福岡市教育委員会が、市内東区にある小学校の学童保育「留守家庭子ども会」の児童が新型コロナウイルスに感染したことを確認しながら、いったん決まった施設の消毒や閉鎖といった方針を覆し、保育の続行を指示していたことが分かった。
保護者からは、子供たちの安心・安全を無視した市教委の方針決定に、厳しい批判の声が上がっている。
関係者の話によれば、今月4日に児童の父親が発熱。その後、PCR検査で陽性が判明したという。
児童は3日まで留守家庭子ども会に来ていたが、父親の発熱が分かった4日以降は自宅待機となっていた。
14日になって母親に発熱と味覚障害が発現し、15日に陽性判定。児童も16日に陽性であることが分かった。市は同日、新型コロナに関する情報として「10歳未満男児」の感染を公表している。
■「消毒と閉鎖」、市教委指示で方針撤回
問題は、その後の市教委の対応だ。子供たちの安全を第一に考えた学校側は、留守家庭子ども会が実施されている場所を消毒し一週間程度閉鎖することを決めたという。しかし、その数時間後、市教委の指示で消毒と施設閉鎖を取り消し、関係者には夜11時になって校長名で下の通知を発出していた。
新型コロナウイルス感染症に係るお知らせ
2020/4/16 PM11:00
保護者の皆様へ
委員会より通達がありました。
『本日、本校の児童1名に新型コロナウイルス感染症への感染が確認されました。
本児童は、留守家庭子ども会に在籍しておりますが、本児童の発症が、最後の登会日の後であることや、最後の登会日から発症までの期間などを見ますと、学校での感染の恐れはないとの専門家の見解でございます。
そのため、留守家庭子ども会は引き続き実施することとしておりますが、ご不安に感じられる保護者におかれましては、ご家庭での見守りをお願いいたします。
引き続き、これまでと同様、お子様の健康管理に十分ご留意いただくとともに、こまめな手洗いや不要不急の外出を控えるなど、ご家庭での感染予防に十分取り組んでいただきますよう、お願い申し上げます。』
以上
○○小学校校長▲▲ ▲▲
突然の方針転換を受けて、ある保護者は、こう話している。「夜には何らかの発表が行われると聞いていましたが、それがなくなり、23時には消毒も閉鎖もなくなりました。教育委員会の指示だと聞いていますし、学校長の通知文にもそう書いてあります。一人の児童が感染したのは事実で、いつ、どこで感染したのかは分かりません。であるならば、当初の方針通り、消毒と施設閉鎖は必要でしょう。学校側の当初の方針は、間違いではありません。子供の命に関わる問題ですから、できることはすべてやるべきです。市教委は、子供の命ではなく、別のものを守ろうとしているとしか思えません」
■市教委 ― 「個人情報」盾に取材拒否
“なぜ学校側が決めた消毒や施設閉鎖という方針を覆したのか?消毒や施設閉鎖が必要ないと言った専門家とは誰のことか?”――17日午前、市教委の担当課に確認したところ、「個人情報ですから、何もお答えできません」の一点張り。“子供の命がかかっているんだ!”という記者の怒声にも、まったく反応なしだった。
学童保育を利用している児童に新型コロナの感染が判明した。当然、施設の消毒や閉鎖が必要で、その議論と個人情報とは何の関係もない。第一に考えるべきは、子供の命を守ることだろう。
留守家庭子ども会に関しては、現場の職員が不足する状況で、組織系統が違う「教員」が応援に駆り出されている現状がある。学校長や教員、留守家庭子ども会の職員たちが続けている懸命の努力を、市役所で指図するだけの市教委が無駄にすることは許されない。