維新・吉村知事が万博入場者2,820万人にこだわる理由

《このままのペースでいけば、2,800万人ですね。ご来場、ありがとうございます》とXに投稿したのは、大阪府の吉村洋文知事。博覧会協会の副理事でもある吉村知事は、大阪・関西万博の閉幕が1013日と迫る中、観客動員数が2,500万人を突破し、このペースでいけば目標の2,820万人に届くという計算となるため嬉しくて投稿したようだ。しかし、これまで本サイトでも指摘している通り、万博の観客数は、入場券を買った人に加えて会場のスタッフやマスコミ関係者に交付される「AD証」というパスを使って業務に従事する人――つまり観客ではない人まで含んでいる水増しの数字なのだ。

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AD証による入場は1日あたり約2万人平均。博覧会協会の発表によると、9月21日から27日までの1週間の合計観客数が1692,803人うちAD証の入場は146,569人だったという。万博が開幕した413日から927日までの合計は2,5136,185人。2,500万人は超えている。しかし、博覧会協会のホームページには《うちAD証入場者数 3063,468人》とある。10%以上がAD証で入場している計算だ。

あまりの“サバ読み”に大阪府幹部がこう打ち明ける。

「運営費の黒字化のボーダーラインが2,200万人で、それは超えましたのでホッとしています。ただ、想定が2,820万人で、残りの日数からは届かない可能性もある。吉村知事はAD証も含めて想定を超えそうだとXにポストしているので『それでいいのかな』という声が府庁の中でもあがっています」

国際博覧会事務局に提出された書類には「2,820万人はチケット入場者」と明記されている。伊東良孝国際博覧会担当大臣も記者会見で知事と同様の見解を示しているが、いずれもまやかしに過ぎない。

日あたりの万博の最多観客数は9月22日の246,819人。万博のチケットはすでに完売状態で、当日券も販売中止になった。現在は、まだ未使用のチケットを持っている人が当日券に引き換えできるだけ。未使用のチケットを持っていても入場ができないため、「死に券」というワードがSNSで大炎上している。

万博の東ゲート前、当日券の窓口は朝始発の地下鉄が到着していないにもかかわらず、行列ができている。始発で来たという、大阪府内の男性に聞くと、驚きの表情で「始発が最寄りの夢洲駅に到着して猛ダッシュで列に加わった。その時は100人以上並んでいて唖然としました。猛暑や雨の天気予報があって、ずっと行けなかった。それに未使用で払い戻しもないので、行列してでも、行くしかないと思ってきたのですが……」と話す。

その後も当日券の行列は伸びるばかり。9時前になると警備員が「これ以上、並べる場所がない。並んでも当日券が完売しているかもしれない」と申し訳なさそうに説明していた。

吉村知事は前出の男性が言っていたように未使用のチケットについて「払い戻しは難しい」というばかり。当日券との交換も1日あたり数百枚程度。20万人以上が押しかけていることから見ると、すずめの涙ほどにしかならない。ある維新の国会議員が次のように事情を語る。

「府庁内でも不安視されているにもかかわらず、なぜ吉村知事が2,820万人にこだわるのかといえば、万博を成功させることでの日本維新の会の復活です。このままいけば、自民党総裁選後、連立を組むのはうち(維新)でしょう。その手土産に万博成功の証明となる2,820万人をどうしても達成したい。AD証が含まれていようがいまいが、死に券で騒がれようが、そんなことは関係ないという雰囲気です」

維新は、自民党との連立に備えて「副首都構想」や社会保険料負担軽減を含む「社会制度改革」の実現を交渉条件とするように準備している。前出の維新議員の解説はこうだ。

「党内では、大阪選出の議員を中心にもう連立入りしたかのような話が出始めました。『入閣は〇〇だ』『〇〇大臣がまわってくる』などとすっかり与党気分です。ただ、与党入りした時点で、確実に離党者がでて党の悪口言いはじめるでしょう。連立入りの話は1010日前後に煮詰まってくる可能性が高く、そうなると万博の閉幕が13日なので、2,820万人を達成すれば維新のお家騒動を打ち消せる。党幹部はそういう思惑を抱いているんじゃないですかね」

2,200万人突破で黒字になるのは運営費だけ。パビリオンの会場建設費、地下鉄や道路整備などインフラを含めた整備費などは、そこに含まれていない。万博の費用は、国と大阪府・大阪市、経済界が3等分する仕組みで、どれだけ観客が来ても、税金投入分は国民負担となる。それを維新は自分たちの「大手柄」にしようというのだ。税金で開催した万博を、落ち込む党勢の拡大に利用するという吉村知事と維新。連立入りが党勢回復の起爆剤になるとは思えない。

 

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