アキタフーズ鶏卵汚職事件で暴かれる自民党金権政治

8月4日、鶏卵業界の汚職事件で逮捕された元農相・吉川貴盛被告の初公判が開かれ、これまで表面化していなかった驚きの事実が明かされた。

■元法相・河井被告にも封筒の100万円

吉川被告は大臣在任中に鶏卵生産大手「アキタフーズ」(本社・広島県福山市)の元代表・秋田善祺被告(収賄容疑で逮捕、公判中)から3回に渡り現金500万円の賄賂を受領。その見返りに、養鶏業界が懸念していた動物福祉の国際基準「アニマルウェルフェア」に反対するコメントを出すなど便宜を図ったとされる。

また、秋田被告は養鶏業者に対する日本政策金融公庫の融資枠拡大を吉川被告に陳情。農水省や公庫幹部との面談が実現したことでも、吉川被告側に現金が渡っていた。

検察が冒頭陳述を行う中、信じがたい話が飛び出した。これまでの報道では、吉川被告が秋田被告からもらった賄賂は農相在任中の500万円。しかし、2012年ころ、当選同期の元法相・河井克行被告(公職選挙法違反容疑で実刑判決、控訴中)から秋田被告を紹介された吉川被告は、秋田被告から河井被告とそろって接待を受けた場で、100万円が入った封筒を渡されていた。同席した河合被告も、100万円入りの封筒をもらっている。

検察側は冒頭陳述で、“盆暮れの挨拶の名目で現金をもらったり、被告人の政治団体が開催する政治資金パーティーのパーティー券をアキタフーズ等の名義で購入してもらった”と資金提供の概要を暴露している。

■トイレや大臣室で現金供与

大臣在任中の500万円は、3度に分けて供与された。1回目は2018年11月。秋田被告が実質的に支配する養鶏団体が「大臣就任のお祝い会」を開催した際、吉川被告がトイレに立ったところで“秋田被告が後を追いかけトイレ付近で「これお祝いです」と現金200万円を上着ポケットにねじこまれた”(冒頭陳述より)

2度目は2019年2月。アニマルウェルフェアの問題が養鶏業界の意に沿わない方向になっていると危惧した秋田被告は大臣室で吉川被告と面会し“帰り際に秋田被告から「要望書です」「読んでおいてください」と言われて吉川被告が座っていたソファーチェアの肘掛け部分に現金200万円入りの封筒を置いて渡された”(冒頭陳述より)

3度目が2019年7月。吉川被告は、日本政策金融公庫に関する陳情で秋田被告と大臣室で面会。2回目と同じようにソファーチェアの肘掛けに100万円入り封筒を置いて帰ったという。

500万円はすべて私的な飲食代として費消したという吉川被告は、2019年9月に農相を退任している。

■供与額は1,700万

現金供与はその後も続いていた。大臣を退いた吉川被告は、立件された500万円の他に計200万円を受領していたことを検察が暴露。これとは別に吉川被告の弁護士団が、大臣就任前に8回、計1,000万円を受け取っていたことを明らかにしており、大臣在任中の500万円、退任後に200万円と合わせ1,700万円の現金が提供されていた計算となる。

大臣在任中に渡された2回目の200万円は、吉川被告の長男・吉川隆雅北海道議会議員が選挙に出馬することを河井被告から聞かされた秋田被告が、“吉川は隆雅のために資金を必要としているであろうから、資金を提供すれば、今後吉川から支援が得られる”(秋田被告の冒頭陳述)と考え決めた金額だった。

確かに吉川被告は息子のことを気にかけていたようで、「議員辞職した吉川さんは一時、解散総選挙があれば隆雅道議を後継で出馬させられないだろうか」と北海道の地方議員らに相談していたという。

■滑稽な無罪主張

秋田被告からの資金提供を認めたものの、吉川被告は「政治献金の趣旨と受け止めていた」と無罪を主張している、だが、政治資金収支報告書に収入としての記載はない。そこで、吉川被告はさらに滑稽な主張を展開する。
「秋田被告のカネは政治資金収支報告書に記載していなかったので、いずれ返そうと、現金で北海道の自宅においていた。検察が捜索した時にその現金は秘書が検察に渡して押収してもらった」

吉川被告が、本当に1,000万円を超えるような現金を自宅に置いていたのか疑問だ。秋田被告に返そうと思えば、銀行口座に入金するば済む話で、多額の現金を自宅に置くというのは極めて不自然。事件化するまで秋田被告に合わずにいたとも思えない。検察が押収したのは、用意された現金だったという見立ても成り立つ。吉川被告をよく知る自民党の国会議員は、次のように話す。
「裏金として選挙などに使うために、家にストックしていたんじゃないですか。本当に返すなら弁護士に預けるとか、銀行振り込みで処理するはず」

■政治資金パーティー、社員名使って600万円

検察側は、政治資金パーティーにおける限度額を超えたパー券購入の手口も明らかにしている。2014年と2015年の吉川被告の政治資金パーティーで秋田被告側は、合計600万円分のパーティー券を購入。多額のパーティー券を買ったことが表面化しないように、アキタフーズ従業員の名前などを使って分散させていた。

吉川被告が秋田被告側から受領した資金総額は、前述の1,700万円と合わせ2,300万円。自民党の金権政治を象徴するような裁判となった。

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