名誉会長も退いている。

経歴や年齢からいって政界のご意見番的存在として枯れた姿を見せてもいいはずだが、古賀氏はいまも活発な政治活動を展開しており、影響力も健在だ。古賀氏の、カネ集めの実態を検証した。

■後継議員とパーティー共催で年1億円

日本の政治史の中で、引退した政治家と、その後継となった現職国会議員が、それぞれの政治団体の「共催」という形でカネ集めを続けている例は皆無と言ってよいだろう。古賀元幹事長がバッジを外して8年経つが、同氏の政治団体「古賀誠筑後誠山会」と藤丸氏の資金管理団体「藤丸至誠会」は、毎年3回政治資金パーティーを開いて約1億円の政治資金を得続けている。
(*下は、両団体の平成31年(2019年)分政治資金収支報告書の表紙)

政治資金パーティーの開催パターンは毎年同じで、4月と7月に東京と福岡でそれぞれ1回、さらに11月にも東京で開いている。(*下の画像参照)

3回の政治資金パーティーの売上合計は約1億円。パーティーごとに経費を際し引いた額を折半し、分け前を「寄附」の形で移動させるという寸法だ。下に、2017、2018、2019年の売り上げ額と、分け前をまとめた(日付は寄附の実行日)。

現職の藤丸氏は、パーティーで得た資金を様々な政治活動の支出に充てている。では、バッジを外した古賀元幹事長は、年間5,000万円前後のカネをどう使っているのか――?古賀誠筑後誠山会の収支報告書をめくってみると、とにかく目立つのは組織活動費の内の「会費」と「会場費・飲食費」。会費は主に自民党議員の政治資金パーティーに対する支出なのだが、他の政治家の出す一般的な額と、ケタが違う。

東京で開催される政治家の政治資金パーティーのパー券代は、よほどの大物議員でない限り2万円が相場。付き合いで顔を出す側の政治家も、ご祝儀袋に会費分2万円を入れて受付を済ますのが通例だ。年間に何十回もの政治資金パーティーが開かれるため、国会議員の政治団体の収支報告書には、「20,000」という記載がズラリと並ぶ。

ところが、古賀誠筑後誠山会の政治資金収支報告書だと、こうなる(*下は2019年の「会費」支出の一部)。1件10万円、20万円はあたりまえ、一番少ない額でも5万円だ。この年だけで、「会費」支出は600万円を超えていた。

次に大きな支出は「会場費・飲食費」。高級店での飲食実態は、どうみても庶民感覚とは程遠い(*下は、2019年の「会場費・飲食費」支出の一部)。

 同年の飲食費は54件、計約900万円に上っていた。平均的なサラリーマンの年収は400万円程度なのだというが、その倍を超える額が、飲み食いに消えていることになる。バッジを外したとはいえ、やはり大物政治家の暮らしは優雅だ。

汲めども尽きぬ、とはこういうことを言うのだろう。後輩の政治家たちにカネを配り、高級店での飲食を繰り返しても、年3回の政治資金パーティーで潤う古賀誠筑後誠山会の政治資金は減らない。減らないどころか、2017年末に約6億1千万だった残高は、18年末で約6億1,700万、19年末は6億2,500万円へと増えていた(*下の画像参照)。

ちなみに、総理大臣経験者でもある麻生太郎副総理の資金管理団体「素淮会」の2019年末の資金残高は約1億2,300万円で、安倍晋三前首相の「晋和会」の場合は約7,300万円。古賀氏の政治資金は突出している。

■地元の主役はいまも古賀元幹事長

保有する政治資金の額だけでなく、存在感も他を圧する。古賀氏の後継である藤丸敏衆院議員は既に当選3回の中堅議員。一本立ちするのが当然なのに、地元福岡7区では影が薄い。大型公共事業のテープカットなどで主役になるのは、いまも古賀元幹事長だという。次の2枚は藤丸氏のフェイスブックに投稿された写真だが、真ん中にいるのは古賀元幹事長。遠慮がちな藤丸氏が気の毒に見えるほどだ。

名門派閥・宏池会の名誉会長を退いても、永田町や地元福岡で大きな力を持ち続ける古賀氏――。肺腺がんの治療に専念するため辞職することになった小川洋福岡県知事の後継選びを巡っては、古賀氏が国土交通省の局長OBを説得中との噂が流れるなど影響力も健在だ。ただ、その存在があまりに大き過ぎるため、福岡7区内のある自治体の行政が、歪んだ状態になっている。次週の配信記事で詳細を報じる予定である。

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