【鹿児島県警の闇】枕崎盗撮事件再検証(中)|捜査資料黒塗りで真相隠ぺい|別件隠した疑いも

 警官不祥事のもみ消しを指示した疑いがある鹿児島県警の前本部長野川明輝氏。その野川氏が、保身のため犯人を見逃すよう命じたのが枕崎署の現職警官による盗撮事件だった。改めて同事件の捜査関連資料を情報公開請求で入手したが、別の文書では開示した事件の発生日付を含め、ほとんどの記載は黒塗り非開示。腐敗組織らしい隠ぺいの証明となった。開示された捜査関係資料の内容はほんのわずかだが、それでも次々と疑問が生じる。

■「静観しろ」で事件もみ消し

 情報漏えいがあったとして国家公務員法違反に問われている県警の元生活安全部長が北海道のジャーナリスト小笠原淳氏に郵送した文書から、隠ぺいされた2人の霧島署員による2件のストーカー事件と現職警視の不正、そして枕崎署員による盗撮事件の実態が明らかとなった。輸送された文書が「公益通報」であったことは疑う余地がない。

枕崎署員の盗撮事件で開示された捜査関係資料は、黒塗りばかりで事件の詳細が完全に伏せられた形だ。念のため、元生安部長の公益通報文書にあった事件の概要を示しておきたい。

・2023年12月中旬 枕崎市内の40代女性が公園のトイレ内に入った際、スマートフォンのようなものが見えたため声を上げたところ男が走って逃げたと通報。女性はパトロール強化を要望。

・同トイレにおいて過去にも盗撮容疑事案の相談があったことから、付近の防犯カメラ映像を回収し、犯行時間帯の映像を精査。容疑車両が枕崎署の捜査車輛であることを確認し、同時刻に車両を使用していた捜査員を特定

同署は警察職員による盗撮容疑事件と判断し、県警本部刑事部へ通報

・本部指揮事件であることから本部の指揮を受け、早急に当該職員のスマートフォンを差し押さえて画像を解析し、事情聴取、強制捜査へと向かう方針で検討していたところ、本部から「静観しろ」との指示。

・事件は隠ぺいされたが、枕崎署は再犯を防ぐため、全署員に対し「盗撮防止」の教養を実施。

・令和6年春、当該職員が人事異動で配置換え。

 開示された枕崎盗撮事件に関する捜査関係資料は、署長指揮事件指揮簿が2件分(5枚)、本部長指揮事件指揮簿が8件分(34枚)、犯罪事件処理簿が10件分(10枚)、犯罪事件処理簿が4件分(8枚)。ほとんど黒塗りで、事件に関係する日付や、どうでもよさそうな部分まで非開示となっている。枕崎署員の盗撮事件に至っては、公表された事項まで非開示だ。

■不必要に黒塗り非開示

 捜査関連文書の開示請求に先立って入手した「懲戒処分台帳」には、処分年月日、付された処分、処分理由が記載されている。県警が処分したのは昨年の6月21日。「職員は、令和元年9月17日から令和5年12月23日までの間、複数回にわたり、女子トイレに侵入し、他人の性的姿態を撮影するなどしたもの」という長期間にわたる卑劣な犯行に対する処分は「停職3月」というものだった。民間なら即解雇のケース。やはり警察は身内に甘い。

 これまで述べてきた通り、処分台帳では開示された犯行の日付が、「署長指揮事件指揮簿」「本部長指揮事件指揮簿」「犯罪事件処理簿」「犯罪事件処理簿」では隠されている。これは県警が、情報開示を場当たり的に行っていることを示している。おそらく、同じ文書であつても、他の報道機関に開示したものとハンターに開示したものでは黒塗りの箇所が違っているはずだ。

 元生安部長の公益通報を知った県警は相当あせったらしく、同じ盗撮事案の捜査記録であるにもかかわらず、事件処理に関する記載内容には統一性がない。それは、入手した資料からまとめた署長指揮事件指揮簿と本部長指揮事件指揮簿の「事件の概要」、犯罪事件処理簿にある「被害程度」、犯罪事件処理簿記載の「犯罪事実」に記載された内容をみれば瞭然だ。(*表中の「■」は黒塗り個所)

 頻繁に出てくる「便所」「トイレ」「スマートフォン」「姿態を撮影」によって、一連の文書が盗撮事件のものであることは分かる。しかし、事案ごとの発生日付、場所、手口は黒塗りだらけで処分の妥当性を確認することはできない。犯行場所が枕罪市内だけではなかったことが明らかになっているが、正確な犯行場所や日時を開示しなければ、隠れた被害を暴くことはできない。県警は意図的にこうした操作を行ったとみるべきだろう。事件詳細の隠ぺいは、犯行を知らない被害者が大勢いることを県警が軽く見ているか、真相を隠して組織への批判を防ごうとする意識が働いた結果であるかのどちらかだ。

 酷いのは本部長指揮事件指揮簿6にある、トイレを「といれ」とひらがな表記した箇所。訂正もせぬまま、決裁が通ったというわけだ。

■盗撮以外の「卑わいな行為」とは?

 次に注目したのは、「犯罪事件処理簿」の2にある《もって通常人が衣服等の全部又は一部を付けない状態でいるような場所において、当該状態でいるものに対し、著しく羞恥する様な卑わいな行為をし》という記述である。(*下の画像参照)

 開示された資料によれば、犯行に及んでいた巡査部長の行為は建造物侵入、性的姿態等撮影、不安防止条例違反にあたることが明記されている。他に罪名や罰条は出てこない。つまり、被害者と一定の距離を置いた上での盗撮ということだ。しかし、《もって通常人が衣服等の全部又は一部を付けない状態でいるような場所において、当該状態でいるものに対し、著しく周知する様な卑猥な行為》というのは直接的な身体接触をともなう行為ととれないこともない。「撮影」と「卑猥な行為」は明らかに別の話だろう。盗撮や建造物侵入、条例違反以外に「別件」があった疑いが生じる。県警は、当該事案について公表した盗撮以外の犯罪行為を隠しているのではないか―ー?開示された黒塗りだらけの文書をみれば、その疑いは一層濃くなる。(以下、次稿)

(中願寺純則)

 

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