問題発覚からまもなく1年になる北海道立江差高等看護学院のパワーハラスメント問題で3月29日、道はパワハラに関与した教員10人の懲戒処分を発表した。最も多くのハラスメントが認められた副学院長(62)は「停職6カ月」の処分となり、今月末に依願退職する。ほかの9人はいずれも「減給」及び「戒告」処分に留まったが、うち1人が副学院長と同じく退職の意向を示しているという。
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道が発表した処分対象者と処分量定、及び処分理由は、それぞれ以下の通り。
・副学院長(62)「停職6カ月」…長期間にわたり複数の学生に暴言、威圧的行為など
・女性教員(62)「戒告」…執拗に始末書を書き直させるなど
・女性教員(58)「減給3カ月」…複数の学生にたび重なる暴言や侮辱的発言など
・女性教員(53)「減給1カ月」…複数の学生から学習権の剥奪など
・女性教員(51)「減給1カ月」…侮辱的な発言など
・女性教員(57)「減給1カ月」…複数の学生に暴言など
・女性教員(45)「戒告」…暴言など
・女性教員(47)「戒告」…執拗に反省文を書き直させるなど
・女性教員(58)「減給1カ月」…複数の学生に暴言など
・男性教員(49)「戒告」…退学推奨とされる威圧的な行為など
ハラスメント事案調査にあたった道の第三者委員会は昨年10月に教員11人の関与を認定したが、今回処分の対象となったのは10人。発表後に会見を開いた道はこれについて「1人はすでに退職しているため対象とならなかった」と明かした。調査報告からはすでに半年を経ており、処分が遅くなった理由を問われた担当課は「個別の事案を整理する作業などに思った以上に時間を要した」と弁明、「被害者のお受け止めとしては『遅すぎる』ということはあると思う」と認めた。
処分対象となった教員の去就、とりわけ今も学内に残る2人については、異動させずに引き続き教職に留めるという。担当課は「まったく問題なしとはしないものの、ベターな選択だと思っている」と説明、今後の再発防止については「学院運営アドバイザー(旧・第三者委)に協力いただき、外部の視点を入れて適正化をはかりたい」とした。被害者や保護者らが求める公開の場での謝罪については「考えていない」と改めて否定、個別に謝罪対応を進めていく考えを示した。一部の事案では、すでに謝罪を終えているという。
道の『懲戒処分の指針』によると、パワーハラスメントをした職員への制裁は最高で「免職」。今回はどの教員もこれに該当しなかった結果となり、被害者などからは「甘い」との指摘が上がった。保護者の1人は「処分したから『これでクリアー』とばかりに、また復帰させることもあるのでは」と不信感をあらわにする。「父母の会」代表を務める保護者は次のようにコメント、再発の可能性を危ぶんでいる。
「率直に処分が軽いと思っています。望んでいた結果は免職処分です。この結果を聞いて加害教員がどう受け止めるかが課題。『この程度か』と思ってしまったら、パワハラは続きます」
(小笠原淳)
【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |