参政党複数陣営、参院選収支報告で脱法行為|福岡・東京・神奈川・大阪、費用の大半「 無償提供」で支出先不明

7月の参議院選挙福岡選挙区で初当選した参政党・中田優子氏の陣営が県選挙管理委員会に提出した選挙運動費用収支報告書が、「脱法行為」と言わざるを得ない記載内容であることが分かった。公費負担分を除くすべての収入と支出が、参政党福岡県連合会からの「無償提供」となっており、候補者あての領収書は1枚もない。候補者個人の“たすき代”まで参政党県連が支払った形で、現段階における「無償提供」分の支出先はすべて不明。選挙収支の信憑性に疑義が生じる状況だ。東京、大阪、神奈川などで初当選した同党の候補者も「無償提供」を理由に支出先が記載されておらず、組織的に脱法的な選挙収支を行った可能性さえある。

■支出先不明 ― 前代未聞の収支報告

下に、中田陣営が県選管に提出した選挙運動費用収支報告書の表紙と収入及び支出に関する記載の一部を示す。

上掲の画像は収支報告書の一部に過ぎないが、ポスターやビラの作成費用といった公費負担分を除く全ての支出が、参政党福岡県支部連合会からの『無償提供』によって賄われていた。“たすき代”まで県連から無償提供されている。報告書記載の“たすき”は、中田氏本人が選挙期間中に使用していたものとみられる(*下の画像は中田氏と参政党県連のSNS投稿より)

候補者個人の“たすき”まで政党支部が無償提供するという異例の資金処理手法だが、この形だと支出先がどこなのかを確認することはできない。

公職選挙法は、選挙運動の収支について、すべての寄附及びその他の収入を備え付けの会計帳簿に記載し、それを選挙運動費用収支報告書に転記。選挙の執行日(投票日)から15日以内に当該選挙を所管する選挙管理委員会に「選挙資金収支報告書」を提出するよう規定している。記載すべき事項は以下の通りだ。
*寄附をした者の氏名、住所及び職業並びに寄附の金額及び年月日
*選挙運動に関するすべての支出
*支出を受けた者の氏名、住所及び職業並びに支出の目的、金額及び年月日

これらの規定は、選挙の公平性・透明性を担保するためだと解される。しかし、参政党候補者らの選挙収支のように「党からの無償提供」という形でいったん支出先を隠す形になれば、選挙収支の実態確認を次の「政治資金収支報告書」の公開まで待たねばならないことになる。

政治資金規正法に従ってその年の政治資金収支報告書が公開されるのは、翌年10月か11月。つまり、今年7月に当選した参政党参院議員の選挙で支出された費用の支出先は、来年秋まで分からないということだ。選挙収支の実態が長期間伏せられることで、公選法の趣旨を逸脱する格好になるのは言うまでもない。脱法行為ということだ。

調べたところ、参政党公認で当選した東京選挙区の「さや」こと塩入清香参院議員、神奈川選挙区の初鹿野裕樹参院議員。大阪選挙区の宮出千彗参院議員の選挙収支も、公費負担分以外は大半が「党からの無償提供」で処理されていた。(*下の画像参照)

昨年の衆議院議員選挙でも複数の参政党候補者が選挙収支を「無償提供」で処理しており、党本部主導で組織的な脱法行為が行われた可能性がある。

政治資金に詳しい市民オンブズマン福岡の児嶋研二代表幹事は、次のように話している。

「選挙支出のほとんどを無償提供で処理するという参政党候補者のやり方だと、住民はその支出の実態が何も分からないということになります。これは、選挙の透明性を図ろうとする公選法の趣旨を無視した脱法行為ではないでしょうか。政治家を目指す人たちがこのようなことをするというのは許されないと思います」

参政党本部及び党福岡県連に取材して見解を求めようとしたところ、「広報」の担当者に連絡をするようにとの指示。同党の不可解な取材対応マニュアルに従って取材申請したが、出稿までに回答はなかった。

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