幹部職員が副市長の指示で情報公開請求を行った女性を市役所に呼び出し、請求内容に関連する問題から手を引くよう迫っていたことが明らかになった福岡県八女市が、女性の開示請求に「不存在」の決定をしながら、ハンターの動きを受けて「不存在決定の取消し」を行うという、前代未聞の対応をしていたことが分かった。部分的な開示を決めたものの、一部の重要な公文書が失われた可能性がある。
■消えた決裁文書と契約書が
下は、八女市在住の女性が今年7月に市に提出した開示請求に対する答え。3件の測量設計業務に関する伺い(決済)と契約書の開示請求に、「不存在」の決定通知を発出していた(*数字の書き込みは女性本人)。
不存在の理由は『会計検査時又は工事実施時に当該資料を確認閲覧後、保管場所への返却不備のため』というもの。つまり、契約書や決裁文書が無くなったということだ。まともな役所では絶対に起こり得ない話であり、実際に業務が発注され公費が支出されているとすれば、その支出根拠自体がなかったことになる。違法な公費支出とみなされるのは言うまでもない。
開示請求を行った女性は、この不開示決定が送られてくる前に顔見知りの幹部職員から八女市役所内の部屋に呼び出され、「手を引け」と恫喝されていた(参照記事⇒八女市幹部が開示請求の女性に圧力|「手を引け」副市長指示認める)。
女性から相談を受けたハンターは、八女市に対し同様の内容の開示請求を送付。それからしばらくして、女性のものに突然、次の文書が送られてきていた。
“不存在とした3件のうち、2件の文書は見つかったから開示する”――。信じられないことに、いったん「不存在決定」した文書を、一部だけ開示するというのだ。しかし、1件の業務委託の伺いや契約書は不存在のままで、市の担当課によれば「いまのことろ、見つかっていない」という。
意図的に捨てていれば「公文書毀棄」。そうでなくとも、前述したように契約書や決裁文書の不存在は根拠のない公費支出が行われたことの証明だ。市民から住民監査請求や住民訴訟が提起された場合、決裁した市長が返金を命じられる可能性は否定できない。
■繰り返される愚行
情報公開と文書管理の信頼性を市役所自ら否定した形だが、同市は、ハンターに対しても「不存在決定→決定取り消し→一部開示」という他の自治体ではあり得ない動きを見せていた。
市は、ハンターが同市を流れる矢部川沿いに計画される公園整備事業の関連文書を開示請求した際、事業に利用する土地の買収を決めた際の、決裁文書や売買契約書を、事前の確認で「ある」と認めながら開示実施日になって「不存在」と回答。記者の抗議を受け、「公文書不存在決定取消し」を行っていたの(参照記事⇒福岡県八女市が異例の「公文書不存在決定取消し」|疑惑の公園整備事業で迷走)。
これまで報じてきた通り、市による一連の不可解な動きの背景にあるのは、三田村統之市長と2015年に同市で起きた贈賄事件の関係だ。疑惑の再燃を恐れた市幹部らが、事案の隠ぺいを図って失敗したというのが、真相だろう。
ハンターは、矢部川の河畔で整備が進む「矢部川水辺公園(仮称)」を巡る不可解な土地取引きと『移転補償』について、さらに踏み込んだ記事を配信する予定だ。