置き去りにされた「いじめ被害者」|鹿児島市教育界と政治家たちへの警鐘

鹿児島市立伊敷中で2019年に起きた「いじめの重大事態」とみられる事案が、学校と市教委によって隠蔽されていたことを報じたのは昨年5月7日。それ以後、2例目3例目の同じようなケースについても報じ、学校や教育委員会を厳しく批判してきた。

一方、いじめの実態を隠蔽していたことを暴かれた鹿児島市教委は、『いじめ防止対策推進法』に基づき「第三者委員会」(正式名称:鹿児島市いじめ問題等調査委員会)を設置。個別の事案に関する調査を続けてきたが、1年以上経った現在も進展のないまま、だらだらと会議の回数だけを重ねている。

市教委も第三者委員会も市議会も、そして鹿児島市長も、いじめの被害を受けて苦しんできた子供やその保護者に正面から向き合おうとする姿勢すら見せていないというのが現状――。この1年間、鹿児島市は何をやってきたのか!

◇   ◇   ◇

市教委に確認したところ、第三者委員会の第1回会議は昨年7月、以後今年5月末までに52回の会議を重ねてきたという。これだけの回数を重ねながら、ハンターが最初に報じた伊敷中の事案については「重大事態」の認定さえ出ておらず、同事案の報道がきっかけとなって発覚した2例目、3例目の「重大事態」についても、調査は終わっていない。

市教委や第三者委員会が当初の3件でもたつくうち、いじめの重大事態が次から次に報告される事態に発展。市教委は現在11件の重大事態を抱えており、第三者委員会の委員は9名増員され15名体制となっている。

この間、遅々として進まぬ調査や、説明を二転三転させる市教委側の動きが信頼できないとして、1例目だった伊敷中の被害生徒の保護者が調査の継続を辞退。いじめによって多大なダメージを受けた子供や保護者が、今度は鹿児島の教育界から二次被害を受けた格好だ。

伊敷中のいじめを隠蔽した上「重大事態」を認めようとしない鹿児島市教育界に対し、強い不信感を抱いた保護者が、結論を待たずに“三くだり半”を突き付けたのは当然だろう。

先週、2例目、3例目の保護者にも話を聞いたが、いずれも「市教委や第三者委員会の説明は信用できない」「(文部科学省が策定した)『いじめの重大事態に関する調査のガイドライン』はほとんど守られておらず、もう市教委や第三者委員会と話したくない」、「こんなことなら、重大事態を申し出なければよかった」と疲れ切った様子。子供の将来を考え、勇気を出して重大事態の申し出をしたことで、かえって傷口を広げる結果を招いてしまった格好だ。3例とも、いじめた側の子供や親から正式な謝罪はなく、何のための「いじめ防止対策推進法」なのか、分からない状況となっている。

◇   ◇   ◇

2例目以降の事例を、あっさり「重大事態」と認めながら、1例目の伊敷中のケースを、いまだに「重大事態」として認めようとしない当時の校長や市教委、第三者委員会の姿勢には怒りを覚える。なぜこのような理不尽がまかり通っているのかといえば、関係者の誰かが、「あれは重大事態ではない」と主張しているからに他ならない。

令和元年に起きたいじめを隠蔽した伊敷中の当時の校長は、鹿児島県教育界のナンバー2である教育次長から同校校長に就任した寺園伸二氏。昨年、鹿児島市谷山北公民館の館長を務めていた同氏に電話取材したが、「隠蔽」についての反省は一切なく、「市教委に聞いて下さい」を繰り返す無責任な姿勢には開いた口が塞がらなかった。以下、その時の寺園元校長との一問一答を再掲しておきたい。

――以前、伊敷中の校長だったんですよね?そのことで一点お伺いしたいことがありまして。当時令和元年のことなんですけども、いじめが、2年生のクラスでいじめがあったと。ご記憶ございますか?
寺園元校長:あー、えっとですね、それは、私が現職の頃のことですので、個人情報に関わることなので……。

――いや、いじめが原因で転校した方がいらっしゃったというご記憶がありますか、という確認です。
寺園元校長:あっ、転校した子はおります。

――ですよね。
寺園元校長:その、まあ、あの、あのーいろんな学校でのトラブルがあってですね、ご本人のほう、お母さん方のほうからもいじめられてるということがあって、我々も、まあ、学年上げて努力をしたところなんですけど、最終的にお母様が転校させたいということでしたので、転校してしまうことになって、我々も誠に申し訳なかったという記憶はあります。

