福岡県大任町・永原町政「支持率32%」の衝撃|町民からも厳しい視線

 国の指導に従わず、「町民を守るため」と主張して町発注工事の入札結果を隠し続けている福岡県大任町の永原譲二町長にとっては、まさに衝撃の調査結果である。

 ハンターは2月25日から26日にかけて、暴力支配が続く永原町政について、支持率を含めた意識調査を実施した。調査は無作為に抽出した大任町内の電話に架電する方式で、回答を得たものから割合をはじき出したが、その結果はハンターの予想とはかなり違っていた。

■町民からも厳しい視線

 永原町長については、常習化していた賭け麻雀、議長銃撃事件への関与、公共事業の関係文書隠蔽といった数々の悪行について報じてきた。議会まで牛耳り、他の自治体では当たり前のように行われている一般質問を止めてきたのも永原氏だと言われている。

 国から違法を咎められて改善指導を受けながら、「我関せず」とばかりに入札結果の非公表を続けているのは、複数のダミー会社を使った建設業界支配の実態を隠すためだ。こうした異常な永原町政を町民はどう見ているのか。ハンターは、先月25日から26日にかけて町内約1,000件の固定電話を対象にした意識調査を行った。

 盤石の支配体制を築き、周辺自治体の首長も黙らせるという実力者・永原譲二氏。一定の高さの支持があるものと見込んでいたが、結果はまるで違っていた。質問とそれぞれの答えの割合を示す。

Q1:あなたは、5期18年続いてきた永原譲二町長を支持しますか?
・「支持する」・・・32%
・「支持しない」・・・13%
・「どちらとも言えない」・・・55%

Q2:町政の現状についてお尋ねします。国は、大任町が町発注工事の入札情報などを非公表にしていることを「違法」と断定し改善指導を行っていますが、永原町長はこれに応じていません。違法な入札結果非公表は全国でも大任町だけですが、こうした事実をご存じでしたか?
・「知っている」・・・44%
・「知らなかった」・・・56%

Q3:違法な状態を続ける永原町長の姿勢についてお尋ねします。
・「改めるべき」・・・88.5%
・「改める必要はない」・・・12%

Q4:町議会では昨年まで6年間一般質問が行われていませんでした。報道を受けて一般質問が行われるようになりましたが、永原町長の新型コロナ感染や賭け麻雀といった疑惑に関する質問は議長が認めませんでした。こうした現状について、ご存じでしたか?
・「知っている」・・・30%
・「知らなかった」・・・70%

Q5:機能不全が指摘される大任町議会の姿勢について、あなたはどう思われますか?
・「改めるべき」・・・92%
・「改める必要はない」・・・8%

 ハンターの記者を驚かせたのは、永原氏への支持率の低さ。一般的に、現職首長への支持率は5割~6割が相場なのだが、永原氏への支持率はわずか32%に過ぎなかった。

 特筆すべきは、多くの関係者が永原氏の暴力支配に怯えてきた大任町で、「支持しない」と明確に答えた人が13%もいたこと。調査に応じた半数以上の人は「どちらとも言えない」だったが、積極的な永原支持は3割程度で、あとは町政に懐疑的か、あるいは「支持したくない」ということのようだ。

 次に、国が「違法」と断定し、改善指導を行ったあとも永原氏が依然として町発注工事の入札情報を非公表にしていることについては、4割以上が「知っている」と回答。「知らなかった」と答えた人も合わせ、89%が永原氏の姿勢を「改めるべき」と意思表示した。盤石と思われていた永原町政だが、町民からは厳しい視線が注がれている。

■議会の機能不全、新聞が報じないその原因

 昨年、町議会で6年ぶりに一般質問が行われるようになったが、永原町長の新型コロナ感染や賭け麻雀といった疑惑に関する質問を議長が認めようとしない現状については、3割の人が「知っている」、7割が「知らなかった」と答えた。機能不全状態の町議会については、「改めるべき」が9割を超えている。

 たしかに大任町議会は、一人を除いて、強大な権力を持つ永原氏にへつらう議員の集まり。二元代表制を理解していない連中ばかりがバッジをつけているというのが実態だ。3月議会で一般質問が行われないことを報じた地元紙・西日本新聞の記事を読んだが、永原氏のポチが書いた原稿らしく、一方的に議会を批判しただけの陳腐な内容だった。

 《一般質問また見送り》という見出しのあとには《福岡・大任町議会「通告ゼロ」》――。記事の最後には、「議員として恥ずかしくないのか」という町民のコメントが付いている。町議会だけを悪者扱いしているが、なぜ復活した一般質問に手を挙げる議員がいなくなったのか、という肝心なところには一切触れていない。

 質問通告しても、町長を追及する項目を議長が握りつぶして発言を封じるという信じられない状況を、この記事を書いた吉川という記者は知っているはずだ。しかし、吉川記者が現状に切り込み、いびつな町政になった原因を掘り下げたという話は聞いたことがない。

 それどころか、田川郡内にある8市町村で構成する「田川郡東部環境衛生施設組合」(組合長:永原譲二大任町長。田川市、大任町、川崎町、添田町、赤村、糸田町、福智町、香春町で構成)の市町村長らが、昨年4月に田川市内で開かれた「情報公開」に関する勉強会の内容に言いがかりをつけ、主催者側に謝罪を要求する「脅迫文書」を送り付けた際には、脅迫文書の発出を主導したとみられる永原町長の主張と脅された側の主張を同列に並べるという非常識なインタビュー記事を作成し、西日本新聞が脅迫者の立場を認めた格好となっていた(*「報道失格|西日本新聞が大任町長らの脅迫行為を追認)。権力の暴走を止めるという、報道の重要な使命を放棄したクズ記事だった。

 権力寄りの報道ばかりになれば、政治や行政の実相は伝わらない。狂った永原町政を支えてきたのは、田川郡を担当するメディアの記者たちだったと言っても過言ではあるまい。

 分かりやすい例を挙げておく。ハンターが永原町政を追求するまでの6年間、大手メディアは一般質問が行われない町議会の実情を報じていなかった。3年目も4年目も5年目も、異常事態を報じる機会はがあったはず。しかしこの間、問題を提起する記事は、ただの一度も出ていない。大手メディアと永原町政は、共犯関係にあったということだ。

 メディアが報じるべきは、行政や議会が死に体になった原因だろう。議場での批判封じを主導してきたのが永原氏であることは衆目の一致するところであり、そこを論難しなければ現状は変わらない。今回の意識調査の結果は、歪んだ町政について情報が十分に伝わっていない現状を浮き彫りにすると同時に、メディアの報じ方次第で、住民が地方政治と正しく向き合えるようになることを物語っている。「支持率32%」は、永原氏の暴力支配に対する町民の答えなのだ。

(中願寺純則)

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