昨年2月に行われた鹿児島県指宿市の市長選挙に立候補して落選した米倉由晋氏(43)の陣営が、同選挙に際し、市の選挙管理委員会に「確認団体」に関する虚偽の申請を行い、違法な活動を行っていた疑いがあることが明らかとなった。
経歴詐称に運動員買収、さらには違法ポスター・のぼり旗の大量掲示と、悪質なルール違反を繰り返す米倉氏とその陣営――。政治を目指す人物の、「質」が問われる状況だ。
■「確認団体申請書」に虚偽の記載
「確認団体」とは、選挙期間中に当該選挙区において所定の条件を満たした上で一定の政治活動が許される政党または政治団体のこと。知事選や市長選のほか参院選(所属候補10名以上が要件)、地方自治体の議員選挙(所属候補3名以上が要件)で適用され、立候補届出時に必要な書類を提出すると、選挙運動用自動車(選挙カー)とは別に街頭宣伝用車両の使用や、候補者名を記載しない形での政策ビラの頒布、政談演説会の開催などが許される。米倉陣営の場合は、「わくわく指宿を目指す会」が確認団体となっていた。
市選管への虚偽申請が発覚したきっかけを作ったのは、9日投開票が行われる鹿児島県議会議員選挙に立候補した米倉氏の陣営が市内で大量に掲示していた違法ポスターやのぼり旗。作成団体が「わくわく指宿を目指す会」となっており、ハンターの調べで無届け団体であることが分かっていた(既報)。
昨年の市長選で、なぜか「わくわく指宿を目指す会」が確認団体となっていたことから、ハンターが市選管に「政治団体確認申請書」や「確認書」、「政党その他の政治団体の支援候補者となることの同意書」及び確認にあたっての決裁文書などを開示請求していた。
開示された文書を確認したところ、法定の申請書類は残っていたものの、平成31年2月に総務省が全国の自治体に通知した『地方選挙における政党その他の政治団体の確認等に関する取扱いについて』に規定された「団体の綱領」「規約」「役員名簿」「最近の予算書」「政治団体届出書の写し」はいずれもなかった。
下は同陣営が選管に提出した確認申請書だが、《政治団体名》の欄に「わくわく指宿を目指す会」と記入しており、確信犯的な虚偽記載だったことが分かる。
■不可解な投開票日前日の申請
重ねて述べるが、昨年の市長選の時、「わくわく指宿を目指す会」は政治団体ではなかった。その目指す会が、なぜ確認団体になったのか――?
この点について指宿市選管に事情を聞いたところ、「とにかく市長選への対応でドタバタする中、急に申請書類を持ってこられた。確認を怠ったことは申し訳ないが、信用して確認書をお出しした」と困惑を隠さない。
たしかに、米倉陣営の確認申請は不自然だ。もう一度前掲の確認申請書をみると、申請日は「令和2年2月5日」。これは指宿市長選投開票日(2月6日)の前日、つまり、選挙戦の最終日なのだ。目指す会が何の活動もしていなければ、わざわざ駆け込み申請をする必要はない。法的に確認団体にしか許されない活動を行ったことで、辻褄合わせに慌てて動いたという見立ても成り立つ。
いかなる理由があろうと、米倉陣営が虚偽の申請を行ったのは動かしがたい事実だ。確認団体としての活動のある・なしにかかわらず、違法性が問われる事態であることに変わりはない。事情を知った指宿市民の間から、厳しい批判の声が上がりそうだ。