
結婚詐欺の被害相談を受けながら約4年間放置した鹿児島中央署。そのせいで、9人の被害者のうち少なくとも2人は、稀代の詐欺師・日高洋被告の餌食になっていた。
Aさんを騙しながら、同時進行的に別の女性に対する何件もの犯行を重ねていた日高――。ここに来て、自分の家族まで巻き込んで多額の現金を騙し取る手口の詳細も分かってきた。
■自衛官だった息子が起こした事故で500万円貸すも・・・
詐欺犯・日高の「離婚した」という話は真っ赤なウソ。犯行を重ねていた2016年~2019年当時、日高には妻も子供もいた。本当に離婚しているとすれば、日高が逮捕された時期の前後くらいではないかとみられている。子供は息子と娘の二人。その二人を犯行の道具にしていたことも分かっている。
日高の息子は、高校卒業後に自衛隊に入隊し、パイロット養成コース(6年間)にいるという“設定”だった。2019年、Aさんが「息子さんはパイロットになったのか」と尋ねると、日高は「進級試験に落ちたが、上官の計らいでヘリのパイロットになった。希望していた戦闘機のパイロットではないので、数年後に民間の航空会社に転職予定」と話したという。しかしどうやらこれも噓。日高を知るある関係者は「パイロットではなく自衛艦の艦内でデータを読む仕事をしている」と証言していた。
息子が詐欺の片棒を担がされたのは2017年5月のこと。日高の言い分はこうだった。
・鹿児島に帰省した息子に、福岡市内に1台だけあってレンタルしたフェアレディZを貸したところ、大分県内のレース場で横転事故を起こし、車を破損させた。
・レース場での事故は保険対象外のため全額弁償が必要で、その金額が500万円になる。
・自分は事故処理のため鹿児島と福岡を何度も往復していて仕事が手につかない。とりあえず銀行のカネに手を付け500万円払った。穴埋めが必要。
・この件が表に出るとパイロット訓練生を辞めなければならなくなる。息子が1カ月で返すから一時的に500万円貸してほしい。
日高を信じて500万円貸したものの、数カ月過ぎても500万円は返ってこない。何度も催促したところ、「訓練生は基地外に出られないからカネをおろしに行けない」「訓練でアメリカにいる」などと、その都度はぐらかされ、Aさんが不信を抱く要因となっていた。
のちに実際に事故が起きたのは鹿児島県内で、フェアレディZをレンタルしたのが鹿児島市内の店舗だったことや車が廃車になったことも判明。Aさんは息子と連絡をとるため自衛隊に事実経過を通知したが、日高の息子は上官に対し「知らない」などと答えたという。知っていてとぼけたのか、本当に知らなかったのかのどちらかだが……。
■詐取金使って娘名義の高級車購入
2018年12月、日高は自分の娘を伴って鹿児島市内の高級車販売店を訪問。800万円を現金で支払い、車を購入する。ただし車の名義は娘。娘はその店でクレジットカードを作っていた。日高の名前では高級車が買えず、クレジットカードも作れなかったとみられている。
800万円の原資はAさんからだまし取ったカネ。Aさんは、2020年から、貸したカネを返すよう父親を説得して欲しいと頼みに行ったが、娘は「父親とは縁を切っている」とAさんを突き放していた。残念ながらそれは嘘。日高の娘は、“離婚”が偽装であることや、父親が詐欺行為をはたらいていることを知らされており、片棒を担いでいた格好だ。問題の高級車は、2021年3月に売却されたことが分かっている。

■「離婚」も嘘
日高の妻も、Aさんに嘘をついていた可能性がある。Aさんは2020年、日高の妻を訪ね、日高の詐欺行為について話している。「離婚は事実か?」と聞いたAさんに対し、返ってきたのは「自分は携帯を持っていないし、離婚後、元旦那とは全く関係がない」だった。しかし、2022年の時点で日高夫妻が離婚していなかったことや、日高と妻が携帯で連絡し合っていたことも分かっており、別居していた“夫”を庇っていた可能性が高い。
日高は、犯行を重ねる過程で家族を巻き込み、詐欺の片棒を担がせていた。常識が通用する人間でないことは確かで、他にも、犯罪まがいの行為で自分の居所が分からないよう工作していたことが明らかになっている。(以下、次稿)
(中願寺純則)















