維新・大阪都構想、成立は微妙?|縮まった賛否の差

今月12日、大阪市を廃止して4つ特別区に分割する「大阪都構想」の住民投票が告示された。2015年には、当時大阪市長として大阪維新の会を率いていた橋下徹氏が中心となって都構想の是非を問う住民投票が行われたが、反対多数となり否決。橋下氏は政界を去った。

いったん頓挫した都構想だったが、昨年4月の統一地方選において大阪維新の会が大阪市長選と大阪府知事選に勝利。それまで反対していた公明党が、国政選挙での協力を見込んで大阪都構想への賛成を決める。新型コロナ対策でパフォーマンスを繰り返す吉村洋文府知事の人気に便乗する形で、賛成多数となり成立する公算が高いとみられてきたが、ここに来て情勢に変化が見え始めている。

告示前の世論調査では賛成が20ポイントほど上回り、優勢とみられていた。しかし、ここに来て急激に注目度がアップ。“反対”が追い上げ、現在、“賛成”のリードは5ポイントから10ポイント弱となっている。大方の予想を覆す「接戦」である。

■“実は反対”が学会員の本音

告示後初の日曜日となった18日、大阪駅前にやってきたのは公明党の山口那津男代表。その横には、新型コロナウイルス対策で株を上げた吉村洋文府知事(大阪維新の会代表代行)と松井一郎大阪市長(大阪維新の会代表)が並んだ(下の写真)。

「公明党さんのキャッチフレーズ『小さな声を聴く力』。我々にはそれが足らなかったかもしれない」と公明党を持ち上げる松井氏。一方、山口代表は「我々が野党時代、橋下さんと話をして、大阪都構想が国レベルで認められるようにと公明党が推進した。大阪都構想をぜひ実現させようではありませんか」と訴えた。中央政界では、自民党と連立政権を組む公明党が、大阪では大阪維新の会とタッグを組む。

前回の住民投票では、投票日当日だけの票では賛成が上回ったが、反対が多かった期日前投票の貯金で、わずかの差ながら反対多数となった。大阪維新の会に所属するある大阪市議は、「期日前投票は組織票が効果的だ。公明党がこちらについたことで期日前投票でも賛成票が伸びるはず」と読む。

だが、公明党の実情は違う。ある創価学会の古参メンバーは「前は反対、今回は賛成。公明党は何、おかしなこというてるのん。今のままの大阪市でええねん。期日前投票?行ってと連絡は来たがいかんよ。もし行っても反対に入れるわ。ウチの感覚では、一般の創価学会の人の7割以上が反対。理由?まずひとつは住所が変わること。商売人なんか名刺や封筒、看板など作り替えなければならず、えらいこと。税金で公的な看板とか表示を変えんとあかんやろ。いらん税金使うやん。そもそも、大阪都構想でどう大阪が成長できるのかわからん」と手厳しい。

この古参メンバーは地域でも顔役で、地元の創価学会信者にも影響力がある。同じように、別の古参メンバーを紹介してもらい話を聞いてみたが、全く同意見で大阪都構想には反対だった。
「国会で、自民党と一緒にやっている公明党が、なんで大阪は維新や?衆院選では公明党の候補おらんから自民党を応援した。今度は維新。おかしい思わんか?」

公明党の元大阪市議・中西建策氏も自身の動画サイトで「大阪市が財政豊かというのは、先人の努力のおかげ。都構想で賛成、反対と市民が分断されている。大阪市をつぶしたらあかん」などと、公明党の姿勢に不快感を示している。公明党最大の支持母体・創価学会は“一枚岩”ではない。

それを裏書きするようなデータもある。期日前投票の出口調査だ。あるメディアによれば、100人に聞いた結果、投票所によって賛成が反対を多くて10人、少ないと2人ほど上回る程度。逆に反対がリードという投票所もあるという。これまでの世論調査の数字ほど、差がついているわけではない。

「支援母体の創価学会の動きが鈍いのは承知している。そこで18日には山口那津男委員長が大阪入りして、賛成へと支持を訴えた」(公明党の大阪市議)

■足並みそろわぬ「自民・野党連合軍」

一方、反対を訴えるのは、大阪市議団を中心とした自民党、共産党、立憲民主党、山本太郎氏のれいわ新選組などだ。だが、自民党は大阪府議団が賛成の意向を示し分裂状態。「松井氏、吉村氏と近い、菅総理までが、大阪都構想に賛成しているような態度。普段はケンカしている自民党、共産党、立憲民主党が大阪都構想だけは一緒に反対というのもね……」(大阪選出の自民党の国会議員)

足並みがバラバラなのは、街頭演説を聞いていてもよく分かる。大阪市の財政で何千億円がどうのなど、市民にとってピンとこない内容ばかり。先の創価学会の古参メンバーが語っていた「住所が変わる」などといった市民生活に直結した、分かり易い訴えはほとんどない。国会議員や地方議員らの主張は、まるで「都構想評論家」のそれだ。

2015年住民投票の投票率は66%。昨年の大阪市長選、大阪府知事選の投票率が50%ほどだったことを見ても、関心の高さがうかがえ、今回も60%以上の投票率が見込まれる。また、賛成か反対かで投票するので無効票も少ない。つまり、世論調査や出口調査の数字は、信頼性が高いということだ。

「ハッキリ言うて、世論調査の数字で圧勝していたから、楽に勝てる賛成と思っていた。それが急に反対が伸びて驚くばかり。維新の幹部もなぜ何故、とびっくりしている」(大阪維新の会の府議)

投票日は11月1日、決着までまだ10日以上もある。はたして、どちらに転ぶのか?



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