追い込まれた岸田首相、解散やめて内閣改造?

通常国会の会期末まで約1か月。「解散総選挙に踏み切るのではないか」とみられていた岸田文雄首相が、方向転換するとの見方が出ている。

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5月第2週に実施されたNHKの世論調査では、岸田内閣を支持すると答えた人が24%(前月は23%)、支持しないが55%(前月は58%)。共同通信の調査では、支持するが24.2%(前月は23.8%)、支持しないが62.6%(前月は62.1%)と、相変わらずの低空飛行だった。

裏金事件で自民党を追われ、1年間の党員資格停止となった下村博文元文科相は、地元東京11区の集会で「支持率が低迷し、自民党への批判が多い中で解散総選挙に打って出るなんてことはあってはならない。解散総選挙をするというのは、岸田首相が9月の総裁選前に信任を得ようとしいるわけで、自分のことしか考えていない。本気でそんなことをしたら政権交代になりかねません。岸田首相はわかっているのか」と発言。自身が関与した裏金事件が大きく支持率に影響しているのことが、まるで他人事のように岸田首相への批判に終始した。

だが、自民党内では下村氏と同様の考えが大勢を占めており、解散総選挙は先送りになる可能性が高い。そこで、岸田首相が支持率回復のために狙っている「次の手」が内閣改造だ。

一昨年は8月、昨年は9月に着手した内閣改造。元岸田派の国会議員は、「今年は総裁選が9月にあるので、7月に内閣改造を行って再選を目指すという声が多く聞かれる」と話す。

今年1月、裏金事件で会計責任者が立件されたことを機に、突如として「岸田派解散」を宣言した岸田首相。その後、裏金事件の中核である安倍派、二階派などが解散し、今では麻生派を残すのみだ。

これまでの内閣改造では派閥からの「推薦」が大きく影響した。現在の岸田内閣も、明らかに派閥に配慮したもの。だが、派閥が消えたことのプラス、マイナスについて、ある自民党の大臣経験者がこう話す。

「自民党の長い歴史の中で、派閥の意向を完全に無視して、首相が独自に組閣できる初めての内閣になる。おそらく岸田首相は9月の総裁選に勝つため、国民受けするメンバーをそろえるはず。マスコミはオールスター内閣とか報じるんだろうが、適材適所なんてことはできないだろう」

現在、入閣が有力視されているのは河野太郎デジタル相、小泉進次郎元環境相、野田聖子元総務相、福田達夫元総務会長など知名度の高い議員たち。世論調査で「次の総理」として常にトップにランクされる石破茂元幹事長も有力だという。

問題は、2021年の総裁選で岸田首相が掲げた「自民党役員は1期1年、連続3期まで」という公約だ。。幹事長や政調会長など党7役と副総裁が対象で、役員の任期は事実上3年に制限されている。麻生太郎副総裁は2021年10月、茂木敏允幹事長は同年11月に就任。任期まであと半年ほどしかなく、再選はない。

つまり「3頭政治」の中核だった麻生氏と茂木氏も岸田総裁が決めた党規約からすると、次の内閣改造と党人事でお役御免となるはず。「岸田首相に権力が集中する1強体制にかわる」と自民党幹部は指摘する。

これまで権力の中枢に君臨していた麻生氏と茂木氏が「派閥解散」となったからといって、簡単に退くのだろうか。とりわけ岸田首相より年齢が上の茂木氏は、9月の総裁選が総理を狙うには最後のチャンス。おとなしく引き下がるとは思えない。

「茂木さんが幹事長をクビになる前に自分で辞表を出し、一兵卒になって準備するくらいなら打倒岸田の芽も出てくる。副総裁を降ろされるとすれば、麻生さんだって面白くないはず。岸田総理は内閣改造で、人気どころを入れ政権浮揚と支持率アップを目論むだろう。一方で、党人事は実務的にやるんじゃないか。幹事長には森山裕総務会長をあて、非主流派の二階派や菅義偉元首相に近い議員とも良好な関係を築く作戦かもしれない。手堅い手腕の渡海紀三朗政調会長や浜田靖一国対委員長は留任させ、総務会長に新鮮味がある若手を起用するのではないか。ただ、ここで麻生氏のご機嫌をとるために、義弟の鈴木俊一財務相をもってきたりすると、まさに派閥人事そのものということで批判を浴びることになる。選挙で連敗続きの小渕優子選対委員長は、責任をとらせる」(前出の自民党幹部)

国民目線からすると、岸田首相がいくら改革だの清新だのと叫ぼうが、「自己満足」としか映らないことが濃厚な内閣改造と党人事。首相自身が、裏金事件でなんら処分を受けていないことを忘れてはなるまい。小手先の内閣改造ではなく、解散総選挙で信を問うべきだ。

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