バス事故報告書は「虚偽」|薩摩川内市・スクールバス運営事業の闇(5)

鹿児島県薩摩川内市の教育委員会がスクールバスの運行事業者を決めた際の入札結果を隠蔽している問題を巡り、他社の半額もしくは3分の一の金額で応札し、同業務を事実上独占している形となっているバス会社が、平成29年(2017年)に起こしたバス事故の真相を隠し、二度にわたって虚偽報告を行っていた疑いが濃くなった。一度目の虚偽報告は2019年に暴かれ新聞報道までされていたが、再提出された報告書の内容にも虚偽があったとみられている。

■1年以上経て暴かれた「虚偽報告」

市教委から運営を委託された事業で事故を起こしながら、真相を隠して虚偽報告を行っていたのは、6件のスクールバス運行業務のうち、5件を格安受注している「川内観光交通」。同社は、平成29年10月25日に自社の社員が起こしたスクールバスの事故を市教委に報告する際、虚偽の内容を記して提出していた。下が、その時の報告書。事故発生日時は「10月23日14時00分頃」、事故発生場所は「薩摩川内市西方町1213(車庫内」となっている。

事故で破損したバスは市の保有する車両だったことから、修理費全額を川内観光交通が支払うことなどを誓約して一件落着と思われていたが、約1年3か月経った平成31年2月に事態が急展開する。

同月に行われたスクールバス事業の業者選定入札の場で、関係者が虚偽報告を暴露。入札は急遽中止となり、市政を揺るがす大問題へと発展したのだ。その結果、入札日の翌日にいきなり出てきたのが下の「事故報告の続報(お詫び)」と題された文書である。

なんと「発生場所に誤りがあった」と認めた上で、事故が起きたのが「車庫」ではなく「発電所近くの県道」だったという。原因は、「運転手の報告ミス」となっていた。1年以上経って、第3者に虚偽報告を暴かれた末に出された文書を“続報”といえるのか疑問だが、その数日後に新しい「事故報告書」が提出される。(*下が2枚目の事故報告書)

当初、「薩摩川内市西方町1213(車庫内)」とされていた事故発生場所は、たしかに「薩摩川内市久見崎町先 (県道)発電所正面入口付近」に変わっている。1回目の報告書に添付された「事故現場見取図」は何だったのか、という話だ。

しかし、変わっているのは事故発生場所だけではない。比べてみると、事故発生日時も「10月23日14時00分頃」から「10月23日15時30分」へと書き替えられている。1時間30分も違うのは何故なのか――。

念のため開示された資料を見直してみたが、事故発生時間が変わった理由は、どこにも出てこない。薩摩川内市の市教委に説明を求めたが、「理由を記した公文書はない」――つまり、“分からない”という結果になった。市教委は、虚偽報告を行った業者の言い分を無条件で受け入れただけでなく、1度目の事故報告の内容から大きく変わった時系列の記述について、何の確認も行っていなかったことになる。疑問が残っていたはずだが、市教委は、2度目の事故報告書が出た段階で川内観光交通を1か月の指名停止処分にし、幕引きを図る。「この問題は終わった」ーーこれが薩摩川内市教委の公式見解だ。

では、2度目となった事故報告書の記載内容は真実なのか?実は、複数の関係者の証言から、この2度目の事故報告書にも「虚偽」があった可能性が高いことが分かってきた。

(つづく)

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