――ああ、なるほど。
寺園元校長:はい。

――●●さんのことですよ。
寺園元校長:そうですね、はい。

――それで?
寺園元校長:よく覚えております。

――そのことは市教委の方にはご報告されてますよね。
寺園元校長:はい、当然連絡は取っておりますので。

――ですね。
寺園元校長:あのー、ええっと、何回も来ていただいて、実際に。

――はい?
寺園元校長:あのー、学級に来ていないということだったりするものですから、ほいで、担任とのこととかもあったりだったから、あの、市教委方からも来ていただいて、あのー、まあ、見ていただいて、様子もですね、でー、連携して取り組んで来たところなんですけど。

――市教委と?
寺園元校長:はい、そうです、そうです。力及ばず……。

――じゃあ市教委は全部知っていたわけですね。
寺園元校長:力及ばず……

――力及ばず?
寺園元校長:私どもとしても……。

――その頃のことですが、オアシス学級というのがありましたよね?
寺園元校長:そうです、はい。

――今はないそうですが、あなたが校長のときに無くされたんですか?
寺園元校長:いや、自分が校長の時まではありましたが、その後は、もう、これはですね、あの、定数を貰って来ているのではなくて、我々の学校独自でそういう子供達、あのー、不登校の子供達も、あのやっぱり増えてきている状況なので、みんなの時間を少しずつ割いて、ほいで、そういう学級を学校として、あのー、みんなのまあ、教員の、申し訳ないけど、その働き方改革もあるんだけど。

――え、何ですか?教員の?
寺園元校長:働き方改革のこともあるけれども、まあみんなの善意で少しずつ時間を取ってそうやって、えー、ひとつそういう居場所を学校の中に……。

――居場所ですね。要するにそこで自習してる分にはいじめも起こらないということ?
寺園元校長:うん。

――なるほど。
寺園元校長:我々も、私もしょっちゅう顔を出してましたんで。

――働き方改革と何の関係があるんですかね?
寺園元校長:いや、定数が来れば、そこに人を常駐、教員を常駐できますけど、それができない以上はみんなはそれぞれの授業があって仕事があるんだけども、それにプラスそこに顔を出すっていうような作業が出てきますので。

――なるほど。で、この●●さんのお嬢さんのいらっしゃったクラスの先生については、ご記憶ございます?結構いろいろ新聞に出たり、有名な先生だったとって聞いておりますが?
寺園元校長:はい、はい、そうですよ。

――その先生のクラスで、当時オアシス教室に通っていたお子さんが3人いるそうなんですけど。他に5人不登校だったと。8人いない日が結構あったと
寺園元校長:あー、そんな日もあったかもしれんですね。

――かもしれない?
寺園元校長:はい。元々の、あの、毎日っていうことは、常時っていうことはないでしょうけど、元々小学校のときから不登校やった子とかもおりますのでね。

――それは半ば学級崩壊に近い状態と私どもは判断してるんですけども。
寺園元校長:私は決してそうだとは思っておりません。

――それは、どうしてですか?
寺園元校長:学級崩壊って言うのは、もう学級がとにかく荒れて、秩序がない状態っていうことであれば、そういうのには全く当らないですね。そのクラスは、そのクラスの残っている子供たちは、もう一生懸命授業も受けて、まあ、学級のこともやっておりましたので、ですね。私はそんな、あのクラスを学級崩壊って言うのは、他の学級の子達に失礼だと思います。とても一生懸命やっておりましたので。

――失礼?その、8人の子供達がいないクラスはまともなんですか?小学校から不登校だから、中学校では関係ないとおっしゃるわけ?
寺園元校長:いや、そうではないですけど。

――でも、そういう言い方されましたよね、今。
寺園元校長:まあ、そこまでにしましょうか。個人情報だから、

――いやいや、私はいじめを受けた当事者である●●さんにも話を聞いた上であなたに取材してる。話されても問題ない。あなたは、答える義務があるでしょ。
寺園元校長:もとの話は市教委に聞いてください。

――最後に一点だけおおうかがいします。さっき、報告を上げたとおっしゃいましたよね?
寺園元校長:はい。

――これはあなたの責任で報告を上げた?
寺園元校長:連携を取っているということを言っております。

――いやいや、報告を上げたとおっしゃったから。
寺園元校長:その報告はなんの報告ですか?

