無責任体質露呈|福岡市教委、「留守家庭子ども会」新型コロナ感染対応の問題点

福岡市で実施されている学童保育「留守家庭子ども会」に通っている児童が新型コロナウイルスに感染したことが分かった際、市教育委員会がいったん決まった施設の消毒や閉鎖といった現場サイドの方針を覆していた問題で、一連の経緯を記録した文書が一切残されていないことが分かった。

市教委への情報公開請求を通じて明らかになったもので、市教委と学校側との協議の記録や、意見を聞いたという感染症の専門家とのやり取りを記した文書などは作成さえされていなかった。

教育現場が決めた方針を不透明な形で歪めた形で、市教委の無責任な姿勢に改めて批判の声が上がりそうだ。

■現場で決めた「消毒と閉鎖」を市教委が撤回

先月4日、市内東区にある小学校の学童保育「留守家庭子ども会」に通所していた児童の父親が発熱し、その後のPCR検査で陽性に――。14日に母親が、16日には当該児童が相次いで陽性であることが判明し、市は同日新型コロナに関する情報として「10歳未満男児」の感染を公表していた。

児童が通っていた小学校は、施設内を消毒し一週間程度閉鎖することを決めたというが、市教委はその数時間後、学校側の方針を一方的に取り消していた。子供たちの安心・安全を無視した市教委の方針転換に、関係者から厳しい批判の声が上がったのは言うまでもない。

“なぜ学校側が決めた消毒や施設閉鎖という方針を覆したのか?“、”消毒や施設閉鎖が必要ないと言った専門家とは誰のことか?”の2点について確認を求めたが、市教委は「個人情報。何もお答えできない」として取材拒否。ハンターは、4月17日の配信記事で事実関係を報じ、情報を開示しない市教委の姿勢を厳しく批判していた(参照記事⇒「福岡市で学童保育「留守家庭子ども会」の児童が感染 市教委が消毒と施設閉鎖止める」。

■不適切な方針決定過程

報道を受けた市教委はその後、再び方針を転換し施設の消毒を実施したが、事案の経過が公表されなかったため、ハンターは市教委に対し下記の関連文書について情報公開請求を行っていた。

・留守家庭子ども会を利用している児童がコロナウイルスに感染したことを受けて、教育委員会が学校側と協議した際の記録。

・留守家庭子ども会を利用している児童がコロナウイルスに感染したことを受けて、教育委員会が「専門家」と協議または相談などをした際の記録。

・留守家庭子ども会を利用している児童がコロナウイルスに感染したことを受けて、教育委員会が協議や相談を行った専門家の顔ぶれが分かる文書。

これに対する回答が、隠蔽体質の市教委が大好きな「公文書非公開決定通知」である。

決論は文書不存在。「当該文書は、作成していないため」なのだという。つまり市教委は、子供の安心・安全にかかわる問題で教育現場の決定を覆しておきながら、その経緯を示す記録を一切残していなかったということになる。これは、市教委の判断に根拠がなかったことの証明でもある。

4月16日の夜、当該児童が在籍する小学校の校長が在校生の保護者あてに発信したメールには、市教委の通達がそのまま転記されており、そこには『本日、本校の児童1名に新型コロナウイルス感染症への感染が確認されました。本児童は、留守家庭子ども会に在籍しておりますが、本児童の発症が、最後の登会日の後であることや、最後の登会日から発症までの期間などを見ますと、学校での感染の恐れはないとの専門家の見解でございます。そのため、留守家庭子ども会は引き続き実施することとしておりますが、ご不安に感じられる保護者におかれましては、ご家庭での見守りをお願いいたします』と記されていた。だが、記録が残されていない以上、“専門家の見解”を聞いたという市教委の主張が本当なのかどうかは分からない。

改めて市教委に確認したところ、担当課長は「国立感染症研究所の○○氏に聞いた」と実名を挙げる。調べてみると、たしかに該当する人物はいる。しかし、市教委の説明と「文書不存在」という情報公開の結果が事実だとすれば、口頭で状況を示し、たった一人の研究者の助言で事を決めたということだ。結果的に、感染が拡大することはなかったものの、「安易な判断」との批判を免れることはできまい。重ねて述べるが、研究者との相談の記録も残っておらず、市教委側の主張の正しさを担保する証拠は何もないのだ。子供たち安全を守らなければならない立場の市教委の方針決定過程としては、不適切と言うしかない。

いい加減な役所は、“責任”を取らなくていいように逃げ道だけは作るもの。市教委は小学校への通達の中に、『ご不安に感じられる保護者におかれましては、ご家庭での見守りをお願いいたします』という一節を入れていた。これは、「市教委の決定が不満なら、自宅で保育をしろ」と言ったも同然なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

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