注目集まる「大樹総研」の先行き

今年2月25日、東京地検特捜部がジャスダック上場のバイオベンチャー「テラ」(本社:東京都新宿区)によるインサイダー取引に関連して、民間コンサル「大樹総研」やその総帥である矢島義也氏の自宅に強制捜査に入った模様を本サイトで速報した。

その大樹総研に対する特捜部の捜査や同社の先行きに、改めて注目が集まる状況となっている。

◇   ◇   ◇

特捜部の家宅捜索の折、矢島氏は事情聴取も受けている。その後の矢島氏について大樹総研の関係者が「(矢島氏は)すっかり元気がなく、会社にも来なくなりました」と打ち明ける。

2017年10月に行われた総選挙の際には、大樹総研と密接なつながりを持つ「JC証券」を通じて、細野豪志衆院議員に5,000万円が提供されるという事件も起きた。この時も、矢島氏に捜査に手が伸びたが、当時特捜部長だった森本宏・現東京地検次席検事は矢島氏を追い詰めることができなかった。

だが今回は、保秘が徹底されているはずの検察内部から、次のような話は漏れ伝わってくる。
「森本氏と長くタッグを組んでいた副部長らが『絶対に大樹をやるんだ』と目の色を変えて捜査をしている。テラ関連で強制捜査が入ったが、そちらは警視庁の事件。特捜部の狙いは、別にある」

「大樹総研」家宅捜索の波紋》で報じたとおり、テラ関連なら有価証券報告書、IR情報に問題があり、財務官僚が関与したのではないかという財務省ルートがある。

経産省ルートとされるのは、香川県丸亀市の山間部に位置する「まんのう・丸亀太陽光発電所」という太陽光発電所の許認可に絡む問題で、どちらも、大物官僚が絡む。

だが、東京地検特捜部OBで検事長経験者の弁護士はこう話す。
「特捜部のやる事件は非常に政治的だ。麻生太郎首相時代には、旧民主党時代の小沢一郎氏の事件をやった。大樹総研は10年に1度と言われる疑獄事件になりかねない。官僚程度で終わるとは思えない」

7月に予定される参院選で与党が勝ったとする。次は当然衆院選が視野に入るが、衆院の定数見直しで「10増10減」が実現すれば、周知期間などが必要なため2年近くは解散ができない。スキャンダルや党内抗争に打克てば、当面は長期政権となる。

大樹総研・矢島氏の後ろ盾として名前が出てくるのは、菅義偉元首相や二階俊博元幹事長など党内の非主流派。「政治的」な東京地検特捜部が、財務省や経産省ルートで満足せず狙うとすれば、その先にいる大物政治家ということになる。

大樹総研には、もう一つ、触れられたくない政治家との関係がある。2019年12月25日、クリスマスの朝、東京地検特捜部は、衆議院議員の秋元司被告を収賄容疑で逮捕した。日本へのIR参入を目指していた中国企業「500ドットコム」から講演料名目などで1,000万円近い賄賂を受け取っていたという事件だ。

2021年9月、秋元被告は1審で懲役4年を言い渡され、現在は控訴中。ある大樹総研関係者が、こう話す。
「実は、500ドットコムは大樹総研の顧客なのです。秋元被告の事件でも大樹総研はいろいろ調べられていたんです」

秋元被告も二階派所属。昨年10月の衆議院選挙後、細野氏も二階派に加わった。つまり、東京地検特捜部には二階派に関する情報がたっぷり蓄積されているということだ。

東京地検特捜部の強制捜査後、大樹総研のクライアントは激減したともいわれている。前出の大樹総研関係者は、次のように話している。
「もともと大樹総研のコンサルタントフィーはかなり割高。“役所に掛け合って優先順位を上げる”などといった、他のコンサルではできないようなことでも『やってみましょうか』と受ける。クライアントが表に出せないような相談ばかりなんですよ。駆け込み寺のようなものなんですが、ハッタリで商売している部分は確かにある。従って、クライアントが逃げれば経営が苦しくなる。矢島さんは、大好きな銀座豪遊もままならないんじゃないか。社内ではXデーに巻き込まれないようにと、2人集まれば退職の日の相談ですよ」

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