現実味帯びる衆参補選「2連敗」

10月22日に投開票となるのが、参院徳島・高知選挙区と衆院長崎4区の2つの補欠選挙。「あまりにキツイ情勢で、岸田首相も、茂木幹事長も真っ青になっている」と話すのは自民党の大臣経験者。岸田文雄政権の支持率低下もあって、与党内は暗いムードだという。

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参院徳島・高知は野党系無所属の広田一氏が、自民党の元高知県議西内健氏をリードする展開。最新の情勢調査では広田氏が50.8ポイント、西内氏が34.7ポイントと大きな差がついている。

残るは、北村誠吾元地方創生相が死去したことに伴う衆院長崎4区の補選。自民党は、金子原二郎元農相の息子、金子容三氏を擁立。立憲民主党は、前回の衆院選挙で北村氏を相手に接戦を展開し、敗れながらも比例復活となった末次精一氏が雪辱を狙う。

直近で行われた情勢調査では金子氏が45ポイントで、末次氏が42ポイントと3ポイントした差がない。

前回調査では金子氏が46ポイント、末次氏が37ポイントと9ポイント差だったので、猛追されていることがわかる。

「長崎4区は岸田派の牙城なので、どうしても負けるわけにはいかない。これは岸田派(宏池会)の選挙、総理のメンツがかかっている」と長崎4区の集会で訴えたのは、岸田派のナンバー2・林芳正前外相。北村氏も、金子氏の父、原二郎氏も、さらには祖父の岩三氏も宏池会所属だった。

「しかし」、と岸田派の国会議員が次のように語る。
「補選で2敗となれば、政権崩壊にもつながりかねない。ただ苦戦の背景にあるのは、は金子派と北村派の対立。身内同士のいがみ合いなので、いくら岸田派の幹部が行ったところで、地元で解決してもらわないとどうにもなりません」

北村氏は亡くなるの前に、側近たちに山下博史県議を後継者にと言い残した。自民党の長崎県連も山下氏を党本部に上申。しかし、最後は10増10減で小選挙区が1つ減ることを前提に、新長崎3区の支部長だった金子氏が候補者になったという経緯がある。

金子氏は融和を図ろうと「北村先生の遺志を継いで頑張ります」と声を張り上げるが、現実は厳しいといえそうだ。

10月15日には岸田首相自ら長崎入りして金子氏の支援を要請。北村氏の追悼式にも参列して、取り込みを図った。しかし、北村氏の陣営からは不満が漏れる。

「長崎県連が山下でと上申したのに、なぜ金子が割り込んでくるのか。こんなおかしなことはない。金子が、『北村先生の遺志』なんていうたびに、こちらの陣営は離れていく。金子が勝つくらいなら末次の方がましという、北村支援者も大勢います」(北村氏を支持してきた元後援会幹部)

もう一つ、金子氏が支援を伸ばせない理由がるあという。祖父、父、金子氏と3代続く「世襲」の問題だ。前出の岸田派国会議員はこう話す。
「岸田総理の党役員人事で、小渕優子選対委員長を起用した。しかし、政治とカネのスキャンダルや世襲で逆風となったのは周知のとおり。それは長崎も同じで『金子家が長崎をおもちゃにしている』『長崎は金子一族のカネ儲けに使われる』と金子候補自身というより金子家への不満が表面化している状況。岸田派の議員はもちろん、秘書たちまで投入して必死でやっているが、『助けてください』と泣き落としを語るので必死です」

とりわけ原二郎氏は衆議院議員5期15年、長崎県知事3期12年、参議院議員2期12年と30年近く、長崎で権力をふるってきた。国策事業である諫早湾干拓では、造成した農地に金子家の親族企業が入植するなど、疑惑も招いた。

県知事時代には、長崎県庁の「裏金作り」が発覚。原二郎氏の政治団体は、裏金作りに協力していた企業から献金を受けていた。

「2011年に原二郎知事の疑惑で長崎県政は大揺れでした。県議会では100条委員会まで設置され、原二郎氏は証人として出てくるように求められたがドタキャン。原二郎にはそういうブラックな一面がついてまわり、今もって、長崎県では悪評ばかりです。おまけに、北村の弔い合戦なのに、それ無視して自分の息子を押し込んだ。今ごろになって北村さんの親族を集会などに引っ張り出そうと金子は必死ですが、北村家側はまったく興味を示さないので頭を抱えているようだ」(北村氏の元後援会幹部)

一方、末次氏を支援する立憲民主党幹部は、次のように分析する。
「日ごとに勢いづいてきた。金子さんの後ろ姿が十分見えている。こちらが頑張っていることもあるが、それ以上に金子氏自身の世襲、金子一族の政治とカネ、政治の私物化といった問題が、ここにきて有権者に響いてきたようにも感じられます。それに、岸田政権の支持率の下落がさらに輪をかけている」

春の統一地方選と合わせて行われた補選では4勝1敗となんとかしのいだ岸田首相。しかし“補選2連敗”となれば「解散総選挙は先延ばしどころか、来年の自民党総裁選までにできないんじゃないか。そうなると岸田総理の再選は難しくなる」と自民党の大臣経験者は懸念を示す。

「増税メガネ」との最悪の異名がSNSで拡散される岸田首相。「2連敗メガネ」という異名が追加されるのか?

 

 

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