大阪維新の会の副代表で府議会議長の経験もある今井豊大阪府議が、新潮に「闇献金」と「不倫問題」を暴かれ、議員辞職に追い込まれた。
“身を切る改革”、“クリーンな政治”と掛け声だけは威勢がいい維新。その内情が、今井氏の行状から明らかになった。
■維新の地方議員は冷やか
一連の疑惑をスクープした週刊新潮が報じたのは、今井氏が貝塚市の藤原龍男市長から「闇献金」を受け取っていたことと、女性秘書との不倫問題。不倫を否定しつつ、闇献金については自ら「貝塚市長が内緒の金、ウチに持ってきたんや。これ、もう、受け取ってるから。要は、闇献金や。トータル100(万円)」、「パイプカットしているのは、ヤクザもんかオレ、って言われている」などと記事の大筋を認めている。当然のことだが「闇献金」は政治資金規正法違反に抵触する問題だ。
橋下徹氏ともに「維新」を創立したのが大阪市長の松井一郎氏。その松井氏の盟友とされる今井氏は、維新の創立時から幹事長などの要職に就き「ナンバー2」として組織を仕切ってきた。
ある大阪維新の会所属の地方議員はこう語る。
「今井氏の口癖は『橋下はこう言っている』『松井の思いは……』。いつも橋下氏や松井氏の代理人のように振舞い、恫喝することもありました。今回、議員辞職に追い込まれて、ざまあみろと維新の多くの地方議員は思ってますよ。『コロナ禍じゃなければ、今井氏の議員辞職に祝杯だ』ともいう声まであるほどです」
よほど今井氏に嫌悪感を抱いていたらしく、批判は止まらない。
「今井氏の不倫やカネの汚さは知られるところ。維新の者が腹に据えかね、週刊新潮に売り込んだんだと思いますわ。その証拠に、今井氏の議員辞職を歓迎するもんはいますが、悲しむもんはゼロや」
かつて、維新の地方議員だったX氏は、今井氏とバトルを続けたことがある。X氏が、あるスキャンダルに見舞われた時のことだ。一部は事実だったため、潔く維新から離党を表明。すると今井氏に呼びつけられたという。X氏がその時の様子を打ち明ける。
「離党する前にも『今井氏が怒っている』というので連絡をとった。すると『お前、離党ですむと思うな。すぐに議員辞職や』と恫喝。離党すれば維新の議員ではないので、そこは考えると話すと『何をいうてるねん、俺ならすぐやめるで。不祥事は恥や』と言っていた。あまりに上から目線の物言いなので、反発。しばらく、連絡がきても応答しませんでした。すると『こらはよやめろ』とヤクザのような口調で文句を言われた」
今井氏に反発した理由については、こうも話す。
「今井氏は橋下さんと松井さんをバックにぞんざいな言い方をすることで、維新でも有名。けど、今回、週刊新潮で報じられた女性問題以外でも、疑惑はいくつもある。私は、『お前が言うな』と反発しただけ。今回の疑惑も、維新の地方議員が腹に据えかね、週刊新潮に情報を流して、刺した。誰が動いたのかも聞いている」
■維新流「二枚舌」で吉村知事登場か?
「闇献金」に「不倫」というのは、政治家として大きな問題。松井市長は、記者会見で「こういう問題は我が党だけではなく、自民にも他党にもある」と火消しに懸命となっている。
火消しを急ぐ理由は、投開票日を控えた選挙にある。今井氏のスキャンダルが、サウナ市長・冨田裕樹氏のお陰で「全国区」になった、大阪府池田市の市長選挙に飛び火しているからだ。
池田市長選は冨田氏に加えて、大阪維新の会公認の滝沢智子氏、池田市議だった渡辺千芳氏(無所属)、労組系団体が支援する内藤勝氏(無所属)の4人が争っている。だが、実質的には滝沢氏が優勢、渡辺氏が追う展開といった展開で、“サウナ市長”の冨田氏や内藤氏はリードを許しているとみられていた。それが今井氏の不倫と闇献金が報じられたとたん、混とんとしてきたというのだら選挙はわからない。
これまで報じてきたように、池田市は大阪9区を地盤とする日本維新の会・足立康史衆院議員の地元。足立氏の選挙でもないのに、自分の写真を貼りだした街宣車を走らせるなど「事前運動じゃないか」と問題視されるほど熱を入れている。地元の維新関係者は言う。
「トラブルメーカーの足立さんは、解散総選挙が近いことからか、池田市長選でサウナ市長の元秘書だった滝沢氏を引っ張り出した。批判も多い中、今度は今井氏のスキャンダル。おまけに内容はカネと女の疑惑というのだから最悪。『こんな大事なのときに!』と足立さんも怒っていた。維新の支持者が離れると、市長選が危ないと足立さんは焦り、ウルトラCで挽回を図ろうとしている」
ウルトラCとは、大阪維新の会代表でもある吉村洋文大阪府知事の池田市入りだという。もともと、サウナ市長の「製造責任者」である維新は、池田市長選に関与しないと表明していたほど。市長選初日に池田市でマイクを握った大阪維新の横山英幸幹事長も「吉村氏は応援には来ない」と明確に語っていた。
だが吉村氏は、否定していた池田市入りについて態度を一変させており、「公務がない時には応援に行くこともありうる」「応援に入らないわけではない」と記者会見で言い始めた。コロナ禍で新規感染者が連日2,000人を超える大阪府の知事が、緊急事態宣言下、本当に池田市長選の応援に入るつもりなのか?
2019年の池田市長選で、維新は冨田前市長を擁立。土壇場で吉村氏と松井氏が応援に来て、一気に流れは冨田氏に傾いた。足立氏はその再来を狙っていたのだろう。
ところが、今度は維新のナンバー2だった今井氏のスキャンダル。吉村氏や松井氏が池田市長選に絡むことで、ニュースとなり、滝沢氏が当選となれば今井スキャンダルの影響が薄らぐとの魂胆が見え隠れする。
池田市長選介入を模索しはじめた吉村氏の態度は、維新の「二枚舌政治」の象徴だ。選挙の応援に出る暇があるのなら、コロナ対策をしっかりやるべきだろう。