――いじめの報告ですよ。ちゃんと書いて出さないといけないでしょう?丸付けたりして。
寺園元校長:そういう連携を取ってやっておりますので。

――大変申し訳ないけど、市教委にも確認取っている話を聞いているだけです。
寺園元校長:ああ、じゃあもう市教委と話をしていただければ結構です。

――「環境を変え新たな気持ちで頑張っている」と書いておられる。この●●さんのことをですよ。「環境を変え新たな気持ちで頑張っている」と。これは転校したからこうなったっていうことですよね?
寺園元校長:もうあとは、個人情報のことなので、お話することはありません。

――いやいやいや、個人情報ではないです。あなたの責任のこと。あなたは、いじめの状況のところで「いじめは解消している」に丸を付けられてますけど、これはどうしてですか?
寺園元校長:……。あとは、教育委員会とお話してください。

――「他校への転学」っていうのに丸を付けないで。あなたは隠蔽しましたね?
寺園元校長:……。

――隠蔽でしょう?
寺園元校長:……。違います。

――保身ですか、あなたの。いろいろおっしゃっているけれど、保身じゃないですか?
寺園元校長:いやいや。

――いじめを隠蔽したじゃないですか。なんで県教委に報告が上がってないんですか?県教委に聞いたら、重大事案だって言ってますよ。あなた県教委で次長までされたんでしょう?個人情報だからって逃げるんですか?あなたは現在も公務員だぞ。
寺園元校長:あなたはなぜそんな……。

――新型コロナウイルスの間だから、遠慮して電話でお話してますけどもね。教育者であるならば、一人の少女がですね……。
寺園元校長:おたくはどうしてそんな言い方をされるんですか?

――だってそうでしょ。●●さんは、いじめを受けて医療機関に通って、治療まで当時受けてらっしゃいますよ。何度もです。あなた、そのこともご存じだったんでしょ。さっきから聞いていると、他人事みたいですよね。自分たちは頑張った。働き方改革。学級崩壊じゃない。しまいに都合が悪くなると、市教委に聞いてくれ、個人情報だ――。あなた本当に教育者ですか?申し訳なかったっていうのは口だけですか?
寺園元校長:……。

――あなたが責任持って上げた報告書には、なんで転校って書いてないんですか?書いてないですよね?「他校への転学」としなければいけないところを、「いじめが解消している」となっていますよ。この報告は嘘でしょ?虚偽でしょ?言い分がありますか、あなた。
園元校長:……。

――普通に話してたつもりですけど、あなたのおっしゃっていることはただの保身ですよね。
寺園元校長:あなたは、それで普通に話しているつもりなんですか?

――そうですよ。普通に話しているつもりですよ。あなた、不誠実ですよ。
寺園元校長:あなたは、私に恫喝しているようにしか聞こえないんですけどね。

――何が恫喝ですか。あなたは大変不誠実ですよ。不誠実じゃないですか。だって途中から都合が悪くなるとね、個人情報だから市教委と話してくださいと。
寺園元校長:じゃあ、まあ、そうしてください。

――いや、あなたがそう言ったからですよ。「じゃあ」じゃないんですよ。またそういうこと言う。卑怯ですね、あなた。
寺園元校長:じゃあ、よろしくお願いします。

――なにもよろしくお願いされませんよ。
寺園元校長:あと、教育委員会とお話していただければ結構ですから。

――私は何もあなたによろしくお願いされる覚えはありませんよ。追及しているんですよ、あなたを。
寺園元校長:どうぞ。

――よくそれであなたは公務員が務まるね。
寺園元校長:私の方も、仕事があるんで。うん。よろしくお願いしますね。教育委員会と話をしてください。

◇   ◇   ◇

伊敷中のいじめが発覚したのをきっかけに、相次いで判明した2例目と3例目のいじめ。学校や市教委は、いずれのケースでも「いじめは解消」という虚偽の記録を残し、“終わった話”として処理していた。極めて悪質な隠蔽だが、伊敷中の元校長も含めて、責任を取った大人は一人もいない。

この際、鹿児島市議会の議員たちや市長にも、一言申し上げておきたい。いじめの被害を受けた子供たちに寄り添い、問題解決に向けて動いてきた政治家が、いったい何人いたのか?市議会でこの問題を取り上げてきたのは、一握りの市議だけ。重大事態の最終報告を受ける立場の下鶴隆央市長にも積極的な姿勢は見られなかった。

市教委や第三者委員会が機能しない中、政治家として、いじめの被害を受け「転校」を余儀なくされた子供たちに声をかけてやろうとは思わなかったのか――。苦しんだ子供たちや保護者に手を差し伸べようともしないのなら、選挙の時だけ「子育て」だの「少子化」だのと叫ばないことだ。口だけの政治家を、ハンターは容認しない。

(中願寺純隆)

 

 

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