島根にもブラック警察官

 鹿児島県警や北海道警における警官不祥事を追及してきたが、島根県警でも“ブラック警官”の存在が明らかになった。

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 「うちの会社が乗っ取られてしまって、大変なんです。相手は警察官ですからとんでもありません」と話すのは、島根県で介護などの福祉支援関連事業を手掛けるX社の元社長Aさんだ。

 法人登記簿を確認すると、2024年3月に創業者でもあるAさんの母親が辞任し社長にCさんが就任と記載されている。Cさんは、Aさんの兄で現職の島根県警警察官Bさんの息子――つまり甥にあたるという。

 「Cは関東の大学に通っており、社長の業務などできませんし、スキルも知識もありません。実兄のBがX社を乗っ取り、スタッフに指示したり、経営に口出しするなど実質的にはX社を支配している。またⅩ社から現金を引き出してCの学費などに充てているようで、個人的に費消しています」とAさんは怒る。

 B氏は大学卒業後の島根県警に入り、20年以上のキャリアがある地方公務員。地方公務員法第38条には許可なく営利企業などの役員に就任したり、自営などで報酬を得ることが制限されている。

 Aさんは弁護士を選任して、Bさんや甥と交渉を試みた。しかし、なんら回答はなかった。そこで、弁護士を通じて、昨年秋に松江市の担当部局へ「要請書」を提出。その後、今年に入って島根県警には「申立書」を提出した。福祉支援事業は税金から一定額が補助されるもの。透明性の高い情報開示、信頼がおける業務内容が不可欠だ。「要請書」には杜撰な運営状況について、こう記されている。

《施設の運営に必要な知見もないB氏が施設の運営を支配しているため、運営は混乱。それを嫌った退職者も出て、日々発生する消耗品費等の費用を従業員が立替払いしながらその返還がなかなか受けられないなど、極めて杜撰な運営がされている状態にあって、施設利用者への適正なサービス提供に問題が生じかねない状況》
《このような現状は、松江市指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例が求める適正な基準を大きく逸脱。施設利用者に対する事故など取り返しがつかない事態が生じることを強く危惧しています》

 「松江市は話をきちんと聞いてはくれた。しかし、Bが施設に出入りし社長のようにふるまう姿は変わらず、施設は混乱するばかり。話し合いにも応じません。そこでBが所属する島根県警に申立をした」とAさんは話す。申立書の記述を以下に示す。

《Bの法令違反行為について(施設の)経営権奪取の経緯については、刑事事件としてCを含む関係者の刑事責任が問われる余地がある。(甥は)松江市内に居住実態がなく遠隔地に居住する大学院生であり、代表取締役としての実態は全くなく、実質的には島根県警察所属の警察官であるBが経営を支配し、同社に出入りして経営を完全に牛耳っている状況にある》
《Bの行為は、地方公務員法上の職務専念義務に明らかに反するものであり、名目上の代表取締役である甥の学費等のため家計が逼迫し金目当てで経営を支配しており、Bが様々な形で利得を得ている可能性が極めて高く、そうであれば、地方公務員法で禁じられている無許可による営利業務従事に該当することになる可能性が極めて高い》
《無定見、無能力なBは、(スタッフとのトラブルが生じ)スタッフらを強引に解雇するなど事態をさらに悪化させ、スタッフらは労働組合を結成し団体交渉に臨むなど抵抗している状態。現職の警察官であるBは、このような深刻な紛争を惹起、悪化させ、警察の威信を傷つけ国民の警察に対する信頼を大きく失墜させているのであって、地方公務員法上の重大な非行に該当する》

 「要請書」や「申立書」には、B氏がX社に介入した後、混乱する様子をスタッフらがメモに残していた。その一部は、松江市役所や島根県警にも提出されたという。ハンターが入手したのは、昨年春からスタッフが手書きしたメモ。そこにはB氏がX社の実質的な社長としてふるまっている様子が記されている。

《給与は朝、口座に入金なし。(その後)社長が手渡すのではなく、部外者のC氏がスタッフに手渡した》
《B氏が部外者でありながら、社長に代わって実権を握っている言動は異常です。勤務妨害、おどしともとれる言葉、はったり、嫌がらせ、職員はおそろしささえ感じています。(施設利用者の方々へも)心理的影響も出ています》
《B氏のお嫁さんまでが、送られてきた資料をもとに給料計算していることに驚いた》

 なんと、B氏の妻までX社の経理などに関与しているというのだ。あるスタッフは、警察官であるB氏がX社の実質的な社長としてふるまっていることを疑問に思い、地元の交番に相談に行ったという。Aさんは訴える。

 「今年になって松江市役所も動いているようです。島根県警もマズイと思ったのか、X社のスタッフに事情を聞きはじめ、Bには何らかの対応、処分を検討していると聞きます。いくら兄弟でも、あっては成らない事です。また、多額のお金をX社から引きだしており、それも問題です。返さないなら裁判も考えます。県警は厳正な処分を課すべきだ。Bはこちらの代理人弁護士に回答すらしない。しかし、X社にくると『くたばれ』など罵詈雑言のメッセージを手書きで残していきます。本当にひどい」

 長年X社で働いてきたスタッフは声を震わせ訴える。

 「施設には様々な障害を持った年齢の異なる子どもたちが楽しそうに安心して過ごしている今の環境。安心して子供たちを預けて下さっている親御さん達の為にも、これを何としも守らなければと考えています。単なる金儲けで福祉施設を運営するなんてことは、あってはならない」

島根県警は“ブラック警官”のB氏にどう判断を下すのだろうか。

 

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