北海道新聞で内勤記者の手取り大幅減|現場の申し入れ受け、説明会開催へ

本年11月に創刊80周年を迎えるブロック紙・北海道新聞(札幌市中央区、宮口宏夫社長)でこの夏、紙面制作にあたる内勤社員の手取り収入が大幅に減り、編集現場に動揺が拡がっていることが伝わった。9月中旬には30人ほどの有志が所属長に請願書を提出、待遇の改善を求めたが、同下旬時点で状況は変わっていないという。

◇   ◇   ◇

関係者によれば、道新の内勤社員らが待遇の悪化を把握したのは本年8月。同下旬支給ぶんの残業代がそれまでに較べて大幅にカットされ、支給総額が平均して1~2割ほど減っていたという。

きっかけは、前月からの機構改革。道新は7月1日付で編集局内の編集本部と校閲部を新設の「編集センター」に統合するとともに、いわゆる「二版制」を廃止して紙面制作の作業時間を短縮したところだった。内勤社員の一人は、次のような経緯を話す。
「これまでは『早版』と『遅版』を組んでいたのが、作る版が1つになったのでデータベースへの入力作業などが加わりました。それでも以前よりは早く退勤できるようになったんですが、それでこれほど残業代が減ることになるなんて、事前に充分な説明を受けていません。社員によっては家のローンを抱えていたり、お子さんの進学を控えていたりする人もいて、急に家計が圧迫されるのは死活問題。多い人では年間で100万円以上の収入減が見込まれ、生活の不安から現場にはすっかり活気がなくなりました」

唐突な人件費圧縮の背景には、何があるのか。道新は前期の決算で17期ぶりに増収増益を果たしたが、先の社員に言わせればそれは「保有していたNTTドコモ株を売りに出したのと、東京五輪マラソンの運営受託があったから」だという。とりわけ後者については、本年4月に宮口宏夫社長自身が労働組合との団体交渉で決算への影響を説明していた。労組が組合員に配布した団交の記録には、こうある。

わが社は五輪のマラソン・競歩札幌開催の運営を受託することで、まとまった利益を上げることができた。これは113期(前期)の決算にも大きく貢献している

今期はこうした大きな催しに匹敵するほどの事業収入の見込みがないとみられ、加えて2024年に完成予定の新社屋(札幌市中央区)建設が着工したばかりという状況。しわ寄せを受ける形となった内勤社員としては、士気の低下もやむを得ない心境のようだ。9月中旬には若手社員らが待遇改善の申し入れを内部で提案、賛同する約30人の連名で所属長に請願書を提出するに到った。

一方、7月の機構改革と時期を同じくして新執行部が発足した道新労働組合は、今回の問題には静観の構え。同労組はすでに会社との団交で時短を含む損益改善計画の提案に合意しているといい、執行部の1人は筆者の取材に次のような事情を話した。

「(収入減を訴える)声は届いていますが、労働時間が短縮される動き自体はよいことなので、組合として何かアクションを起こすことは考えていません。まずは現場で話し合っていただくしかないのではないかと」

先の請願を受けた会社は急遽、編集センター内で説明会を設けることを決め、今月28日午後の開催予定を当事者らに通知した。現場では9月支給ぶんの手当も引き続き大幅にカットされていたことがわかっており、説明会参加を検討しているある社員は「このまま待遇が変わらなければ離職も考えざるを得ない」と話す。

本社内の会議室で開かれる説明会には最大で40人ほどが参加するとみられており、議論の行方次第では内勤社員らの会社へのさらなる不信を招くことになりそうだ。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

 

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