5月9日発売の週刊文春に《石破首相への闇献金3千万円を告白する》《元側近が告白》との見出しが躍った。石破茂首相の支援者が2003年から2014年まで、パーティー券の購入などで3,000万円あまりの闇献金をしていたという内容。永田町は大騒ぎとなった。
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「石破首相に関して文春砲を放つと朝からその話で持ち切り。8日の午後になって、文春の早刷りが出回ると、生々しい闇献金の証言で大変なことになりました。事前に文春から石破首相には取材があり、ある程度の内容は知っていたが3,000万円という巨額な金額にびっくりでした」と話すのは、ある官邸関係者。「政治とカ」の問題が、政権を揺るがしかねない状況だ。
石破首相の政治資金収支報告書に、問題の3,000万円は記載されていない。闇献金が事実なら、政治資金規正法の「不記載」などに該当し、刑事事件になってもおかしくなかった話だろう。「ただし、立件は難しい」と東京地検OBの弁護士は次のように指摘する。
「東京地検特捜部に刑事告発は出るだろうが、政治資金規正法違反の時効は5年。時効の壁で立件は無理。事情聴取にも至らないだろう。やっても石破さんの秘書から聞く程度」
しかし、永田町の騒ぎはそう簡単に終わらない。ある自民党幹部は「石破さんが総裁選で勝てたのは、安倍派などの裏金事件を背景にしてカネにはクリーンというイメージが強かったからだ。その後の衆議院選挙でも裏金議員を公認しないなど、一線を引いてきた。それが総理自らが3,000万円もの闇献金をもらっていたということなら、党内の反発は必至。参議院選挙が近いが石破おろしが吹き荒れる可能性もある。そうなると、夏の参議院選挙に合わせて衆議院の解散、総選挙となりかねない」と危機感を募らせる。
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ここで、注目されるのが内閣不信任案だ。周知の通り石破政権は少数与党。野党がまとまれば内閣不信任案が可決する。しかし、立憲民主党は「世論が盛り上がれば」と“他力本願”の状態。同党のある幹部が現状をこう打ち明ける。
「参議院選挙や6月の東京都議選で、自民党と連立を組む公明党が議席を減らすことは確定的。政局は一気に混迷するので、その時こそチャンスとみていた。つまり、自民党、公明党から立憲民主党に対して『大連立』の誘いがあるのではないかという見立てです。その時、総理の椅子をとるのはうちになるという読みがあって内閣不信任案には消極的なのです」
ただし、石破首相の3,000万円闇献金というのは、とてつもなく大きな政治とカネの問題。立憲党内では「内閣不信任案を出さざるを得ない」という意見が大勢を占めている。
今年度の予算案に賛成した維新の所属議員も、「3,000万円の闇献金問題で、内閣不信任案が出れば賛成にまわるしかない」と話す。
世論調査で人気急上昇の国民民主党の玉木雄一郎代表は、首相の座と引きかえに自公連立に加わるのではないかみられており、同党の中堅議員は、鼻息が荒い。
「石破さんの闇献金3,000万円に一定程度の真実性があるなら、内閣不信任案には賛成するしかない。ある意味、非自民で野党がまとまれという、国民の意思が示された(文春の)記事ではないか」とした上で、「内閣不信任案を出すのであれば、参議院選挙に加えて解散総選挙まで想定しなければならない。まさに政権交代選挙になる。そこで勝ち抜けば、玉木総理も現実のものとなる。野党が過半数をとり立憲民主党が第一野党になっても、情勢を考えれば選挙で躍進するうちの玉木を総理にするのが妥当だ。
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国民民主党以上の議席を有する日本維新の会だが、先行きは暗そうだ。
「衆参ダブルとなれば、支持が低迷している上に万博の評判が悪いうちは厳しい。おそらく議席を減らすでしょう。その場合、連立に参加しても維新が首相をとるのは無理。連立政権で閣僚ポストがとれるかどうか、そちらに主眼が置かれるはず」(維新の国会議員)
石破首相の闇献金問題で、にわかに浮上する衆参ダブル選挙。前出の自民党幹部は憤りを隠せない。
「石破総理は、時効を理由に『昔の話で処理は適正にやっている』と言い張るしかない。しかし、裏金事件で厳しい態度をとってきた以上、政治倫理審査会への出席は避けられなくなる。そうなれば、ますます支持率が下がり、退陣論が勢いを増すでしょう。堪えきれなくなった総理が、衆参ダブルで勝負をかけるという流れになる可能性はある。ただし、今の支持率だと政権交代選挙になりかねない。政治とカネの問題には無縁だったはずの石破さん、いったい何をやっているんだと言ってやりたい」