今月3日、永田町に衝撃が走った。時事通信が『自民、国民と連立検討 局面転換狙う、玉木氏入閣案』という見出しで、自民党と公明党の連立政権に、国民民主党が加わり、玉木雄一郎代表が入閣するという記事を配信したのだ。
記事にはこうある――「自民党が、公明党との連立政権に国民民主党を加える案を検討していることが2日、分かった。自民、国民両党の幹部が水面下で接触を続けており、調整が付けば連立協議に入る」。この記事が配信されるやいなや、岸田文雄首相は「まったく知らない、考えていない」と完全否定。永田町に冷ややかな反応が広がる中、公明党も不快感を示し、続報もなかったことから連立構想は立ち消えになったと思われていた。だが、水面下では……。
■自民にすり寄る国民民主
自民党のある大臣経験者が解説する。
「岸田首相以下、みんな記事を否定しているが、火のない所に煙は立たない。裏ではいろいろやっている。自民党は茂木幹事長が玉木と直接やりとりしているようだ。もし岸田政権が危なくなった時には、国民民主党を引き込み自分の手柄にする魂胆だと思うよ。岸田首相にも恩を売りながら後継候補に名乗りを上げるつもりでしょう。だけど、よりよって落ち目の国民民主と連立なんて……。みんな冷ややかな目で見てるよ」
国民民主党は今年2月、予算案に賛成するなど自民党にすり寄る方針を打ち出してきた。旧統一教会の救済法案を巡っても、与党案を「評価できる」という姿勢だ。
「10月くらいから、玉木代表やその周辺はかなり雰囲気が変わってきた。玉木さんは本気で政権入りを狙っているんだろう。立憲民主党と割れて以降、国政選挙では議席が伸ばせず、埋没するばかり。支援をを受けてきた産別(産業別労働組合)も立憲民主党に軸足を移し替えようとする動きが7月の参議院選挙であった。国民民主が党勢を挽回するには、自民党と連立を組むくらいしかもう手はない」(国民民主党の国会議員)
連立には、玉木氏と古川元久国対委員長が乗り気だという。財務省出身の古川氏は、旧民主党時代、国家戦略担当大臣や官房副長官を務めた人物だ。当選8回で、政治キャリアは玉木氏を上回る。時事通信の記事の背景には、古川氏がいるのではないかとみる人もいるようで、前出の国民民主議員は、次のように話す。
「古川氏の事務所では、今年になって大きな動きがありました。長く務めていた秘書が突然やめたんです。古川氏といろいろウワサのあった人物です。それもあって『古川氏は玉木氏に代わって自分が入閣したいのではないか』という情報が流れました。入閣となれば、スキャンダルがないかどうか身体検査がありますから、先手を打ったのかと感じました。一方、玉木氏はまだ大臣ポストについたことがなく、ここぞとばかりに狙っています。玉木氏の事務所も、にわかに動きが激しくなっている」
■政権末期
山際大志郎前経済再生担当相は、旧統一教会を巡る問題で10月に退任を余儀なくされたが、その際、玉木氏が後任に就くのではないかという出所不明の情報が駆け巡った。こうした怪情報が出ること自体、支持率が急落する岸田政権が迷走している証だろう。
国民民主の連立話に、面白くないのは公明党。自民党と同党の連立は旧民主党が政権を担っていた時代をのぞけば、20年以上も続いている。公明党の関係者は不快感を隠そうともしない。
「なぜ、国民民主党と連立という話が出てくるのか、さっぱりわかりません。うちと自民党は長年の信頼関係でガッチリ手を結んできたはずです。これまで相容れなかった国民民主党が入ると、逆にこれまでの自公の関係にひびが入りかねない。うちは連立与党として閣僚などの主要ポストを手放すつもりはないし、これまで通りしっかりやっていく。自民党にもそう強く言ってある。そもそも、岸田政権に国民民主党を加えて急に支持率が上がるとは思えない」
同様の声は、自民党内からも聞こえてくる。国民民主党は、衆参で合計20人の国会議員を擁するが、世論調査では立憲民主党、日本維新の会、公明党、共産党が常に国民民主党の上にくる状況。支持率は、1~2%前後という低空飛行だ。国会議員5人の「れいわ新選組」とほとんど差はなく、山本太郎代表のようなスターはいない。
「低迷する岸田政権にあって、時事通信の記事でも『カンフル剤を打たないとよくなりません』とありました。しかし、国民民主党の連立政権参加では、まったくカンフル剤になりません。それどころか、国民民主党に大臣ポストを渡せば、自民党内の待機組などベテラン、中堅議員からブーイングが巻き起こるのは間違いありません。それに玉木氏はもし連立政権となった場合、今の20人全員を引き連れてこれるのか。おそらく無理だと思う。そうなれば、野党化に軸足を置く維新がますます鮮明な姿勢をとるだろう。岸田首相は解散総選挙をやるだけの気迫、胆力があるかといえば、まったくありません。どうせやるなら、国民民主党だけではなく日本維新の会も連立に取り込むくらいしないとダメでしょう」(前出・自民党の大臣経験者)
国民民主党に維新――そんな「カンフル剤」しか見当たらない岸田政権は、末期を迎えているのかもしれない。