日本維新の会・馬場新代表体制の前途多難

日本維新の会は、馬場信幸衆院議員が新代表となり、これまで、橋下徹氏と並ぶ「創立者」だった松井一郎大阪市長が仕切る体制が大きく変わることになった。

地域政党「大阪維新の会」の代表である吉村洋文府知事が、馬場氏と並んで共同代表に就任し、松井氏も顧問として残るという。同党の今後はどうなるのか――。

◇   ◇   ◇

「国会議員団政調会長」という意味不明な役職を廃止して、「政調会長」に一本化。9月21日には、旧統一教会の問題など6項目について立憲民主党と「共闘」することが、発表された。

野党第1党と第2党の「共闘」は臨時国会だけの限定的なものではあるが、自公政権との対立軸が明確になるため、一定の評価を与えることができる。だが、これまで対立してきた両者。早くも立民の泉健太代表が「松井氏は引退間近で、老害」と話すと、松井氏はこれまでことあるごとに立民を批判してきた経緯もあり「(泉代表は)社会人、人として修行積んだ方がいい。存在感もないから目立とうとそういう発言をしている」と過激に反撃。吉村知事も「泉代表は器が小さいな」と参戦し、「共闘」は波乱の船出となった。

不思議なのは、「立民は日本に必要がない政党だ」と明確に述べてきた馬場氏の姿勢だ。今回の「共闘」は誰が見ても意外に映る。立民と維新、双方から不満の声があがる。

「維新スピリッツがようやく、大阪以外でも根付きつつある。ここで立民なんかと一緒にやったら、ダメになる」と、ある維新の国会議員はぼやく。

一方、立民の衆議院議員はこう憤る。
「必要がないとまで維新から言われて、なんで共闘なんだ。現場レベルで旧統一教会だけは一緒にやりましょうという程度で十分だ。維新のような傲慢な党と同じようにされたくない」

維新の幹部によれば、今回の「共闘」は馬場氏の思惑が大きいという。

『8番キャッチャー、縁の下の力持ち』と自らを称していた馬場氏が、トップの代表の座に躍り出た。これまで幹事長、共同代表としての堅実な手腕が評価されてはいたが、代表としては未知数。なんらかの成果が必要だと考えたのかもしれない。前出の維新幹部はこう突き放す。
「提案は立民側からあり、維新が限定してそこに乗った。選挙協力などはまったくない」

こなった背景に、来年春での引退を表明し、維新の党員も辞めるという松井氏と新代表になった馬場氏の間に軋轢があるのではないかという。

維新の代表選では、松井氏は事実上の後継指名をする形で馬場氏当選に向けて動いた。だが、先の維新の幹部は、次のように内情を打ち明ける。
「実は松井氏と馬場氏には、すきま風が吹いている。松井氏が去れば馬場氏がトップで維新の権力を掌握できる。馬場氏は松井氏が煙たくて仕方がない。代表選で、松井氏が後継指名しないとしていたが、急きょ馬場支持を打ち出した。対抗馬になる予定だった東徹参議院議員が有力視されていたので、もし馬場氏が負ければ、自分の立場が苦しくなるとして恩を売っただけ。松井氏は代表から身を引いたことで、党内では影が薄くなりつつある。松井氏は以前から『おい馬場』と呼び捨てだったが、最近は『馬場ちゃん』。スッキリしない」

維新は12月、来年の統一地方選で実施される大阪市長選について、松井氏の後継候補を決める予定だ。松井氏の求心力はますます低下し「馬場カラー」に染まっていく可能性が高い。ただしこれまでの維新は、故・石原慎太郎氏率いる「太陽の党」と一緒になったかと思えば、すぐに分裂。次はみんなの党から割れた「結いの党」と合流するが、政党助成金などでさんざんもめた挙句、再び分裂し、今の日本維新の会となった。

「党内では橋下さんが率いた時代を回顧する勢力が水面下で増えている。調整型の馬場氏が立民もしくは自公政権との関係を深めようとすると、そんな勢力が台頭して、また党内は混乱するだろう。人気者の吉村府知事も、大阪府知事選への正式な立候補表明はまだない。吉村知事は性格的に外向けのパフォーマンスは大好きだが、内向きの話である党内の混乱の火消しなどという仕事をとても嫌う。代表選で敗れた足立康史衆議院議員も馬場氏には一定の距離を置いている。また、東京組と言われる音喜多駿政調会長もつかず離れずで、どう動くかよめない」(前出の維新議員)

加えて、馬場氏には旧統一教会との関係という「爆弾」もある。今回の「共闘」は、“立民からの旧統一教会に関する追及を自民党だけに向かわせ、馬場氏ら維新に絡む疑惑を回避するための策だ”、との「魂胆」も指摘されている。まもなくはじまる臨時国会。ボロボロになりつつある岸田政権だが、まったく倒れそうな気配がない中で、野党はどう戦うのかだろうか。

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