政治資金規正法が定めた政治団体設立の届出をせずに、20年以上も違法な後援会活動を続けてきた原口英喜筑後市議会議長。ソフトバンクホークスのファーム施設誘致に尽力したという同氏は(*下の「リーフレット」参照)、法律上存在しない「原口ひでき後援会」に支えられて6回の選挙を勝ち抜き、地元政界の重鎮として権力を振るうまでになっている。
「県に届出はしていないが、県と市は別だと考えていた」――議長は“無知によるミス”を主張したが、当選6回の政治家が言うことではない。実は、議長サイドが無届け後援会であることを承知していたと思われる、別の証拠がある。
■「確信犯」の可能性
下は、西田正治筑後市長及び西田氏の支援団体「西田せいじ後援会」が筑後市選挙管理委員会に提出した「証票交付申請書」だ。
日本全国、あらゆる地域に政治家の名前を大書した「看板」があるが、公職選挙法の規定で国会議員や都道府県の知事及び議員は都道府県の選挙管理委員会に、市長村の長及び議員は当該自治体の選管が定めた「証票」というものを必ず貼らなければならない。(*下の画像参照)
証票はそれぞれの政治家が立候補する選挙の種類によって枚数が決まり、候補者自身の政治活動用と後援団体の活動用として一定数が割り当てられる。例えば福岡県知事なら候補者用が20枚、後援団体用が30枚、衆議院議員がそれぞれ10枚と15枚、政令市以外の市長や市議なら、6枚ずつ計12枚が交付される。
前掲の申請書で分かるように、筑後市長は12枚の看板を設置するため、その場所や土地・建物の所有者を記載した申請書を、筑後市選管に提出している。市議会議員なら、政治家本人用に6枚、後援団体用に6枚が申請可能だ。4年ごとの選挙に備え、できる限り支持を広げたいと考えるのが政治家の常。設置できるのなら、看板の数は多いほど良い。当然、市議なら12枚の証票交付を申請するものだ。では、原口議長はどうしてきたのか――。
筑後市選管に情報公開請求した結果、開示されたのは次の1枚だけである。
申請書は、政治家本人用の看板に貼る証票の有効期限が切れるのに伴い、新しく交付を求めるためのもの。後援団体の政治活動用看板に必要な証票交付申請書は、提出されていない。“できない”からだ。
後援団体用の証票を交付してもらうには県選管に提出した「政治団体設立届」の写しなどが必要となるため、無届け団体である「原口ひでき後援会」は、証票交付申請ができなかったのだ。原口氏は、自分を支える組織が、後援会とは名ばかりで法的な要件を満たしていないことを知っていた可能性が高い。証票を貼らずに看板を設置していたとすれば、別の意味で違法行為となる。
「県と市は別と考えていた」――。証票に関する事実をたどっただけでも、原口議長のこうした言い訳が通用しないことは明らかだ。まともな政治家なら、市と県それぞれの選管に必要な書類を提出し、政治資金規正法や公職選挙法に従って日々の活動を行う。「知らなかった」というのならあまりに幼稚、選挙に立候補する資格すらあるまい。
■市民からも怒りの声
筑後市在住のある男性会社員は、「筑後市政はおかしくなっている」とした上で、次のように話している。
「このところ筑後市はおかしなことばかり起きている。妙な文書、怪文書というべきものがばら撒かれたと思っていたら、今度は議長の法律違反だ。無届け後援会なんて聞いたことがない。私の知り合いは、ハンターの記事を読んで『原口に騙された』と怒っていた。以前のことらしいが、頼まれて後援会の入会申し込みに名前や住所を書いたんだと言っていた。そりゃ、怒るよ。支持者に嘘ついて、個人情報を引き出したわけだから。議長はもちろん、議員を辞めるのが筋だろう」
別の市民からは、「刑事告発すべき」という声も出ているという。