西村康稔“圧力”大臣 地元での評判

新型コロナウイルス対策で酒類の提供禁止の要請に応じない飲食店に取引金融機関から「圧力」をかけてもらうようにとの方針を打ち出し、猛反発を受けた西村康稔経済再生担当相。酒の卸売業者による供給停止や、新型コロナウイルス対策の支援金を受給されないようにするなど、次々に「圧力」の実態が明らかとなり、野党から辞任要求される事態となった。

■地元明石で言い訳演説

その西村氏は、7月18日に投開票された兵庫県知事選挙の期間中、自民党、日本維新の会が推薦して初当選した元総務省官僚・斎藤元彦氏を応援するため自身の地元である兵庫県明石市の街頭でマイクを握っていた。

11日の朝のこと。司会者から「滅多に帰ってこない、西村大臣です」と紹介され、大きく手を振る西村氏。だが、地元市民の反応はイマイチで、それを悟ったのかいきなり“言い訳”を始めた。

冒頭一言だけ、なんとしてもコロナを抑えたい、そしてできるだけ多くの皆さんに協力をいただ、いただきたい、そんな強い思いから、発言したことではあったんですけれども、まあ多くの皆さんにご心配、あるいは混乱、そして特に飲食店の皆さんにご不安を与えてしまったことを私の本意ではないんですけども、えっ、そういう事態になってしまいましたので、反省をしているところであります。

協力いただけるお店には、しっかりと協力金を早くお渡しするということで、先渡しの仕組みを導入することにしました。なんとか協力をいただきたい。そして協力いただけないお店にも丁寧に説明をして、できるだけ協力いただいて、もう社会全体の皆さんのひとりひとりのご協力でなんとかコロナを抑えたい。ワクチン接種を着実に進めていきますので、なんとか今回の緊急事態、そして兵庫県はまん延防止が解除になりますが、なんとかこれね、感染を抑えていきたい、最後にしたい、その思いで対応していきたい、思います。しっかりと苦しい事業者のみなさんを支援しながら、協力を頂いて、コロナ、抑えていく、そして次の経済回復、新しい時代を作っていければ、いう風に考えております。

言い訳に続いて手柄話、そして軽薄なお約束の言葉――懸命に訴えるが、周囲の市民には届いていない感じだ。シラケたムードが漂うなか、演説が終わり、西村氏が聴衆の間をグータッチで駆け回る。

聴衆が握っているのは、演説前に西村氏の関係者が配布していたペーパー。なんと、厚生労働省作成の新型コロナウイルス感染拡大防止のチラシだった。そこには「目指そうゼロ密」として、三密の回避をしっかり告知している。(*下が演説会場で配られていたチラシ

距離も取らず、三密を自ら生み出す西村氏。西村氏を初当選から知る自民党の県議は、憤懣やるかたない表情で吐き捨てた。

「まわりが見えていない。かっこうばかりで、自分がよければいい、自分だけが大事な人。だから、酒の恫喝発言につながる。兵庫県から出てるのがこんな大臣だとは、恥ずかしい」

■「俺は将来、総理大臣」

西村氏の選挙区である衆院兵庫9区は、明石市と淡路島(洲本市、淡路市、南あわじ市)だ。灘中学校、灘高校、東京大学から経産省という絵に描いたようなエリートコースを歩んできた西村氏は、東大在学時代から「俺は将来、総理大臣になる」と豪語していたという。

「昔から上から目線の傲慢な態度でした。しかし、自分の役に立ちそうな人には米つきバッタのように頭を下げる。東大時代、同級生が何かの署名活動をしていて、西村氏に頼みに行くと『俺に署名させるなんてなんだ。俺は将来、国を動かすんだ。わかってないな』と手で追い払って断った話が有名です。飲食業者に金融機関を使って圧力をかけて融資を止めようという発想は、まさに彼らしい」そう話すのは、西村氏と東大時代に同級生だった元官僚である。

西村氏は連日陳謝に追われたが、傲慢発言の裏に、菅首相ら政権が関与していたことも分かってきた。事前に内閣官房、財務省、金融庁ですり合わせがあったとされ、事実なら政権ぐるみの「圧力」だったことになる。政権に向けられる国民の視線は、厳しくなる一方だ。

直近で行われた時事通信社の世論調査では、菅政権の内閣支持率がついに30%台から転落。29.3%という衝撃の数字となっている。言うまでもなく、20%台は危険水域である。ある自民党幹部は、こう話す。
「西村さんの恫喝発言が大きいよね。飲食業者への圧力が菅政権の政策であることもばれてしまった。危険水域に入ると、一気に転落しかねない。党内は、東京オリンピック・パラリンピックより、選挙はいつかという話題でもちきりだ」

実は、西村氏が一番気にしているのは、選挙だという。経産省の官僚をやめて2000年の衆院選に無所属で出馬したときは落選。2度目の挑戦で初当選したが、自民党にはなかなか入れなかった。3度目となった2005年の衆院選で、はじめて自民党の公認を得て当選を重ねてきたが、選挙地盤は強固ではないという。前出の自民党県議の話。
「西村さんは多忙なのに、3度も兵庫県知事選挙の応援に入った。解散総選挙がすぐそこやから、自分のために来ているんですよ。“知事選の応援”を真に受けてる人は少ないんじゃないか。恫喝発言の西村さんの応援は避けてもらいたかったが、“自分さえよければ”という人なので、怒りをかうだけ損だと皆が見て見ぬふりだった。西村さんが兵庫9区に役立ったことは本当にない。やっていることは自分の選挙のことと、ライバルになりそうな県議、市議を蹴落とすこと。今は、明石市の泉房穂市長が人気なので、衆院選に出ないようにと必死に工作してる話は地元では超有名です。恫喝発言はまさに西村さんの本音。炎上は自業自得です」

西村氏の失策に、菅政権はますます追い込まれそうだ。

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